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19 愛しくて微笑ったの
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「あの時の…
幼児退行した私を気に入られたのならアレは私とは別人だしもう存在しない者です」
「いいや。
あの時の君は君そのものだ。
命を燃やし生きようと輝いていた。
それは今目の前にいる君そのものなんだよ。
君は輝き続けているんだ」
「あの幼児退行は無意識の領域で自衛本能が起こさせたのかもしれませんが…
あの時の必死さは『意地』…
『生きたい』なんて思っていなかった。
ただあの人に殺されたくなかった。
それは生命体としての意地だったと思うのです」
どう説明しても揺るがない金色の瞳。
エクアは目を伏せて決定的な事を口にする。
「‥ご存知のはずです。
私は0才からあの時まで13年間母によって得体の知れない毒物を摂取させられていました。
…今私は健康体の様ですが気付いていないだけで既に本来あるはずの機能を失っているかもしれません。
…例えば子を産む機能だとか…
もし妊娠出産が可能でも生まれてくる子に悪い影響が出てしまうかもしれません――ですから」
エクアは伏せていた目を上げ真っ直ぐに王子を見つめる。
「ですから私は一生誰とも結婚しません」
ましてや王子となど出来るわけがないでしょうと言外に込めてエクアは微笑む。
「その微笑みも意地だね?」
「‥ッ!」
「意地っ張りなところも好きだよ」
「!!?」
王子は目を丸くしたエクアの頭を撫でて
「よしよし…
そうやって必死に意地を張るからほっとけない…
惹かれてしまうんだ」
「な‥」
「あのね。
誰だって同じだ。
先のことなんて分からない。
私だって自分がいつどうなるかなんて分からない――のは分かるよね?」
「でも私には既に人よりたくさんのリスクが分かっていて‥」
「それもどうだろう?
周りが良かれと思ってやっていた事が実は害毒である事は珍しくない。
――ある薬効の高いと言われている食品の過剰摂取が原因で命を落とした人が周りに複数人いたりする。
その他にも例を挙げればキリがない」
「殿下…」
不意に同い年の王子は自分よりも多くの事を知り深く物事を考えて来たのだと気付いてエクアは言葉を失う。
確かに。
言われてみれば確かに。
先の事なんて…
誰にも分らないのだ!
だったら私は――
「だからさ。
今を大切に。
何かが起こる前から未来に絶望なんかしないでさ。
良い未来の為に努力しよう。
大丈夫。
未来に何が起きても私が傍にいる。
それに君は何が起きようとも輝きを失わないさ。
幼児退行しなくてもね」
「――いつも年不相応な笑顔なのですね‥」
「ん?」
「初めてお会いした時は大人の様な笑顔を‥」
「…そうだった?」
「今はいたずらっ子の様です」
「‥そうでもない。
実は震えている」
言われてみれば王子は僅かに震えている?
「…どうして…」
「5年間恋焦がれ続けた女性に振られそうで」
そう言って初めてその金色の瞳を不安げに揺らした王子。
込み上げる愛しさにエクアは自然と微笑む。
その作り物でない
まるで意図のない
光の様な微笑みは
ルーフスを温かく包み
空気さえ優しく変えて
「‥ッ‥エク‥」
「あなたの愛を断れる者などいません」
「では!」
「はい」
「ああエクア!
ありがとう!
…その…
私の唇が君の唇に触れる行為をしても?」
「キッ‥
キスに類似した行為ですか?
そっ‥
そういう事は今後時間を過ごす内に徐々に、ゆっくりと、少しずつ‥」
「分かった!」
「ンンッ?~~ッ!」
さすが大国の王子は。
決して機会を逸しないのである――
幼児退行した私を気に入られたのならアレは私とは別人だしもう存在しない者です」
「いいや。
あの時の君は君そのものだ。
命を燃やし生きようと輝いていた。
それは今目の前にいる君そのものなんだよ。
君は輝き続けているんだ」
「あの幼児退行は無意識の領域で自衛本能が起こさせたのかもしれませんが…
あの時の必死さは『意地』…
『生きたい』なんて思っていなかった。
ただあの人に殺されたくなかった。
それは生命体としての意地だったと思うのです」
どう説明しても揺るがない金色の瞳。
エクアは目を伏せて決定的な事を口にする。
「‥ご存知のはずです。
私は0才からあの時まで13年間母によって得体の知れない毒物を摂取させられていました。
…今私は健康体の様ですが気付いていないだけで既に本来あるはずの機能を失っているかもしれません。
…例えば子を産む機能だとか…
もし妊娠出産が可能でも生まれてくる子に悪い影響が出てしまうかもしれません――ですから」
エクアは伏せていた目を上げ真っ直ぐに王子を見つめる。
「ですから私は一生誰とも結婚しません」
ましてや王子となど出来るわけがないでしょうと言外に込めてエクアは微笑む。
「その微笑みも意地だね?」
「‥ッ!」
「意地っ張りなところも好きだよ」
「!!?」
王子は目を丸くしたエクアの頭を撫でて
「よしよし…
そうやって必死に意地を張るからほっとけない…
惹かれてしまうんだ」
「な‥」
「あのね。
誰だって同じだ。
先のことなんて分からない。
私だって自分がいつどうなるかなんて分からない――のは分かるよね?」
「でも私には既に人よりたくさんのリスクが分かっていて‥」
「それもどうだろう?
周りが良かれと思ってやっていた事が実は害毒である事は珍しくない。
――ある薬効の高いと言われている食品の過剰摂取が原因で命を落とした人が周りに複数人いたりする。
その他にも例を挙げればキリがない」
「殿下…」
不意に同い年の王子は自分よりも多くの事を知り深く物事を考えて来たのだと気付いてエクアは言葉を失う。
確かに。
言われてみれば確かに。
先の事なんて…
誰にも分らないのだ!
だったら私は――
「だからさ。
今を大切に。
何かが起こる前から未来に絶望なんかしないでさ。
良い未来の為に努力しよう。
大丈夫。
未来に何が起きても私が傍にいる。
それに君は何が起きようとも輝きを失わないさ。
幼児退行しなくてもね」
「――いつも年不相応な笑顔なのですね‥」
「ん?」
「初めてお会いした時は大人の様な笑顔を‥」
「…そうだった?」
「今はいたずらっ子の様です」
「‥そうでもない。
実は震えている」
言われてみれば王子は僅かに震えている?
「…どうして…」
「5年間恋焦がれ続けた女性に振られそうで」
そう言って初めてその金色の瞳を不安げに揺らした王子。
込み上げる愛しさにエクアは自然と微笑む。
その作り物でない
まるで意図のない
光の様な微笑みは
ルーフスを温かく包み
空気さえ優しく変えて
「‥ッ‥エク‥」
「あなたの愛を断れる者などいません」
「では!」
「はい」
「ああエクア!
ありがとう!
…その…
私の唇が君の唇に触れる行為をしても?」
「キッ‥
キスに類似した行為ですか?
そっ‥
そういう事は今後時間を過ごす内に徐々に、ゆっくりと、少しずつ‥」
「分かった!」
「ンンッ?~~ッ!」
さすが大国の王子は。
決して機会を逸しないのである――
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