都合のいい男

美浪

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計画と実行

みんなの好み

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「異能者の産まれる時の話を聞かせてたんだよ。そう怒るな。」
ハーミット様はウェンに座る様に言った。

「聞かせたのか・・。」
ウェンは辛そうな顔をして俺の頬の涙を拭った。
「俺が聞きたいって言ったんだよ。ごめん。」
謝ること無いと2人とも俺を慰めようと頭をポンと叩いた。

「俺は幸せに生きすぎてきたんだね。」
普通の家庭に育ち高校卒業後はフリーター。何してたんだろうと思えてくる。

「良いんじゃ無いのか?」
ハーミット様があっけらかんとした顔でそう言った。

「俺は普通ではない事に誇りを持っている。一般人には無い人生にも満足しているし。」
「異能者が辛いのは子供時代の数年間だけ。」
彼等の本心なのか俺へのフォローなのか解らないけれど確かにカプリスメンバーは何時も楽しそうだ。

聞いても良いかな。

「その・・。話題が重すぎて軽く聞けなくなってしまったんだけど。」
何?聞いて良いよ?とハーミット様は笑う。

「じゃあ。ハーミット様も男性が好きなの?他のメンバーも?」
当初はこれが聞きたかったんだけど何か深すぎる話になってしまった。

「俺は人に興味が無い!」
ハーミット様・・。何かそんな気もしていたけれど。
そんなハーミット様を見てウェンがボソッと呟いた。
「アルージャは獣人が好き。」
ウェンがクスっと笑うとハーミット様の頬が赤くなった。
え?!あれって漫画の世界だけの海誠先生の空想じゃないの?まだ見た事も無いし?

「居るの?獣人?」

「ミナキとは別の異世界からの転移者なんだ。政府の言う事全く聞かないから20年?くらい前から召喚されなくなった。」
「今は生き残りや末裔が少数いるよ。」
2人はそう言った。まじか。
獣人の反乱編って回がJUSTICE&にあったぞ・・・。
流石にこれは空想だと思っていたのに。カプリス出ても来なかったぞ!?

「好みであって特定の相手は居ないから。そこ重要ね。」
ハーミット様は念を押すように俺の顔を見た。

「他のメンバーも特定の相手が居るのはウェンとミナキ。後はジハードも?兄貴と?くらいで居ないだけで同性が好きなんじゃないかなあ。そんな真剣に聞いた事ない。」

「相手が出来たら惚気るよね。昔、ディードはヴェガのとこのマフィアのガブリエルと付き合ってた。別れたけど。」

「まじかー!!この前あったよ?」
そうみたいだね。とウェンはクスクスと笑う。だから昨日の報告会でディードさん大人しかったのか。何か喋らないなあと思ってた。

「ところでどっちから告白したの?」
ハーミット様がニヤニヤと今度はお返しとばかりに聞いてきた。

「俺。一目惚れ!!」
実際は6年惚れてましたが。一目惚れには違いない。

「ミナキからだったのか。そうかあ。」
潔く答えると関心した様にハーミット様は笑顔になった。ウェンは何か照れている。

「ほら、もう帰るよ。」
照れ隠しからかウェンが帰ろうと急かす。

ハーミット様はクスクス笑いながらまたね。と見送ってくれた。


ウェンの部屋に戻るとご飯食べようかとウェンは微笑む。
「弁当買ってきた。オムライス。」
「わー!ありがとう!嬉しい。」
お腹も空いてたし何か気遣いが嬉しい。

いただきます!
うん。このスーパーの弁当も美味いな。

「今日はどうだった?体術。」
ウェンに聞かれて全然ダメと落ち込む。
当たりもしなかった。

「それに女性を殴るとかに抵抗があるから・・。でも、それは言い訳かな。俺の方が弱かったし。」
俺の発言にウェンなりに悩んでくれている様でオムライス食べながら首を傾げて無言。

「今から・・・。俺とジムに行こう。」
「へ?今から?」
ウェンは笑顔で頷いた。

確かにウェンと修行したいとは思っていたけれど。
「うん。じゃあ、行こうか!」

俺も何だかんだで異能者だなと思う。ご飯も食べて身体も回復したし。

ウェンは嬉しそうだ。
「手加減はなるべくしないから。」
「なるべくね。頑張るから。」
ジムまでの道のりもデートみたいで楽しい。

「エルーカさんとバニラさんって付き合ってないの?」
ちょっと聞いてみたかった。
「あの2人は好みが違う。エルーカは年上好き。バニラは年下好き。」
あー。なるほど。

「ラズの好みは駆除屋の元締めみたいな顔と言ってた。」
「バックスレーはああ見えて結構モテる。男にね。」

ウェンは結構皆に聞いて知っていると言っていた。
カプリスに入った頃に会話が出来ない俺に何か皆、必死で自分の事を色々と語ってくれたんだと照れた様に笑った。
何か想像つくな。

本当にカプリスって優しい人達ばかりだよ。

ジムに着いて本日2度目の地下へ。
1時間だけレンタル。
ジムは23時まで営業しているそうで本当に便利な所みたい。

「さてと。遠慮無く攻撃しておいで。」
ウェンに言われて頷くが

隙が無い・・・。

俺、自分が異能使って結界張っている時は気づかなかったけれどお互い体術のみってこんなに動く前から差があるんだ・・。

「俺から行こうか?」
ウェンの顔が真剣で・・。ヤバい俺の物凄く好きな表情。冷ややかで鋭い目付き。

ふぅ。落ち着け俺。遊んでるんじゃないんだよ。これは修行。

スイッチを切り替える様に俺は殺気を放つ。

行ける!!!

ウェンへ向かって行く。蹴り、蹴り、殴打。
全部躱された。

「まだまだ!!」
早い。遊ばれている感覚だ。

行けると思った一撃も躱されてウェンの蹴りに吹っ飛んだ。

そして起き上がった瞬間にウェンはもう俺の目の前に居た。
見えなかった・・・。
「ミナキ・・。遅い。」

そうウェンは言って蹴るから避けてね?と宣言。

でも俺は避ける事が出来なかった。

「もっと良く見て。」
「解った。もう1回お願い!」

良く見ろ。動き、目線、最初の1歩。

この距離をもう目の前?!

ドサっと俺は倒れた。避ける事も受け身も取れなかった。

エルーカさんやバニラさんに比べて段違いにウェンは強い。

「まだやれる!」
思い出せ。ヴェガさんとカルロスのバトル。

ウェンは静かに頷いて俺に向かって来た。

今度は拳かよ・・!!

何回、吹っ飛んだだろう。

1時間みっちり修行で俺はズダボロ。

「ミナキ。ごめん。大丈夫?・・・じゃないな。」
息が上がって床に大の字で寝転んだ。

「もうレンタル終了?待ってね。異能は使っちゃダメなんだよね?回復かけないと動けない。」

「ミナキ。出てから回復かけよ。」
ウェンは俺の頭を優しく撫でて微笑んだ。
うん。でも、本当に動けないんだが。

そう思った時だった。
俺はウェンにお姫様抱っこされた。
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