たとえ、あなたが誰を愛していようとも

あーもんど

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婚約①

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「今度こそ、正しく相手を愛します。ですので、どうかお願いします」

 深々と頭を下げ、私は切実な気持ちを表す。
相手を信じて尊重することを改めて誓う私の前で、両親は肩の力を抜いた。

「分かった。そこまで言うなら、結婚を許そう」

「フェアレーター伯爵家には、私達の方から話を通しておくわ」

 『少し待っていなさい』と告げてくる両親に、私は小さく首を縦に振る。

「ありがとうございます」

 ────と、お礼を言った数ヶ月後。
私は無事に令息と……いや、アニスと婚約を結んだ。
『これでやっと胸を張って、彼の隣を歩ける』と歓喜する私は、何度もアニスのところへ行く。
単純に『会いたいから』というのもあるが、相手のことをちゃんと知って親睦を深めたかったので。
一目惚れで始まったこの関係を、より強固なものにしたかったのだ。
おかげで、今では相手のちょっとした癖や弱点も知るような仲に。

 まさに順風満帆。唯一の懸念があるとすれば、アニスの異性に対する態度くらい。
ちょっとフレンドリー過ぎる気が、するのよね。特に、美しい女性に関しては。
まあ、彼のことは信じているから口出しする気はないけど、やっぱり婚約者としては複雑ね。

 乙女心とも嫉妬心とも言うべき感情を抱きつつ、私は胸元に手を添える。

「それでも、やっぱり────愛する人と過ごす日々は、とっても幸せだわ」

 とてつもなく満たされる心と輝いて見える世界を前に、私は頬を緩めた。
『結婚したら、きっと更に喜びと安らぎを感じることだろう』と想像しながら、私は挙式を楽しみに待つ。
だが、しかし────

「ビオラ・インサニティ・モータル公爵令嬢、君との婚約を破棄する!」

 ────建国記念パーティーにて、アニスから手酷い裏切りを受けた。

 今、なんと?『婚約を破棄する』と言ったの?私に向かって?

 目の前に立つアニスを見据え、私は口元に手を当てる。
『聞き間違いかしら?』と思い、チラリと周囲の反応を窺うものの、残念ながら事実のようだ。
唖然としている貴族達を見て少し実感が湧く中、アニスが軽く両手を広げる。

「また、僕は────ミモザ・バシリス・フスティーシア王女殿下に一生を捧げることを、この場で宣言する!」

「!」

 僅かに目を見開き、私は固まった。
まさか、ここで他の人物……それも、女性の名前が出てくるとは思わなかったため。
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