たとえ、あなたが誰を愛していようとも

あーもんど

文字の大きさ
23 / 67

フスティーシア王国②

しおりを挟む
「そうだ。一つ言い忘れていたが、明日の夜に君達の訪問を祝うパーティーを開く予定だから是非参加してくれ」

 顔だけこちらを振り返り、フェンネル国王陛下はそれだけ告げて去る。
と同時に、私達も玉座の間を出て客室へ行った。

 国賓だから、部屋も豪華ね。
これなら、思い切り羽を伸ばせそう。
だけど、私にはやることがある。

 『休んでいる場合じゃない』と考え、私は部屋に割り当てられた侍女へ目を向ける。

「そこの貴方、少しいいかしら?陛下と個別で、話がしたいのだけど」

 『声を掛けてみてくれる?』と頼むと、侍女は僅かに眉を顰めた。

「フェンネル国王陛下は大変お忙しい方なので、突然面談を申し込まれても困ります」

「一応、事前に手紙で話したいことは伝えてあるわ。だから……」

「貴方のように暴力的な方・・・・・とは、会わせられません」

 『一家臣として、看過出来ません』と言い放ち、侍女は顔を逸らす。
明らかな拒絶反応を示す彼女の前で、私は自身の顎を撫でた。

 暴力的な方、か。
どうやら、あのデマはここまで広がっているようね。
ということは────ミモザ・バシリス・フスティーシアが、手を回したのね。

 あまりにも噂の拡散が早いため、直ぐに犯人の目星はついた。
『もうこちらに戻ってきたのね』と思いつつ、私はスッと目を細める。

 もうこんな派手に動いているとは、思わなかったわ。
せめて、アニスの進捗報告を聞いてから活動するのかと。
私が使節団のメンバーに加わったことを知って、焦ったのかしら?
まあ、なんにせよこちらとしては好都合。

 『自ら墓穴を掘ってくれるなんて』と頬を緩め、私はソファに腰を下ろした。

「そう。それは残念ね」

 わりとあっさり面談を諦め、私はのんびり寛ぐ。

 別に食い下がっても良かったけど、あちらから接触してくるよう促すのもいいかと思って。
せっかく、ミモザ・バシリス・フスティーシアがいい種を蒔いてくれたのだから。

 『しっかり利用させてもらうわ』と決心し、私は紫髪を軽く手で払った。

「じゃあ、今日はもうゆっくりするから湯浴みの準備をしてくれる?」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

貴方なんて大嫌い

ララ愛
恋愛
婚約をして5年目でそろそろ結婚の準備の予定だったのに貴方は最近どこかの令嬢と いつも一緒で私の存在はなんだろう・・・2人はむつまじく愛し合っているとみんなが言っている それなら私はもういいです・・・貴方なんて大嫌い

10年前に戻れたら…

かのん
恋愛
10年前にあなたから大切な人を奪った

王子は婚約破棄を泣いて詫びる

tartan321
恋愛
最愛の妹を失った王子は婚約者のキャシーに復讐を企てた。非力な王子ではあったが、仲間の協力を取り付けて、キャシーを王宮から追い出すことに成功する。 目的を達成し安堵した王子の前に突然死んだ妹の霊が現れた。 「お兄さま。キャシー様を3日以内に連れ戻して!」 存亡をかけた戦いの前に王子はただただ無力だった。  王子は妹の言葉を信じ、遥か遠くの村にいるキャシーを訪ねることにした……。

私は貴方を許さない

白湯子
恋愛
甘やかされて育ってきたエリザベータは皇太子殿下を見た瞬間、前世の記憶を思い出す。無実の罪を着させられ、最期には断頭台で処刑されたことを。 前世の記憶に酷く混乱するも、優しい義弟に支えられ今世では自分のために生きようとするが…。

私が愛する王子様は、幼馴染を側妃に迎えるそうです

こことっと
恋愛
それは奇跡のような告白でした。 まさか王子様が、社交会から逃げ出した私を探しだし妃に選んでくれたのです。 幸せな結婚生活を迎え3年、私は幸せなのに不安から逃れられずにいました。 「子供が欲しいの」 「ごめんね。 もう少しだけ待って。 今は仕事が凄く楽しいんだ」 それから間もなく……彼は、彼の幼馴染を側妃に迎えると告げたのです。

『影の夫人とガラスの花嫁』

柴田はつみ
恋愛
公爵カルロスの後妻として嫁いだシャルロットは、 結婚初日から気づいていた。 夫は優しい。 礼儀正しく、決して冷たくはない。 けれど──どこか遠い。 夜会で向けられる微笑みの奥には、 亡き前妻エリザベラの影が静かに揺れていた。 社交界は囁く。 「公爵さまは、今も前妻を想っているのだわ」 「後妻は所詮、影の夫人よ」 その言葉に胸が痛む。 けれどシャルロットは自分に言い聞かせた。 ──これは政略婚。 愛を求めてはいけない、と。 そんなある日、彼女はカルロスの書斎で “あり得ない手紙”を見つけてしまう。 『愛しいカルロスへ。  私は必ずあなたのもとへ戻るわ。          エリザベラ』 ……前妻は、本当に死んだのだろうか? 噂、沈黙、誤解、そして夫の隠す真実。 揺れ動く心のまま、シャルロットは “ガラスの花嫁”のように繊細にひび割れていく。 しかし、前妻の影が完全に姿を現したとき、 カルロスの静かな愛がようやく溢れ出す。 「影なんて、最初からいない。  見ていたのは……ずっと君だけだった」 消えた指輪、隠された手紙、閉ざされた書庫── すべての謎が解けたとき、 影に怯えていた花嫁は光を手に入れる。 切なく、美しく、そして必ず幸せになる後妻ロマンス。 愛に触れたとき、ガラスは光へと変わる

探さないでください。旦那様は私がお嫌いでしょう?

雪塚 ゆず
恋愛
結婚してから早一年。 最強の魔術師と呼ばれる旦那様と結婚しましたが、まったく私を愛してくれません。 ある日、女性とのやりとりであろう手紙まで見つけてしまいました。 もう限界です。 探さないでください、と書いて、私は家を飛び出しました。

寡黙な貴方は今も彼女を想う

MOMO-tank
恋愛
婚約者以外の女性に夢中になり、婚約者を蔑ろにしたうえ婚約破棄した。 ーーそんな過去を持つ私の旦那様は、今もなお後悔し続け、元婚約者を想っている。 シドニーは王宮で側妃付きの侍女として働く18歳の子爵令嬢。見た目が色っぽいシドニーは文官にしつこくされているところを眼光鋭い年上の騎士に助けられる。その男性とは辺境で騎士として12年、数々の武勲をあげ一代限りの男爵位を授かったクライブ・ノックスだった。二人はこの時を境に会えば挨拶を交わすようになり、いつしか婚約話が持ち上がり結婚する。 言葉少ないながらも彼の優しさに幸せを感じていたある日、クライブの元婚約者で現在は未亡人となった美しく儚げなステラ・コンウォール前伯爵夫人と夜会で再会する。 ※設定はゆるいです。 ※溺愛タグ追加しました。

処理中です...