従姉妹様(おねえさま)それはあんまりじゃありませんか?

はなまる

文字の大きさ
35 / 39

35無事に結婚式終わる

しおりを挟む

 
 式場は一時騒然となったが参列者はブルーノの祝辞を聞いてここが神聖な結婚式の場だと言うことをいち早く思い出した。

 そこにクワイエス侯爵が祭壇の前に出て来た。

 レオルカはエルディを後ろに庇い辺りを警戒している。

 エリクもアンリエッタの前に出てひどくピリピリした雰囲気でいる。


 「アンリエッタ。エルディ?もう大丈夫だ。安心しろ」

 ゼイスはふたりに優しい声色で声をかける。レオルカとエリクにも目配せをして大丈夫だと合図を送る。

 そして客席に向かって話を始めた。

 「先ほどはお騒がせをして申し訳ない。だが、今日は娘二人の大切な門出の日です。どうかお心穏やかにふたりの娘の旅立ちを祝って頂きたい」

 ゼイスが頭を下げる。さっと視線を巡らせてシルビアの親族にもう一度頭を下げる。

 それに続いて妻のマリアンヌが掛け声を…

 「皆さまどうか二組の新たな旅立ちに拍手を…」

 招待客は割れんばかりの拍手をアンリエッタやエルディに送る。

 そして二組の新たな夫婦は参列者に見守られ退場した。


 <<<<<<<


 教会から馬車に乗り込むと一同はまたクワイエスの屋敷に向かった。

 これから祝賀のパーティがある。

 レオルカとエルディはふたりで馬車に乗り込むとほっと息をついた。

 「それにしてもどうなるかと思ったわ」

 「ああ、まさかキャサリンが…エルディは?大丈夫か。恐かっただろう?」

 「ええ、驚いたけどブルーノ様ってすごいのね」

 レオルカは少し眉を下げる。

 「おいおい、結婚してすぐに他の男を褒めるのか?」

 「レオルカ様ったら、いやだ。ヤキモチですか?もちろん一番なのはレオルカ様に決まってますよ」

 エルディはレオルカの頬にそっと唇を当てる。

 「そうか。なぁエルディ。俺達結婚したんだ。そのレオルカ様って言うのはやめてくれないか。今日からはレオルカって。ほら、言って」

 「そうで、す、ね。れおる、か…やだ。恥ずかしい…」

 エルディの顔は朱色のインクを落としたように真っ赤になって行く。

 「エルディ。めちゃくちゃ可愛いな。さあ、良く聞こえなかったぞ。もう一度…」

 「れおるか…」

 「エルディ」レオルカに激しく唇を奪われる。何度も唇を吸い上げられ激しく求められた。

 
 やっと濃厚なキスが終わると…

 「キャサリンはどうなるんです?」ぽそりとエルディが呟いた。

 「ああ、このまま返すわけにもいかないだろうな。あんなことをしたんだ。クワイエス侯爵家の威信にもかかわる問題だろうし…」

 「ええ、でも…彼女だって被害者でしょう?」

 ケネト殿下の騒ぎでキャサリンの出目や生い立ちは広く世間に知れ渡っていた。

 母親の逆恨みで彼女もそんなおかしな考えになってしまった事や、本気でケネトを愛していたらしいと言うことも、彼女も気の毒だという声もあったくらいだ。


 「ああ、でも無罪放免と言うわけにはいかないだろう」

 「何とかいい方法があればいいのに」

 「エルディは優しいんだな。あいつに嫌な事をされたって言うのに…」

 「まあ、そうだけど。でも、こうやってアンリエッタお姉様と一緒に結婚式が出来たのだってキャサリンがいてくれたからでしょう?まあ、嫌な事はされたけど逆にそれで私はすごくいい結婚式になった訳で‥でも、キャサリンは違うでしょう?ケネトの事も諦めなきゃいけない。王都にはいられなくなったし…そう言えば男爵領に帰ったって聞いてたけど、どうしてこんな所まで来たのかしら?やっぱり結婚式を邪魔するつもりだったのかしら?」

 「いや、計画的じゃないと思う。ずっと下調べして計画的にだめにするつもりならもっと違うやり方をしたと思う。さっきのはほんとに突発的な行動だ。ブルーノがいてくれて良かった。それにしてもあいつキャサリンが来ると分かってたみたいだったな」

 「二人が共謀したって事?」

 「いや、それはない。ブルーノはそんな事をする奴じゃない。堅物で真面目だ。それにあいつはキャサリンを好きだったんじゃないのか?」

 「そうだったわね。連れて行かれるキャサリンについて行ったわね。きっとまだ彼女が好きなのね。それにしてもキャサリンもばかな事を…」

 「ああ、何とか立ち直ってくれればいいが…エルディ。もうその事を考えるのはよそう。今日は俺達の結婚式なんだぞ」

 「そうね‥」

 「ああ、やっと今夜君を…」

 レオルカはブッと鼻血が出そうになる。ずっと我慢して来た。エルディと今夜。そう考えただけでもう股間は勃ちあがりそうになった。

 「もう、嫌だ。そう言うことは…」

 エルディもレオルカが言おうとしたことが容易に察しがついた。

 ふたりは馬車の中で真っ赤になり緊張で黙ってしまった。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

祓い師レイラの日常 〜それはちょっとヤなもんで〜

本見りん
恋愛
「ヤ。それはちょっと困りますね……。お断りします」  呪いが人々の身近にあるこの世界。  小さな街で呪いを解く『祓い師』の仕事をしているレイラは、今日もコレが日常なのである。嫌な依頼はザックリと断る。……もしくは2倍3倍の料金で。  まだ15歳の彼女はこの街一番と呼ばれる『祓い師』。腕は確かなのでこれでも依頼が途切れる事はなかった。  そんなレイラの元に彼女が住む王国の王家からだと言う貴族が依頼に訪れた。貴族相手にもレイラは通常運転でお断りを入れたのだが……。

引きこもり少女、御子になる~お世話係は過保護な王子様~

浅海 景
恋愛
オッドアイで生まれた透花は家族から厄介者扱いをされて引きこもりの生活を送っていた。ある日、双子の姉に突き飛ばされて頭を強打するが、目を覚ましたのは見覚えのない場所だった。ハウゼンヒルト神聖国の王子であるフィルから、世界を救う御子(みこ)だと告げられた透花は自分には無理だと否定するが、御子であるかどうかを判断するために教育を受けることに。 御子至上主義なフィルは透花を大切にしてくれるが、自分が御子だと信じていない透花はフィルの優しさは一時的なものだと自分に言い聞かせる。 「きっといつかはこの人もまた自分に嫌悪し離れていくのだから」 自己肯定感ゼロの少女が過保護な王子や人との関わりによって、徐々に自分を取り戻す物語。

どうぞ、おかまいなく

こだま。
恋愛
婚約者が他の女性と付き合っていたのを目撃してしまった。 婚約者が好きだった主人公の話。

逃した番は他国に嫁ぐ

基本二度寝
恋愛
「番が現れたら、婚約を解消してほしい」 婚約者との茶会。 和やかな会話が落ち着いた所で、改まって座を正した王太子ヴェロージオは婚約者の公爵令嬢グリシアにそう願った。 獣人の血が交じるこの国で、番というものの存在の大きさは誰しも理解している。 だから、グリシアも頷いた。 「はい。わかりました。お互いどちらかが番と出会えたら円満に婚約解消をしましょう!」 グリシアに答えに満足したはずなのだが、ヴェロージオの心に沸き上がる感情。 こちらの希望を受け入れられたはずのに…、何故か、もやっとした気持ちになった。

【完結】失いかけた君にもう一度

暮田呉子
恋愛
偶然、振り払った手が婚約者の頬に当たってしまった。 叩くつもりはなかった。 しかし、謝ろうとした矢先、彼女は全てを捨てていなくなってしまった──。

王弟殿下の番様は溺れるほどの愛をそそがれ幸せに…

ましろ
恋愛
見つけた!愛しい私の番。ようやく手に入れることができた私の宝玉。これからは私のすべてで愛し、護り、共に生きよう。 王弟であるコンラート公爵が番を見つけた。 それは片田舎の貴族とは名ばかりの貧乏男爵の娘だった。物語のような幸運を得た少女に人々は賞賛に沸き立っていた。 貧しかった少女は番に愛されそして……え?

偉物騎士様の裏の顔~告白を断ったらムカつく程に執着されたので、徹底的に拒絶した結果~

甘寧
恋愛
「結婚を前提にお付き合いを─」 「全力でお断りします」 主人公であるティナは、園遊会と言う公の場で色気と魅了が服を着ていると言われるユリウスに告白される。 だが、それは罰ゲームで言わされていると言うことを知っているティナは即答で断りを入れた。 …それがよくなかった。プライドを傷けられたユリウスはティナに執着するようになる。そうティナは解釈していたが、ユリウスの本心は違う様で… 一方、ユリウスに関心を持たれたティナの事を面白くないと思う令嬢がいるのも必然。 令嬢達からの嫌がらせと、ユリウスの病的までの執着から逃げる日々だったが……

【完結】地味な私と公爵様

ベル
恋愛
ラエル公爵。この学園でこの名を知らない人はいないでしょう。 端正な顔立ちに甘く低い声、時折見せる少年のような笑顔。誰もがその美しさに魅了され、女性なら誰もがラエル様との結婚を夢見てしまう。 そんな方が、平凡...いや、かなり地味で目立たない伯爵令嬢である私の婚約者だなんて一体誰が信じるでしょうか。 ...正直私も信じていません。 ラエル様が、私を溺愛しているなんて。 きっと、きっと、夢に違いありません。 お読みいただきありがとうございます。短編のつもりで書き始めましたが、意外と話が増えて長編に変更し、無事完結しました(*´-`)

処理中です...