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フスティーシア王国②
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「そうだ。一つ言い忘れていたが、明日の夜に君達の訪問を祝うパーティーを開く予定だから是非参加してくれ」
顔だけこちらを振り返り、フェンネル国王陛下はそれだけ告げて去る。
と同時に、私達も玉座の間を出て客室へ行った。
国賓だから、部屋も豪華ね。
これなら、思い切り羽を伸ばせそう。
だけど、私にはやることがある。
『休んでいる場合じゃない』と考え、私は部屋に割り当てられた侍女へ目を向ける。
「そこの貴方、少しいいかしら?陛下と個別で、話がしたいのだけど」
『声を掛けてみてくれる?』と頼むと、侍女は僅かに眉を顰めた。
「フェンネル国王陛下は大変お忙しい方なので、突然面談を申し込まれても困ります」
「一応、事前に手紙で話したいことは伝えてあるわ。だから……」
「貴方のように暴力的な方とは、会わせられません」
『一家臣として、看過出来ません』と言い放ち、侍女は顔を逸らす。
明らかな拒絶反応を示す彼女の前で、私は自身の顎を撫でた。
暴力的な方、か。
どうやら、あのデマはここまで広がっているようね。
ということは────ミモザ・バシリス・フスティーシアが、手を回したのね。
あまりにも噂の拡散が早いため、直ぐに犯人の目星はついた。
『もうこちらに戻ってきたのね』と思いつつ、私はスッと目を細める。
もうこんな派手に動いているとは、思わなかったわ。
せめて、アニスの進捗報告を聞いてから活動するのかと。
私が使節団のメンバーに加わったことを知って、焦ったのかしら?
まあ、なんにせよこちらとしては好都合。
『自ら墓穴を掘ってくれるなんて』と頬を緩め、私はソファに腰を下ろした。
「そう。それは残念ね」
わりとあっさり面談を諦め、私はのんびり寛ぐ。
別に食い下がっても良かったけど、あちらから接触してくるよう促すのもいいかと思って。
せっかく、ミモザ・バシリス・フスティーシアがいい種を蒔いてくれたのだから。
『しっかり利用させてもらうわ』と決心し、私は紫髪を軽く手で払った。
「じゃあ、今日はもうゆっくりするから湯浴みの準備をしてくれる?」
顔だけこちらを振り返り、フェンネル国王陛下はそれだけ告げて去る。
と同時に、私達も玉座の間を出て客室へ行った。
国賓だから、部屋も豪華ね。
これなら、思い切り羽を伸ばせそう。
だけど、私にはやることがある。
『休んでいる場合じゃない』と考え、私は部屋に割り当てられた侍女へ目を向ける。
「そこの貴方、少しいいかしら?陛下と個別で、話がしたいのだけど」
『声を掛けてみてくれる?』と頼むと、侍女は僅かに眉を顰めた。
「フェンネル国王陛下は大変お忙しい方なので、突然面談を申し込まれても困ります」
「一応、事前に手紙で話したいことは伝えてあるわ。だから……」
「貴方のように暴力的な方とは、会わせられません」
『一家臣として、看過出来ません』と言い放ち、侍女は顔を逸らす。
明らかな拒絶反応を示す彼女の前で、私は自身の顎を撫でた。
暴力的な方、か。
どうやら、あのデマはここまで広がっているようね。
ということは────ミモザ・バシリス・フスティーシアが、手を回したのね。
あまりにも噂の拡散が早いため、直ぐに犯人の目星はついた。
『もうこちらに戻ってきたのね』と思いつつ、私はスッと目を細める。
もうこんな派手に動いているとは、思わなかったわ。
せめて、アニスの進捗報告を聞いてから活動するのかと。
私が使節団のメンバーに加わったことを知って、焦ったのかしら?
まあ、なんにせよこちらとしては好都合。
『自ら墓穴を掘ってくれるなんて』と頬を緩め、私はソファに腰を下ろした。
「そう。それは残念ね」
わりとあっさり面談を諦め、私はのんびり寛ぐ。
別に食い下がっても良かったけど、あちらから接触してくるよう促すのもいいかと思って。
せっかく、ミモザ・バシリス・フスティーシアがいい種を蒔いてくれたのだから。
『しっかり利用させてもらうわ』と決心し、私は紫髪を軽く手で払った。
「じゃあ、今日はもうゆっくりするから湯浴みの準備をしてくれる?」
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