『魔王討伐クエスト』で役に立たないからと勇者パーティーに追い出された回復師は新たな仲間と無双する〜PK集団が英雄になるって、マジですか!?〜

あーもんど

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第五章

第209話『勘違い』

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 と、とりあえずここから出よう……今、セトと二人きりになっても気まずいだけだし。

 自身の二の腕を強く掴み、私は伏せ目がちにセトを見つめる。

「私は酔い醒ましに来ただけだから、もう行くね」

 一応そう声を掛けてから、私は出口へ足を向けた。
ドクドクと激しく鳴る心臓を無視し、セトの隣を通り抜ける────筈だった。

「────待て」

 そう言うが早いか、セトは私の腕を掴んだ。

 私と二人きりになるのは、セトにとっても苦痛でしかない筈なのに……一体なんだろう?
まさか、この期に及んで暴言を吐くつもりじゃないでしょうね……?
レオンさんに怒られたのは、セトの自業自得なのに……。

「何の用?」

「……ラミエルに一つ聞きたいことがある」

 私に聞きたいこと……?このタイミングで……?

 私はセトの言動に疑問を抱くものの、このまま無視する訳にもいかず……一つ息を吐く。
そして体の向きをそのままに、顔だけセトの方へ向けた。
が、ちょうど逆光となっていて彼の顔は見えない。

「それで?聞きたいことって?」

「ラミエルは『サムヒーロー』のことを……いや、俺をどう思っているんだ?お前にとって、俺はどんな存在だった……?」

「……はっ?」

 不安そうな声で、何を言うのかと思えば……今更、そんなことを聞いてどうするの?
誰かにメリットでもあるわけ?

 質問の意図が分からず思い悩んでいると、セトはポツリポツリと本音を吐露し始めた。

「俺はお前が羨ましかった。『サムヒーロー』を追放されても、新しい場所で新しい仲間と笑い合うお前が……でも、それと同時に憎らしくもあった。俺達のことなんか忘れて楽しそうに笑っているから」

 私の腕から手を離すと、セトは急に頭を抱え込む。

「ラミエルにとって、俺達は……いや、俺はそんな簡単に乗り越えられる存在だったのかと凄くムカついた。俺はお前を追い出した罪悪感と後悔で、押し潰されそうになっているのに……当の本人は呑気に笑ってやがる。その笑顔が、どうしても気に食わなかったんだ」

 酒の力のせいか言わなくてもいいことまで口走るセトに、私は怒りを覚える。
全身の血が沸騰するような感覚に襲われながら、拳を強く握り締めた。

 気に食わないって……たったそれだけの理由で、私を追い詰めたの?ちょっと自分勝手すぎない?
私はセトのことだから、きっと深い理由があるんだろうと思っていたのに────

「────そんなちっぽけな理由で、私を殺そうとしたの……!?」

 アルコールのせいで上手く理性が働かない私は、怒りに任せてセトの胸ぐらを掴んだ。
珍しく感情的になる私を前に、彼は大きく目を見開く。

 自分の本音を打ち明けても、優しい“ラミエル”なら受け止めてくれるだろうと思っていたのだろう。
なんて浅はかなの……私だって人間なのに。
何でも許してあげられる女神のような存在では、ない。

「ふざけないでよ……!私を追放した分際で、何を言っているの!?貴方に私の幸せを羨む権利なんてない!」

「っ……!!」

「大体、何なの!?何でセトが『紅蓮の夜叉』に居るわけ!?私を追放して満足そうにしてたくせに、何で直ぐに『サムヒーロー』をやめているの!?私がやめた意味は!?」

「そ、れは……」

 私の気迫に押され、言い淀むセトは気まずそうにサッと目を逸らす。
恐らく、私を追放した理由もかなり自分勝手なものだったんだろう。
じゃなきゃ、ここで沈黙する必要なんてないもの。

 嗚呼、私が嘗て信頼していた仲間はどこに行ってしまったんだろう……?

「答えないなら、それでも構わない。ただし、これだけは言っておく。私はまだ────『サムヒーロー』のことを完全に乗り越えられた訳じゃない」

「!?」

 せめて最後にセトの疑問に答えてやろうと言葉を投げかければ、彼は動揺を露わにした。
見事な間抜け面を晒す彼を前に、私はそっと胸ぐらから手を離す。
そして、未だに胸の中で燻る怒りを誤魔化すように腕を組んだ。

「実はね、『サムヒーロー』から追放された当初はちょっと自暴自棄になっていたの。もう何もかもどうでも良くて、投げやりになっていた。『虐殺の紅月』に入ったのだって、そう……PKされても構わないと思ったから。でも────『虐殺の紅月』は想像以上に温かいパーティーだった」

 そう、温かかった。
皆、私を認めてくれて、守ってくれて、信じてくれて……本当に居心地が良かった。
いつもギスギスしていた『サムヒーロー』とは、比べ物にならないくらい。

「私は『虐殺の紅月』のおかげで立ち直ることが出来た。セトや『サムヒーロー』の存在は決して小さくなかったけど、『虐殺の紅月』が……仲間が弱い私を支えてくれた。だから、私は今────笑えているの」

「!!」

 セトの早とちりという名の勘違いを正せば、彼は心底驚いたような顔をした。
かと思えば、何かを躊躇うように口の開閉を繰り返している。
でも、私はこれ以上セトのワガママに付き合う気は一切なかった。

「ラミエル、俺はっ……!」

 縋るような目を向けてくるセトに、私は何も答えず……今度こそ、横を通り過ぎる。
一瞬傷ついたような顔をするセトが目に入ったが……私は気にせず歩を進めた。

 今後、セトに優しく接するつもりはない。少なくとも、彼が心から己の行いを反省し、謝罪するまでは。
生半可な気持ちで接して来られては、困る。

 セトを甘やかしていた過去の自分を切り捨て、私はバルコニーを後にした。
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