15 / 16
ヒロインから溺愛されてます
第13話 私にフラグがたった?
しおりを挟む本当にこの状況どうにかならないかな?
「なんで、あんたがはなちゃん運んだの!?」
「俺がぶつけたんだから、普通俺が運ぶだろう!?」
「俺が近くにいたんだから俺がはなを運んでた!」
ちょっと、十海紫暮さん?一人称、「ワタシ」から「俺」に戻ってますよ?言ってることはごもっともだけど、私的には目立ちたくなかったから、先生(モブの)で良かったんだけどなあ。
「はなちゃん軽いから私でも運べたの!」
いや、千夏さん?さすがにそれは無理じゃないかな?
「いや、千夏、それはさすがに」
ほら、深月もそう言って、「いや、いけるか」っておいぃぃ!?
「有りなのかよ!」
十海紫暮も地でツッコミ入れてしまってるし。
なんか、カオスになってきた。
「ちょっと、ここには怪我人がいるんだから。騒ぐのは外でしなさい」
保健室の先生(女)がまとめてポイッと、三人を外に出してしまった。ナイス!先生!そこにシビれる憧れるぅ!
保健室の中に残ったのは私、先生、藤堂瞬くんの三人だ。
「三咲さん。大丈夫?」
そう聞いてきたのは、保健室の先生。彼女は、歴としたモブ。そう!安心安全のモブ!なのだ!
「…え、と…はい…だいじょぶです」
久しぶりな感じのするモブの人に安心し、ふにゃりと微笑み(気持ちだけ。ほぼ真顔)、返事をする。
「そう。なら良かったわ。でも、頭を打ってるから、念の為、病院に行ってね。それで、お迎えを呼ぼうと思ったのだけど、三咲さんのご両親の両方に連絡つかなくてね…」
まあ、そうでしょうとも。
お母さんは人気小説家で、〆切に余裕があれば、電話にも気づいただろうけど、今は〆切前。集中してるだろうから絶対気づいていない。
お父さんは、おじいちゃんのグループの次期社長さんだから、それなりの地位で働いていて、今日も朝早くにバタバタ出て行ったからたぶん忙しいから、プライベート用の電話には出れないと思う。
こうなると、そうだなあ。深月のお母さん、絢香さんに迎えに来てもらうしかないかな…。
絢香さんは、共働きのうちの両親に何かあった時、頼まれてるらしいし。何かあったら頼ってね、って私も言われてるし。絢香さんは、専業主婦だから、買い物行ってるかとか料理教室とかの日じゃなかったら、繋がるだろうし。
うん。そうしてもらおう。
「…あ、深月…、一宮深月の、母に…連絡…」
「?ああ、一宮くんのところ?確か、幼馴染みって言ってたわね。ちょっと一宮くんに聞いてから連絡してみるわね」
伝えると保健室を出ていってしまった保健室の先生。
そうなると、はい。藤堂瞬くんと二人きりですよー。
「あの。三咲さん、であってるかな?」
話しかけられ、思わずビクッとなったけど、はい私は三咲さんですよー、の意味も込めてコクリと頷く。
私が無口だというのは、何となく今までのやり取りで分かったらしい。私が頷いたのを見て、藤堂瞬は何となく嬉しそうにホッとしたように、アイオライトのような不思議な色合いの瞳を輝かせて微笑んだ。藤堂瞬は、サブキャラながら、亜麻色の髪の可愛らしく整った顔をしている。
「えっと、おれ、サッカー部3年の藤堂瞬っていいます。今日は、うちのキャプテンの十海がボールぶつけちゃって、すみません」
ぴょんと所々跳ねている亜麻色の髪を揺らしながら、ぺこりと頭を下げた藤堂瞬くん。
気にしないで、の意味を込めてフルフルと頭を振る。うーん、私の翻訳係の千夏と深月がいないからなー。ちゃんと意味通じてるかな?
「でも!、痛かった、よな?」
眉を下げてそう聞いてくる藤堂瞬くん。垂れ下がった耳と尻尾が見える。なんか、かわいい。
あ、ちゃんと通じてる。
「…だいじょぶ、…だから…」
私は大丈夫だよー、とふわりと微笑む。こういう時、動かない自分の表情筋が憎い。あ、でも、少し、口角上がった?
まだ心配そうな顔の藤堂瞬は、少しあった私との距離を縮め、私の頭に手を伸ばし、ボールの当たった箇所にそっと触れた。ふぇ?
でも、労るようなその手つきに、ふにゃりと思わず頬が緩む。自分からスリっとその手に擦り寄ってしまって…、そこで、藤堂瞬がハッと正気に戻った。
「ごめんっ!」
真っ赤になっている藤堂瞬に、ん?と固まったままの私。空気感に耐えきれなくなったのか、「本当にごめん!」とだけ言葉を残し、保健室を出て行った。その時、ちょうど入ろうとしていたのか、保健医さんと深月にぶつかりそうになって、それぞれ「きゃっ」「わっ」と驚いているのに対して、「すみません!」と謝りながらも去っていった。
それに対して、思わず、クスッと笑ってしまったのは仕方ないと思う。なんか、久しぶりに自然と笑った気がするなー、と思っていると、信じられないものを見たような顔をした深月と目が合った。
キョトンと首を傾げると、あれ、瞬間移動した?というようなスピードで私に近づいてきた深月。
「はなっ!あいつと何があったんだっ!?」
何があったって、そんな言うようなことは何もないけどなあ、と思って、フルフルと首を振る。
「いや、ぜってぇ嘘だろ!?」
いや、嘘じゃありませんが、とまた首を振る。
「そうだった……はなは、無自覚に無意識にやってるんだった」
ガックリと項垂れた深月に、なんかよく分からないけど、お疲れの意味を込めて深月の頭をなでなでしておく。
「三咲さん。一宮くんのところに連絡したところ、一宮くんのお母さんが来てくれることになったわ。一応、一宮くんは付き添いで一緒に帰ってね」
そうだった。それで、保健室の先生がさっきまでいなかったんだった、と思いながら、コクリと頷く。
それからは何事もなく、深月と帰ることになった。
なんか、今日一日で色々あった気がする。明日からは平和に過ぎるといいなあ。
───────
作者です。
連続投稿!
やばい。深月と千夏、特に千夏にスイッチが入って相手を煽るのがめっちゃ楽しい。千夏を暴走させるのが、めっちゃ楽しい。一応、彼女が乙女ゲームのヒロインなんだけどなあ。
次回!最終回!絶対見てくれよな!
すみません。やってみたかっただけです。
最終話なのは本当です。二回三回、次が最終話って言ってて信憑性無いかもしれませんが、本当です。
長編は、やろうかなー、の段階。多分やるかな。遅くなるかもしれないけど、ある程度構想が固まったら書くと思います。
でも、長編する前に、気晴らしに、ちょこちょこ番外編は投稿するかも。
27
あなたにおすすめの小説
【完結済】私、地味モブなので。~転生したらなぜか最推し攻略対象の婚約者になってしまいました~
降魔 鬼灯
恋愛
マーガレット・モルガンは、ただの地味なモブだ。前世の最推しであるシルビア様の婚約者を選ぶパーティーに参加してシルビア様に会った事で前世の記憶を思い出す。 前世、人生の全てを捧げた最推し様は尊いけれど、現実に存在する最推しは…。 ヒロインちゃん登場まで三年。早く私を救ってください。
転生したら乙女ゲームの主人公の友達になったんですが、なぜか私がモテてるんですが?
山下小枝子
恋愛
田舎に住むごく普通のアラサー社畜の私は車で帰宅中に、
飛び出してきた猫かたぬきを避けようとしてトラックにぶつかりお陀仏したらしく、
気付くと、最近ハマっていた乙女ゲームの世界の『主人公の友達』に転生していたんだけど、
まぁ、友達でも二次元女子高生になれたし、
推しキャラやイケメンキャラやイケオジも見れるし!楽しく過ごそう!と、
思ってたらなぜか主人公を押し退け、
攻略対象キャラからモテまくる事態に・・・・
ちょ、え、これどうしたらいいの!!!嬉しいけど!!!
転生した世界のイケメンが怖い
祐月
恋愛
わたしの通う学院では、近頃毎日のように喜劇が繰り広げられている。
第二皇子殿下を含む学院で人気の美形子息達がこぞって一人の子爵令嬢に愛を囁き、殿下の婚約者の公爵令嬢が諌めては返り討ちにあうという、わたしにはどこかで見覚えのある光景だ。
わたし以外の皆が口を揃えて言う。彼らはものすごい美形だと。
でもわたしは彼らが怖い。
わたしの目には彼らは同じ人間には見えない。
彼らはどこからどう見ても、女児向けアニメキャラクターショーの着ぐるみだった。
2024/10/06 IF追加
小説を読もう!にも掲載しています。
痩せすぎ貧乳令嬢の侍女になりましたが、前世の技術で絶世の美女に変身させます
ちゃんゆ
恋愛
男爵家の三女に産まれた私。衝撃的な出来事などもなく、頭を打ったわけでもなく、池で溺れて死にかけたわけでもない。ごくごく自然に前世の記憶があった。
そして前世の私は…
ゴットハンドと呼ばれるほどのエステティシャンだった。
とあるお屋敷へ呼ばれて行くと、そこには細い細い風に飛ばされそうなお嬢様がいた。
お嬢様の悩みは…。。。
さぁ、お嬢様。
私のゴッドハンドで世界を変えますよ?
**********************
転生侍女シリーズ第三弾。
『おデブな悪役令嬢の侍女に転生しましたが、前世の技術で絶世の美女に変身させます』
『醜いと蔑まれている令嬢の侍女になりましたが、前世の技術で絶世の美女に変身させます』
の続編です。
続編ですが、これだけでも楽しんでいただけます。
前作も読んでいただけるともっと嬉しいです!
モブが乙女ゲームの世界に生まれてどうするの?【完結】
いつき
恋愛
リアラは貧しい男爵家に生まれた容姿も普通の女の子だった。
陰険な意地悪をする義母と義妹が来てから家族仲も悪くなり実の父にも煙たがられる日々
だが、彼女は気にも止めず使用人扱いされても挫ける事は無い
何故なら彼女は前世の記憶が有るからだ
神様の手違いで、おまけの転生?!お詫びにチートと無口な騎士団長もらっちゃいました?!
カヨワイさつき
恋愛
最初は、日本人で受験の日に何かにぶつかり死亡。次は、何かの討伐中に、死亡。次に目覚めたら、見知らぬ聖女のそばに、ポツンとおまけの召喚?あまりにも、不細工な為にその場から追い出されてしまった。
前世の記憶はあるものの、どれをとっても短命、不幸な出来事ばかりだった。
全てはドジで少し変なナルシストの神様の手違いだっ。おまけの転生?お詫びにチートと無口で不器用な騎士団長もらっちゃいました。今度こそ、幸せになるかもしれません?!
醜いと蔑まれている令嬢の侍女になりましたが、前世の技術で絶世の美女に変身させます
ちゃんゆ
恋愛
男爵家の三女に産まれた私。衝撃的な出来事などもなく、頭を打ったわけでもなく、池で溺れて死にかけたわけでもない。ごくごく自然に前世の記憶があった。
そして前世の私は…
ゴットハンドと呼ばれるほどのエステティシャンだった。
とある侯爵家で出会った令嬢は、まるで前世のとあるホラー映画に出てくる貞◯のような風貌だった。
髪で顔を全て隠し、ゆらりと立つ姿は…
悲鳴を上げないと、逆に失礼では?というほどのホラーっぷり。
そしてこの髪の奥のお顔は…。。。
さぁ、お嬢様。
私のゴットハンドで世界を変えますよ?
**********************
『おデブな悪役令嬢の侍女に転生しましたが、前世の技術で絶世の美女に変身させます』の続編です。
続編ですが、これだけでも楽しんでいただけます。
前作も読んでいただけるともっと嬉しいです!
転生侍女シリーズ第二弾です。
短編全4話で、投稿予約済みです。
よろしくお願いします。
【完結】正しいモブのススメ。
谷絵 ちぐり
恋愛
全てのモブになりたいあなたへ贈る
モブによるモブの為のモブの教科書。
明日、あなたが異世界モブに転生した時の為に役にたつことを願う。
※この物語は完全にフィクションであり、現実とはなんの関係もありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる