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諦めない思い-3
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夢か幻か……ううん、これは私が都合よく見ている幻想なのかな。そう思うけれどこの手が掴めるんだ、熱を感じる逞しい腕を。
「だ、めぇ!」
「……」
「やだ、だめ……おねが……やめてっ」
「……お前、こいつになにされたかわかってんの?」
「それでもだめ!おねがい、やめて!」
「……なんでこんなカス庇うわけ?こんなゴミクズみたいなヤツ生かしとく意味ねぇじゃん」
「余計にダメ!そんな、そんな相手にジルが手を汚す必要こそない!この手は……」
そんなもののために強くなってきたんじゃないでしょ?
守りたいものを守るために……自分を守るために……大事にしたいものを掴むために強くしてきたんじゃないの?
「この手は……そんな傷をつけるためにあるんじゃないの……」
もう傷つけて欲しくない、もっと自分こそ守ってほしいの。そう思ってその手に触れる。熱い手が目の前にある。触れて掴めたらリアルに感じる。なぞるように腕に身体に触れたら金眼と目が合った。
「……本当に?本当に、ジル?」
嘘じゃないの?今、私の目の前にいるのはジルなのか。夢でも幻でもなく……生きて目の前にいてくれるのか。
「生きてるの?」
「……」
背の高いジルの頬に手を伸ばして触れるとあったかくて、息が手にかかると熱を感じてまたあったかくなって……自分の体から奪われていた体温が戻ってくるようで……。
「ジル……ジルぅっ」
夢じゃない、これは本当に夢でもなく現実だ。それを実感しだすと止まらない。また視界が揺れて波打ち始める。壊れた人形みたいに名前を呼ぶ私にジルが少し戸惑って掴んでいた彼を放り投げて手から離した。
「きゃあ!」
「――っ、げほがはっ!」
「お前、命拾いしたな。アリシアに感謝しろ」
倒れ込んで咳き込む彼にジルが近寄ってそう言ったから気が済んでくれたのかとホッとしたのも束の間だった。ジルの長い足が彼のお腹を押さえつけて片足首を持ち上げる。
「ジル?!」
太い木の枝が折れた音よりも、鈍くて低い音が響いて悲鳴にならない声が出かけた。それよりも彼の悲鳴が叫んでいたから私の悲鳴がかき消されただけかもしれない。ポキ、とかボキ、みたいな可愛い音じゃなかった、なにかが破壊されたような壊れた様な音がして何をしたか聞くのも怖い。
「追いかけてこられたらうっとーしいからな」
「お前っ――ざっけんなぁ!」
「もう一本残ってんだろ。脊椎折って二度と立てなくしてやろうか」
「なっ……!」
「本当なら死んでんだよ。足首の骨一本折られたくらいで騒ぎやがって……マジで黙らせるぞ」
足首の骨を折ったのかと、その会話でさっきの音の理由が分かってしまい私も黙ってしまう。そんな固まった私を力強い腕が引き寄せて抱き上げられた。
「――っ」
目の前に金眼がある。あの揺れて光る金眼が私を真っ直ぐ見つめている。それに引き寄せられて吸い込まれていくようで息が止まった。
「ジル……」
「……ん」
そのぶっきらぼうで子供みたいな返事が愛しくて……ジルがいる。私を抱きしめて見つめるのは本当にジルだ、そう思ったらもう涙が止まらなくなった。
「……ばかぁ……どうして……ひっ、まっ、待って……ずっと……わたしっ」
待ってたの、ずっとずっと……。
「信じて……」
信じてた。
「……死んでも良かったのにな……」
ジルが呟くみたいにこぼすその言葉は本音に聞こえる。死に場所を探してる、そんな話を聞いていたからこそ嘘じゃないとわかる。
でも――信じてた。
「死ねなかった」
信じて待っていた。戻ってきてくれるって、待っていたら帰ってきてくれるって。
「……会いたくなっちまった……アリシアに」
その言葉はもうダメだ……愛しさが溢れた。もう目の前のジルが涙で揺れてしっかり見えない。
「アリシアを……抱きしめたくなった」
そう言って、壊れそうなほど強く抱きしめられた。
「だ、めぇ!」
「……」
「やだ、だめ……おねが……やめてっ」
「……お前、こいつになにされたかわかってんの?」
「それでもだめ!おねがい、やめて!」
「……なんでこんなカス庇うわけ?こんなゴミクズみたいなヤツ生かしとく意味ねぇじゃん」
「余計にダメ!そんな、そんな相手にジルが手を汚す必要こそない!この手は……」
そんなもののために強くなってきたんじゃないでしょ?
守りたいものを守るために……自分を守るために……大事にしたいものを掴むために強くしてきたんじゃないの?
「この手は……そんな傷をつけるためにあるんじゃないの……」
もう傷つけて欲しくない、もっと自分こそ守ってほしいの。そう思ってその手に触れる。熱い手が目の前にある。触れて掴めたらリアルに感じる。なぞるように腕に身体に触れたら金眼と目が合った。
「……本当に?本当に、ジル?」
嘘じゃないの?今、私の目の前にいるのはジルなのか。夢でも幻でもなく……生きて目の前にいてくれるのか。
「生きてるの?」
「……」
背の高いジルの頬に手を伸ばして触れるとあったかくて、息が手にかかると熱を感じてまたあったかくなって……自分の体から奪われていた体温が戻ってくるようで……。
「ジル……ジルぅっ」
夢じゃない、これは本当に夢でもなく現実だ。それを実感しだすと止まらない。また視界が揺れて波打ち始める。壊れた人形みたいに名前を呼ぶ私にジルが少し戸惑って掴んでいた彼を放り投げて手から離した。
「きゃあ!」
「――っ、げほがはっ!」
「お前、命拾いしたな。アリシアに感謝しろ」
倒れ込んで咳き込む彼にジルが近寄ってそう言ったから気が済んでくれたのかとホッとしたのも束の間だった。ジルの長い足が彼のお腹を押さえつけて片足首を持ち上げる。
「ジル?!」
太い木の枝が折れた音よりも、鈍くて低い音が響いて悲鳴にならない声が出かけた。それよりも彼の悲鳴が叫んでいたから私の悲鳴がかき消されただけかもしれない。ポキ、とかボキ、みたいな可愛い音じゃなかった、なにかが破壊されたような壊れた様な音がして何をしたか聞くのも怖い。
「追いかけてこられたらうっとーしいからな」
「お前っ――ざっけんなぁ!」
「もう一本残ってんだろ。脊椎折って二度と立てなくしてやろうか」
「なっ……!」
「本当なら死んでんだよ。足首の骨一本折られたくらいで騒ぎやがって……マジで黙らせるぞ」
足首の骨を折ったのかと、その会話でさっきの音の理由が分かってしまい私も黙ってしまう。そんな固まった私を力強い腕が引き寄せて抱き上げられた。
「――っ」
目の前に金眼がある。あの揺れて光る金眼が私を真っ直ぐ見つめている。それに引き寄せられて吸い込まれていくようで息が止まった。
「ジル……」
「……ん」
そのぶっきらぼうで子供みたいな返事が愛しくて……ジルがいる。私を抱きしめて見つめるのは本当にジルだ、そう思ったらもう涙が止まらなくなった。
「……ばかぁ……どうして……ひっ、まっ、待って……ずっと……わたしっ」
待ってたの、ずっとずっと……。
「信じて……」
信じてた。
「……死んでも良かったのにな……」
ジルが呟くみたいにこぼすその言葉は本音に聞こえる。死に場所を探してる、そんな話を聞いていたからこそ嘘じゃないとわかる。
でも――信じてた。
「死ねなかった」
信じて待っていた。戻ってきてくれるって、待っていたら帰ってきてくれるって。
「……会いたくなっちまった……アリシアに」
その言葉はもうダメだ……愛しさが溢れた。もう目の前のジルが涙で揺れてしっかり見えない。
「アリシアを……抱きしめたくなった」
そう言って、壊れそうなほど強く抱きしめられた。
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