たとえ、あなたが誰を愛していようとも

あーもんど

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先手③

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「分かりました。ただ、その捜索に我が家の騎士も加えてくれませんか?」

 より確実かつ迅速にアニスを捕縛するため、私は協力を申し出た。
すると、フェアレーター伯爵達は目を瞬かせる。

「それは願ってもないことですが……」

「よろしいんですか?そこまでしていただいて」

「はい、こちらとしても早くアニスを見つけたいので」

 『遠慮しないでください』と述べる私に対し、フェアレーター伯爵達は少し表情を和らげた。

「「そういうことなら」」

 空色の瞳に感謝の念を滲ませ、フェアレーター伯爵達は肩の力を抜く。
『アニスを見捨てないでくれるだけでも、有り難いのに』と零す彼らを前に、私は侍女へ目配せした。

「あと、身柄譲渡の他にもいくつか頼みたいことがありまして」

 話はまだ終わっていないことを仄めかし、侍女から書類を受け取る。
と同時に、フェアレーター伯爵達の方へ向き直った。

「唐突で申し訳ありませんが、今この場でアニスと────籍を入れさせていただいてもよろしいでしょうか?」

「「!」」

 大きく目を剥き、フェアレーター伯爵達は動揺を示した。

 挙式前に入籍なんて、あんまりないものね。
大抵は式の最中、当人同士が書類にサインをして正式に婚姻を結んでいる。
でも、法律的には挙式前に籍を入れても問題ないし、当主の同意を得られれば当人のサインも必要ないわ。

 手に持っている書類をテーブルの上に置き、私は口を開く。

「当人の居ないときに、このようなことを決めるのは卑怯だと分かっています。けれど、どうしても不安で……アニスは真剣にミモザ王女殿下のことを愛しているみたいですし」

 そっと目を伏せ、私は左手の薬指を軽く擦った。

「だから、アニスと結婚出来る確証が欲しいのです」

 控えめにフェアレーター伯爵達を見つめ返し、私は訴え掛ける。
どうかサインしてほしい、と。

 結婚さえしてしまえば、たとえフェアレーター伯爵達があちらに寝返っても縁を切ることは出来ない。
名実ともにアニスはこちらのものになるのだから。

 『あちらが家族の情に絆されて、敵となる前に』と考え、私は先手を打つことにこだわった。
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