忖度令嬢、忖度やめて最強になる

ハートリオ

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17 後悔

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グイッ!
私は強い力で腕を引かれた。

「帰りましょう!」
「帰りましょうよ!気分が悪いのよ!」
「アーテルッ!‥ア‥」
「――帰るわよッ!」

成人男性3人分ぐらいの力でアドウェナに引きずられながら舞踏会会場を後にする。

その間もずっと私の目はエクアに釘付けで。

馬車に乗り込んだ時自分の頬が涙で濡れている事に気付いた。

アドウェナは何も言わない。

私は空虚のままで
口が勝手に動く。

「私が恋に落ちた夢の中の美女は正に今日の彼女だった――正夢だったんだ」
「…………」
「君は年頃になればエクアの髪と瞳の色が変わることを私に隠したね」
「…………」
「エクアは伝えようとしたのに」
「…………」
「君がエクアを黙らせた」
「…………」
「――私達はこれから二度と笑い合う事はないだろうね」

家に戻れば留守番していた4才の娘が出迎えて。
『お母さまの金髪が羨ましい』と言う。

「…ハ、ハハッ…」

私は乾いた笑い声を上げて。

『大丈夫だよ。
15~16才になればその茶色の髪はお母さまよりずっとずっと美しい金色に変わるんだ。
お母さまの方の遺伝でね。
瞳の色も深紅の美しい瞳に変わるよ』
と返す途中で――

ドンッ

背中に強い衝撃
娘が私の背後をポカンと見ている。

ドンッ
ドンッ
ドンッ
ドンッ
ドンッ
ドンッ
ドンッ
ドンッ‥

大量の血――私の!?
何が起こっているか理解した時はもう床に倒れ込んでいて
体を動かすことが出来ない
その中で
最も見たくない光景が目に映る
アドウェナが
娘を
やめろーーーッ
やめてくれ
やめてくれ
うわぁぁぁぁーーー

声が出ない
あぁ
あぁぁ

!‥あぁ良かった!
乳母がアドウェナから娘をひったくって…
行け!早く!
娘をこの地獄から遠ざけてくれ!

あぁ行った‥良かった


――寒い…イ

色なんかに

エクア

絶世の美少女だというのに
まるで自信無さげで
恥ずかしげに瞳を伏せたね

繊細に震えた睫毛に
胸が高鳴った

あの瞬間に戻りたい

そうしたら

あのドアから舞台女優の様に
金髪に赤い瞳の女が入ってきても
私は君だけを見つめ続けるよ
ねぇ‥
エク‥


命が消える最期の瞬間
アーテルが強く思い描いたのは

さっき見た金髪に赤い瞳の女神の様なエクア

ではなくて

初めて会った日
控えめに微笑んだ

茶髪に赤茶の瞳のエクアだった――
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