4 / 11
敵対する侯爵子息と禁断の恋に落ちた侯爵令嬢は、神聖な教会で背徳の愛撫にあえかな吐息を漏らす
4
しおりを挟む
すると、今度はルノが祭壇へ横たわる。
「シャル、きて?」
「ッッ」
脱がされるのは恥ずかしいって思ってたけど……脱がす方がよっぽど恥ずかしいかも。
見下ろすとそこには、端正な顔立ちをしたルノの姿がある。
でも……
見て、みたい。ルノの、全てを。
ゴクリと喉を鳴らすと、決意してルノの足元へ両膝をついた。ブーツとソックスを丁寧に脱がせていく。その間、ルノの視線を感じて胸が高鳴り、手が震えてしまう。
次に胸元へと近付き、美しい装飾の施されたジュストコール(コート)へと手を伸ばす。ボタンを外そうとするものの、手が震えているためうまく外せない。
ど、どうしよう……
すると、ルノの一回り大きい手が私の手を優しく包みこむ。
「シャル、力抜いて?」
気がつかないうちに、余計な力が入ってたみたい。
ルノの手に包み込んでもらううちに少しずつ落ち着きを取り戻し、指の震えが収まってきた。
「ありがとう、ルノ」
嬉しくなってにっこりと微笑むと、ルノの頬が僅かに赤く染まる。
「君の笑顔は、目の毒だな」
小さく呟くその声は、私には届かなかった。
何とか全てのボタンを外し終えてジュストコールを脱がせると、ジレ(ベスト)、そしてシャツと続く。シャツのボタンを外し、左右に開いた途端、ルノの胸板が覗く。
ルノの胸板、逞しい……
細身なのに腹筋が6つに割れていて、美しい筋肉のラインが浮き出ている。
普段恥ずかしくてじっくりと見ない、彼の細いけれど鍛え抜かれた逞しい躰を目の前にして、私の熱が急速に温度を上げていく。
私、この胸にいつも抱かれてるんだ。
白い陶器のような肌とは対照的な、硬く引き締まった躰に欲情を覚え、導かれるように指を這わす。胸板から腹筋の割れた縦の線をなぞると、ルノの躰がぴくっと揺れた。
ハッと気付き、途端に顔が羞恥で真っ赤に染まる。
「ご、ごめん……なさい」
私、何てことを。
恥ずかしくて目を合わすことが出来ずに顔を背けていると、ルノの手が私の腕をギュッと掴んだ。
「シャル、君になら何をされても構わない。俺の全てを暴いて?」
もう、引き返せない。
「う、ん。わかっ、た……」
掠れた声で答える。
ルノの方へと向き直り、シャツに手を掛ける。白く滑らかな肌を上質な布がするりと滑っていく。
彼の躰がステンドグラスを通して月の光の元に晒される。
「綺麗」
思わず呟く私に、
「シャルに、綺麗って言われるのは心外だな。綺麗という言葉は、君を表現するためにあるものだ」
そう言って眉を顰めるルノに、思わず笑みが浮かぶ。
真面目な顔して、そんなこと言うなんて。
シャツの腰回りにはベルトが二重に巻かれ、そこには短剣が差してあった。シルバーの細かく繊細な細工がほどこしてあるそれを見て、その美しさに思わず感嘆の息が溢れる。
「綺麗……」
「あぁ……それは、ギュエスター侯爵家の紋章だ」
その途端、頭から水を被せられたように、すっと現実へと引き戻された。
盾や鞘には必ずと言っていいほど紋章が入っている。
ルノの紋章は、ギュエスター家当主である父親の紋章に少し手を加えた形になっていた。これは、同じ紋章のものは2つあってはならないという決まりがあるからであるが、似た紋章を有することにより、彼が父の継承者であることを示しており、父親の死後は父の紋章を継承することを表している。
ソフィアーノ地方の二大勢力貴族である、王侯派であるギュエスター侯爵家と法皇派であるモンタナ侯爵家。
ルノワール=ギュエスター4世はギュエスター侯爵家の次期当主。一方の私、シャルロット=モンタナは、モンタナ侯爵家の令嬢として今年デビュタントとして社交界デビューし、クラスター伯爵家次期当主との婚姻話が持ち上がっているところだ。
敵対する貴族の身内として、二人が恋人であることは誰にも言えない、許されざる関係にあった。
「こんな、ところにも……ルノが、ギュエスター侯爵家である印が刻まれてるんだね……」
切ない気持ちが、胸を締め付ける。
「シャル、きて?」
「ッッ」
脱がされるのは恥ずかしいって思ってたけど……脱がす方がよっぽど恥ずかしいかも。
見下ろすとそこには、端正な顔立ちをしたルノの姿がある。
でも……
見て、みたい。ルノの、全てを。
ゴクリと喉を鳴らすと、決意してルノの足元へ両膝をついた。ブーツとソックスを丁寧に脱がせていく。その間、ルノの視線を感じて胸が高鳴り、手が震えてしまう。
次に胸元へと近付き、美しい装飾の施されたジュストコール(コート)へと手を伸ばす。ボタンを外そうとするものの、手が震えているためうまく外せない。
ど、どうしよう……
すると、ルノの一回り大きい手が私の手を優しく包みこむ。
「シャル、力抜いて?」
気がつかないうちに、余計な力が入ってたみたい。
ルノの手に包み込んでもらううちに少しずつ落ち着きを取り戻し、指の震えが収まってきた。
「ありがとう、ルノ」
嬉しくなってにっこりと微笑むと、ルノの頬が僅かに赤く染まる。
「君の笑顔は、目の毒だな」
小さく呟くその声は、私には届かなかった。
何とか全てのボタンを外し終えてジュストコールを脱がせると、ジレ(ベスト)、そしてシャツと続く。シャツのボタンを外し、左右に開いた途端、ルノの胸板が覗く。
ルノの胸板、逞しい……
細身なのに腹筋が6つに割れていて、美しい筋肉のラインが浮き出ている。
普段恥ずかしくてじっくりと見ない、彼の細いけれど鍛え抜かれた逞しい躰を目の前にして、私の熱が急速に温度を上げていく。
私、この胸にいつも抱かれてるんだ。
白い陶器のような肌とは対照的な、硬く引き締まった躰に欲情を覚え、導かれるように指を這わす。胸板から腹筋の割れた縦の線をなぞると、ルノの躰がぴくっと揺れた。
ハッと気付き、途端に顔が羞恥で真っ赤に染まる。
「ご、ごめん……なさい」
私、何てことを。
恥ずかしくて目を合わすことが出来ずに顔を背けていると、ルノの手が私の腕をギュッと掴んだ。
「シャル、君になら何をされても構わない。俺の全てを暴いて?」
もう、引き返せない。
「う、ん。わかっ、た……」
掠れた声で答える。
ルノの方へと向き直り、シャツに手を掛ける。白く滑らかな肌を上質な布がするりと滑っていく。
彼の躰がステンドグラスを通して月の光の元に晒される。
「綺麗」
思わず呟く私に、
「シャルに、綺麗って言われるのは心外だな。綺麗という言葉は、君を表現するためにあるものだ」
そう言って眉を顰めるルノに、思わず笑みが浮かぶ。
真面目な顔して、そんなこと言うなんて。
シャツの腰回りにはベルトが二重に巻かれ、そこには短剣が差してあった。シルバーの細かく繊細な細工がほどこしてあるそれを見て、その美しさに思わず感嘆の息が溢れる。
「綺麗……」
「あぁ……それは、ギュエスター侯爵家の紋章だ」
その途端、頭から水を被せられたように、すっと現実へと引き戻された。
盾や鞘には必ずと言っていいほど紋章が入っている。
ルノの紋章は、ギュエスター家当主である父親の紋章に少し手を加えた形になっていた。これは、同じ紋章のものは2つあってはならないという決まりがあるからであるが、似た紋章を有することにより、彼が父の継承者であることを示しており、父親の死後は父の紋章を継承することを表している。
ソフィアーノ地方の二大勢力貴族である、王侯派であるギュエスター侯爵家と法皇派であるモンタナ侯爵家。
ルノワール=ギュエスター4世はギュエスター侯爵家の次期当主。一方の私、シャルロット=モンタナは、モンタナ侯爵家の令嬢として今年デビュタントとして社交界デビューし、クラスター伯爵家次期当主との婚姻話が持ち上がっているところだ。
敵対する貴族の身内として、二人が恋人であることは誰にも言えない、許されざる関係にあった。
「こんな、ところにも……ルノが、ギュエスター侯爵家である印が刻まれてるんだね……」
切ない気持ちが、胸を締め付ける。
11
あなたにおすすめの小説
ウブな政略妻は、ケダモノ御曹司の執愛に堕とされる
Adria
恋愛
旧題:紳士だと思っていた初恋の人は私への恋心を拗らせた執着系ドSなケダモノでした
ある日、父から持ちかけられた政略結婚の相手は、学生時代からずっと好きだった初恋の人だった。
でも彼は来る縁談の全てを断っている。初恋を実らせたい私は副社長である彼の秘書として働くことを決めた。けれど、何の進展もない日々が過ぎていく。だが、ある日会社に忘れ物をして、それを取りに会社に戻ったことから私たちの関係は急速に変わっていった。
彼を知れば知るほどに、彼が私への恋心を拗らせていることを知って戸惑う反面嬉しさもあり、私への執着を隠さない彼のペースに翻弄されていく……。
ヤンデレエリートの執愛婚で懐妊させられます
沖田弥子
恋愛
職場の後輩に恋人を略奪された澪。終業後に堪えきれず泣いていたところを、営業部のエリート社員、天王寺明夜に見つかってしまう。彼に優しく慰められながら居酒屋で事の顛末を話していたが、なぜか明夜と一夜を過ごすことに――!? 明夜は傷心した自分を慰めてくれただけだ、と考える澪だったが、翌朝「責任をとってほしい」と明夜に迫られ、婚姻届にサインしてしまった。突如始まった新婚生活。明夜は澪の心と身体を幸せで満たしてくれていたが、徐々に明夜のヤンデレな一面が見えてきて――執着強めな旦那様との極上溺愛ラブストーリー!
肉食御曹司の独占愛で極甘懐妊しそうです
沖田弥子
恋愛
過去のトラウマから恋愛と結婚を避けて生きている、二十六歳のさやか。そんなある日、飲み会の帰り際、イケメン上司で会社の御曹司でもある久我凌河に二人きりの二次会に誘われる。ホテルの最上階にある豪華なバーで呑むことになったさやか。お酒の勢いもあって、さやかが強く抱いている『とある願望』を彼に話したところ、なんと彼と一夜を過ごすことになり、しかも恋人になってしまった!? 彼は自分を女除けとして使っているだけだ、と考えるさやかだったが、少しずつ彼に恋心を覚えるようになっていき……。肉食でイケメンな彼にとろとろに蕩かされる、極甘濃密ラブ・ロマンス!
オオカミ課長は、部下のウサギちゃんを溺愛したくてたまらない
若松だんご
恋愛
――俺には、将来を誓った相手がいるんです。
お昼休み。通りがかった一階ロビーで繰り広げられてた修羅場。あ~課長だあ~、大変だな~、女性の方、とっても美人だな~、ぐらいで通り過ぎようと思ってたのに。
――この人です! この人と結婚を前提につき合ってるんです。
ほげええっ!?
ちょっ、ちょっと待ってください、課長!
あたしと課長って、ただの上司と部下ですよねっ!? いつから本人の了承もなく、そういう関係になったんですかっ!? あたし、おっそろしいオオカミ課長とそんな未来は予定しておりませんがっ!?
課長が、専務の令嬢とのおつき合いを断るネタにされてしまったあたし。それだけでも大変なのに、あたしの住むアパートの部屋が、上の住人の失態で水浸しになって引っ越しを余儀なくされて。
――俺のところに来い。
オオカミ課長に、強引に同居させられた。
――この方が、恋人らしいだろ。
うん。そうなんだけど。そうなんですけど。
気分は、オオカミの巣穴に連れ込まれたウサギ。
イケメンだけどおっかないオオカミ課長と、どんくさくって天然の部下ウサギ。
(仮)の恋人なのに、どうやらオオカミ課長は、ウサギをかまいたくてしかたないようで――???
すれ違いと勘違いと溺愛がすぎる二人の物語。
憐れな妻は龍の夫から逃れられない
向水白音
恋愛
龍の夫ヤトと人間の妻アズサ。夫婦は新年の儀を行うべく、二人きりで山の中の館にいた。新婚夫婦が寝室で二人きり、何も起きないわけなく……。独占欲つよつよヤンデレ気味な夫が妻を愛でる作品です。そこに愛はあります。ムーンライトノベルズにも掲載しています。
独占欲全開の肉食ドクターに溺愛されて極甘懐妊しました
せいとも
恋愛
旧題:ドクターと救急救命士は天敵⁈~最悪の出会いは最高の出逢い~
救急救命士として働く雫石月は、勤務明けに乗っていたバスで事故に遭う。
どうやら、バスの運転手が体調不良になったようだ。
乗客にAEDを探してきてもらうように頼み、救助活動をしているとボサボサ頭のマスク姿の男がAEDを持ってバスに乗り込んできた。
受け取ろうとすると邪魔だと言われる。
そして、月のことを『チビ団子』と呼んだのだ。
医療従事者と思われるボサボサマスク男は運転手の処置をして、月が文句を言う間もなく、救急車に同乗して去ってしまった。
最悪の出会いをし、二度と会いたくない相手の正体は⁇
作品はフィクションです。
本来の仕事内容とは異なる描写があると思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる