僕は本当に幸せでした〜刹那の向こう 君と過ごした日々〜

大学生編

90

ーside 桐生玲人ー


自分でも抑えられなかった。

何かが壊れて。

それを直すことが出来なくて。

真っ暗な部屋の中で慶太のことを押し倒した。


慶太は何度も止めてと言っていた。

お願いだからとも言っていた。


でもその言葉は俺の耳には届いても心には届かなかった。


無理やり服を剥ぎ取って。

無理やり指を突っ込んで。

「痛い」と騒ぐ口元に目が行く。

この唇は俺だけのものなのに。

別の男が触れていた。


何度も何度もキスをする。

俺だけのものだと。

他はひどいことをしてるのにキスだけはなぜか優しくした。

あいつのしていたキスは…そんな感じだったから。


唇にも目にも頬にも。

俺のもの、俺のもの、俺のもの。


「キスして？」


その言葉を聞いたとき、ようやく少し正気に戻る。

もちろんもう止まりはしないのだけれど。


キスをねだる慶太に望むだけキスを与え。

抱きしめる事を望む慶太を思い切り抱きしめて。

『愛』を求める慶太に。

「愛してる」と言った。


イッてすぐに慶太は気を失ったようでピクリとも動かなくなった。

汗で髪の毛もめちゃくちゃで。

洋服だって無理やりしたせいで伸びきってて。


慶太が途中で言おうとしたこと。

『こんなの…こんなのって…』


「…レイプと同じ…か。」


この慶太の様子を見れば誰だってそう思うよな。

眠ってる慶太の髪の毛を撫でる。

しばらくそれを続けてから慶太を風呂場に運んだ。


二人で入るのは恥ずかしいと一度も一緒に入ったことなどなかった。

まさかこんな事でそれが実現するなんてな。

しっかり抱えた状態で湯船につかる。

身体をキレイにしてやって、のぼせないようにすぐ風呂を出て。

パジャマに着替えさせてからまた寝かせた。

さっぱりしたからなのか、どことなく心地よさそうに見える。


その慶太の寝顔をしばらくまた見て。

そして、俺は家を出た。