都合のいい男

美浪

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計画と実行

海誠先生に電話とこの世界の話

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明日もエルーカさんとバニラさんと体術の特訓の約束をして部屋に戻った。
「まだウェンは帰ってないか。」
うーん。先にハーミット様の所に行こうかなあ。

一応ハーミット様に電話をしてみると何時でもOKと言われた。
メールも音声機能で書けるんだっけ。ウェンにメールしておこう。
「ハーミット様の部屋に行ってくるね。」
送信。
直ぐに返事は来た。
「了解。あと1時間はジムにいる。」
よーし。じゃあ海誠先生に電話頑張ってかけよう。

ハーミット様の部屋のインターホンを鳴らすとやっぱり暗い部屋から出て来た。
「ハーミット様。暗いですよ・・。」
「そうか?電気付けるか。」
仕方ないなあと言う顔でハーミット様は電気を付けてくれた。

「目、悪くなりませんか?」
「目?視力?2.0以上あるが?」
俺より見えてる。

「さあて、何て電話かけるか?」
ハーミット様は俺に電話を渡した。世間話か?カプリスの話は言えないなあと2人で少し悩んだが取り敢えずどんな情報が欲しいか聞いてみようと言う事に決まった。

「ちょっと待ってくれ。まだかけるなよ。GPS調べる。」
パソコンで海誠先生の位置情報を確認している。

「マンションかこりゃ自宅だな。一人暮らしなら良いが。確認のために先ずメールを打て。」
「えーと。出来ればハーミット様が打ってくださいよ。」
そうか。字はまだ苦手かと言って俺が言うようにメールをしてくれた。

『 この前、ホテルの朝食バイキングで会った者です。今、連絡しても大丈夫ですか?1人なら連絡します。』
で良いかな。
この世界はショートメール?電話番号でのメールが主流な様で送ると直ぐに向こうから着信があった。

「頑張れ。難しければ世間話でも良いぞ?」
ハーミット様に言われてドキドキしながら電話に出た。

「もしもし?カプリスの子かな?外海そとめです。」
間違いない。海誠先生だ。

「はい。そうです。あの外海さん。海誠先生って呼んで良いですか?」

「あー。やっぱり俺の漫画知っててくれたか!嬉しいなあ。良かった。連絡ありがとう。」
確認したがもう仕事も終わり自宅だった。

「えっと。ネタはまだ無いんですが例えばどんな事を連絡したら良いのかと思ってかけました。」
こんな会話で良いのかなあ。

「そうだなあ。やっぱり事件系が嬉しいんだけど。カプリスの話は無理だよね?他のマフィアの話とかでも良いよ。」
何が面白い話になるか解らないからねー。と海誠先生は相変わらず明るい。

「俺がネタ元ってマフィアにバレませんよね?」

「それは他言しない。誓えるよ。」
本当にこの人は純粋に漫画のネタが欲しそうなんだよなあ。
悪意が微塵も感じられない。

「解りました。漫画のネタになりそうな話が舞い込んだら連絡します。他の警官には聞かれたく無いので先ずはメールします。」
そう言うと海誠先生も俺もカプリスと繋がりがバレると不味いからそうして欲しいと利害関係は一致した。

「では、俺も仲間にバレたくないので今日はもう電話切りますね。」

「了解。またの連絡お待ちしてますよ。」
そう言って電話を切った。

はぁー。緊張した。

「結構、上手かったじゃないか。自然だったよ。」
横でハーミット様がニヤニヤと笑う。

「緊張しました。でもこれでネタを売れますね。」
ハーミット様は上出来と頷いた。


「所でウェンは連れて来てないんだな?」
「あー。まだジムみたいです。」
何時も一緒かと思ったとちょっとからかわれる。

「あのー。前から聞きたかったんですけど。ハーミット様は男性同士の恋愛ってどう思っているんですか?まあ、他の皆もだけど。」
あまりに皆が自然で驚いている。

「ミナキはこの世界の事はウェンやボスに殆ど聞いていないのか?」
少し怪訝そうな顔。

「ボスに聞いたのはカプリスの結成話とか。ウェンからもこの世界に産まれた異能者は親に捨てられて異能者に匿われるか政府に捕まるとか?」
一応、皆さんの過去が辛い思い出が多すぎると聞いたので突っ込んでそれ以上は聞いていないと正直に答えた。

「まあ、普通に考えてウェンは話し下手だしボスはこういう事を真剣に語るタイプじゃないしな。やっぱり聞きたいだろ?」
ハーミット様にそう言われて頷く。

「割と俺って損な役回りになりがちだなあ。」
ハーミット様が溜息をついた。

「最初に言っておくが。これはこの世界では普通!俺もハッキングをする様になって政府の情報とかでお前達の居た世界を知った。」

あまりにもハーミット様が真剣な顔なので俺も真顔で頷いた。

「この世界の異能者は産まれると同時に母親を失う。母親の全てのエネルギーを貰って俺達は産まれてきた。」

俺はゴクッと唾を飲み込む。まじか。

「異能者は昔は奇形や異型と呼ばれていた。母殺しの罪を生まれながらに背負って誕生するんだ。」

それは異能者の宿命。本当に異能者は突然変異だから産まれるまで解らないんだけどね?とハーミット様は少し悲しそうに微笑んだ。

「異能が芽生える瞬間って普通の人で言う酷い反抗期みたいなもんでさ。人殺しとかしちゃう場合があるから異能が芽生える前にだいたい捨てられるんだよ。」

政府機関とか異能者やマフィアとかしか異能が芽生えたガキを抑え込める人間居ないから。そう言って苦笑した。

ハーミット様は決して深刻そうには話していないんだけど考えると苦しくてまた俺は涙が出る。同情とかそう言うのはしちゃいけないって解っているんだけど。

「ほらー。ミナキは優しいから泣くだろ?」
ハーミット様はだから誰も話さなかったんだろうなあとブツブツ言った。

「ごめん。泣くつもり無かったんだけど。」

「いやいや。ミナキからするとショックだろう。そう言う訳で異能者って子供をつくる行為を嫌う奴が多いんだよ。」

だから同性愛は普通だし男女の恋愛は結構覚悟して結婚するみたいだな。
異能者から異能者が産まれるとは限らないけれど嫁が死ぬとか女性は自分が死ぬかもとか。同じ境遇の子供が産まれる可能性をつい考える。

一般人は何も考えて無いけどね。
異能者が産まれる確率なんて本当に稀だから。世界の人口からすると極小数!とハーミット様はフォローする様に無理に笑っている様にも見えた。

「聞かなきゃ良かったか?」
まだ泣き止まない俺にハーミット様は苦笑いしてそう言った。

「大丈夫。俺もこの世界の人間になったんだから。」
涙を拭っているとハーミット様の部屋のドアがピッキングで開いてウェンが入って来た。

「何?何故泣いてる?」
ハーミット様の顔を不機嫌そうにウェンは見詰める。

う・・・。気まずいぞ・・・。


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