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13話 営業スマイル
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「じゃ、オホーツク海産の伊勢海老を食べさせてくれたら、鳴瀬課長のこと、ちょっとだけ考えてあげてもいいですよ」
オレは営業スマイルを顔に浮かべると、ベッドから抜け出した。
「えっ、えっ……それでいいの……!?」
ちなみに、伊勢海老の産地は温かい海だ。ということで、オホーツク海産の伊勢海老なんてものは存在しない。
「その代わり、用意できなかったら、一人で海にでも沈んでて」
ハンガーラックにオレの服が掛けられているのを見つけて、オレはそれを身に着けていく。
「あと、もう帰っていい?」
「えっと、朝食は……」
「一人で食べといて」
スイートルームの朝食に興味がなかったわけじゃないけれど、多分、昨日は中出しされている。半分くらいは自業自得とはいえ、今から病院にアフターピルを貰いに行かなければならない。
着替えをしながら鏡を見たら、オレを守ってくれた|首輪(ネックガード)がボロボロになってしまっていた。鳴瀬課長が、昨夜、やたらと噛みついたせいだ。そこそこ頑丈なのを買っていたのに……アルファの牙、強すぎだろ。奮発して頑丈なのにしておいてよかった。だけど、これはもう使えそうにないので、買い直さなければならなくなった。思わぬ出費だ。
この後、病院に行ってから、|首輪(ネックガード)も買って……と考えると、いつまでもここに長居しているわけにはいかない。
鏡を見ながら身だしなみを整えると、オレは自分のジャケットと荷物を持って部屋のドアに手を掛けた。
「ああ、それと。オレ、オンとオフが分けられない人は嫌いだから。今日のことは、|発情期(ヒート)事故ってことで、忘れてよ。それで、会社ではこれ以上余計なことしないでね」
オレは言いたいことだけ言って、その部屋を出た。
だけど、去り際にオレがそう釘を刺しておいたにも関わらず、ホテルを出た直後からまたスマホにマッチング依頼が届き続けた。
その後、会社でも時々挙動不審に話し掛けられるのも相変わらずだった。ただし、それは全て仕事に関する話題だったので、オレは今までと同じく猫を被った笑顔で対応した。そして、鳴瀬課長があの日のことを蒸し返してくることはなかった。
だから、アプリのことさえ気にしなければ、今後、オレが鳴瀬課長なんかに心を乱されることはない……
この時は、そう思っていたのに。
オレは営業スマイルを顔に浮かべると、ベッドから抜け出した。
「えっ、えっ……それでいいの……!?」
ちなみに、伊勢海老の産地は温かい海だ。ということで、オホーツク海産の伊勢海老なんてものは存在しない。
「その代わり、用意できなかったら、一人で海にでも沈んでて」
ハンガーラックにオレの服が掛けられているのを見つけて、オレはそれを身に着けていく。
「あと、もう帰っていい?」
「えっと、朝食は……」
「一人で食べといて」
スイートルームの朝食に興味がなかったわけじゃないけれど、多分、昨日は中出しされている。半分くらいは自業自得とはいえ、今から病院にアフターピルを貰いに行かなければならない。
着替えをしながら鏡を見たら、オレを守ってくれた|首輪(ネックガード)がボロボロになってしまっていた。鳴瀬課長が、昨夜、やたらと噛みついたせいだ。そこそこ頑丈なのを買っていたのに……アルファの牙、強すぎだろ。奮発して頑丈なのにしておいてよかった。だけど、これはもう使えそうにないので、買い直さなければならなくなった。思わぬ出費だ。
この後、病院に行ってから、|首輪(ネックガード)も買って……と考えると、いつまでもここに長居しているわけにはいかない。
鏡を見ながら身だしなみを整えると、オレは自分のジャケットと荷物を持って部屋のドアに手を掛けた。
「ああ、それと。オレ、オンとオフが分けられない人は嫌いだから。今日のことは、|発情期(ヒート)事故ってことで、忘れてよ。それで、会社ではこれ以上余計なことしないでね」
オレは言いたいことだけ言って、その部屋を出た。
だけど、去り際にオレがそう釘を刺しておいたにも関わらず、ホテルを出た直後からまたスマホにマッチング依頼が届き続けた。
その後、会社でも時々挙動不審に話し掛けられるのも相変わらずだった。ただし、それは全て仕事に関する話題だったので、オレは今までと同じく猫を被った笑顔で対応した。そして、鳴瀬課長があの日のことを蒸し返してくることはなかった。
だから、アプリのことさえ気にしなければ、今後、オレが鳴瀬課長なんかに心を乱されることはない……
この時は、そう思っていたのに。
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