譲れなくて、それでも暮らしたくて。

あきすと

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③面影

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一緒にくらす、あの人は『あの時』に居合わせた。

彼は祖母からの遺言を聞いて、この家にくらす事になったのだと言う。


細かな説明は、何にも聞いていない。
ただ、祖母と彼と僕との間にはどうやら
見えないなにか、糸の様なものがある。

赤の他人と、生活を共にする事への
違和感は日々薄れていく。

3LDKの家に、それぞれが思い思いに暮らす。

居て欲しい人が、居ない。

僕を知らない人が、祖母の代わりみたいに
この家にいる。

2階の祖母の書斎は、とても居心地がいい。
少しだけ空けた窓の隙間から、そよぐ風。

ガーゼのカーテンが柔らかにふくらんで、軽やかに
影を映し出す。

祖母のデスクには、写真立てがある。

『寿々さん、この人…』

今となってはもう、本人に聞けはしない。


ただ、この写真に写る人物には見覚え
いや、面影を感じる。
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