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猫手水晶

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第2.5章 赤いランプの目

俺にとって最悪の日 (1)

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俺は真っ二つになった上半身だけで、もう動くことはできなかった。
血が体から出すぎたせいで、腕で這うことすらできず、ただこの光景を目の当たりにしていた。
それはまさに地獄絵図で、軍服を着た男が赤く目を光らせ、次々と俺の仲間たちの命を刈り取っていく。
俺はただ俺たちの正義のまま行動していただけじゃないか。それで息抜きしてもいいじゃないか。流れ者ひとりくらい弄んでもいいじゃないか。
なぜ、俺がこんな目にあわなくちゃいけないんだ。
ダメージが大きいあまり、神経がイっちまってるのか痛みはなかったが、死への精神的恐怖にずっと苛まれ続けながら、この悪夢のような光景を見せられていた。
ここで終わりたくねえよ...嫌だ...
俺はもっとヴォルフででっかくなれる男なんだ。ズィリグ様だってそう言ってた。
俺はそう思いながら真っ赤な血の海を漂っていると。またあの忌まわしい軍人男が俺の面の前で俺の事を見下していた。
「お前、まだ死んでいなかったのか。」
彼はそう言って、ドンという轟音と共にショットガンの弾を一発、俺の眉間向かって放った。
ほんと、今日は俺にとって最悪の一日だったな。
そう思いながら、俺は目を閉じた。

ーーーーーーーーーーー

「なあ、お前ら今日はどんな事やっちまおうか。」
俺たちはプレハブや金属でできた大地を歩きながら、仲間とそんな事を話していた。
「ああ、また流れ者から何かもの盗るか?それともそこらにいる飢えた女と一発イン&アウトやっちまうのもいいかもな。」
俺の仲間の一人である、体は今の時代では珍しく太っており、ガスマスクをなぜか常に身に着けたドゴという大男が言った。
「そうだよな、こんな何もねえ世界じゃ息抜きも必要だ。最近腹も減って仕方ねえからどっかから食べ物とってくるのもいいかもな。まあ…あのまずい固形食しかねえだろうけどよ。」
そして、俺とドゴの2人はただだべりながら進展のない話をしていると、もう一人の仲間がとても面白そうな事を言ったんだな。要するに、俺たちは普段3人組で行動してるってわけだ。
「なあズギ、その話なんだがよ。」
痩せこけているが動きはすげえ早くてナイフさばきのうまい、はげあたまのジモーが言った。
「ン?何だ、何かおもしれえ事でもあんのかよ?また何ももってねえやつくたばらせてもつまんねえからよ。せめて女をイン&アウトしてサイコーになっちまう事くらいにはおもしれえ話にしてくれよ。」
こいつはとってもまじめで、このヴォルフの中でもズィルグ様に忠実なんだが、いつもそれが空回りしてやがる。だが俺たちとは少なくとも趣味はあう。
同じく真面目ではあるが、俺たちにはなーんにも共感できねえフィシャとミリィとかいう偽善女みてえなやつらとは違う。あいつらノリ悪いしうぜーんだ。俺たちのしてること気持ち悪そうにして見てやがるし、それをやめろなんか言い出すもんだから、一発こぶしをぶちかまそうとしてジモーに止められた事がある。まあ仲間同士やりあったら上に仕打ちを受けるんだしやめておいたが、ほんとやな気分だった。
それにあいつら偽善でもねえな、俺たちからすりゃ立派な悪だし俺たちこそ正義だよな。ズィリグ様の趣味にもこいつら合ってねえし、逆に俺たちはまさしくズィリグ様の考えに合っていて、彼に忠実な部下だ。
ジモーは話を続ける。
「この前まさに正義といえるようなおもしれえ命令を分隊長から受けたんだ。これをやっちまえば俺たち上にのぼれるかもしれねえぞ。」
「ほうほう、面白そうじゃねえか。話を聞くぜ。」
ジモーの話によれば、この前起きた抗争で大勢の仲間がやられちまって、今度グループみんなでソーシキってやつをしようとしてたんだが、その屍みいんななくなっちまってたらしい。
そして、おれらヴォルフのメンバーの一員がその屍を見つけた。
しかし、その屍があった場所が、どうもヤバい場所だったらしい。
流れ者どもが集まり作られた、ちっちゃな自治区の食料庫に、まるでもののように積み重ねられていたんだ。
そして、またしばらくそれを見てると、住民がやってきた。そいつをつけてみると、なんとおそろしい事に、その屍を焼いて、とっても野蛮にそれを口に運んでむしゃむしゃしてやがったらしい。そして、その住民はみんなニヤニヤ不気味に笑ってたんだと。
俺はそれを聞いて許せなくなると同時にすっごくわくわくしてた。
なんでかって?それはな、わるーい事しちまった奴には罰が必要なんだぜ。そしてそいつには何しちまったっていいんだ。それが正義になるんだよ。普段流れ者になんかやらかすときは加減ってのが必要だがその加減もいらなくなる。
ズィリグ様のありがたーい教えによると、俺たちは悪い事しちまったヤツはたとえ仲間だったとしても徹底的にやるって事だ。それにそいつをやっちまう方法であれば、どんな方法であったとしてもかまわないんだと。
「なーんだそれ?」
ジモーは俺のその言葉にビクッとしてた。おれが怒っちまったか不安だったんだろうな。
「すっげえ楽しそうじゃねえか!」
俺、ズギは頭のてっぺんだけに生やした長い髪を、そこらの工業用オイルで固め、イかしたモヒカンに整えながら言った。
ドゴもヒヒヒと笑いながら上機嫌で、体をふるわすその姿はすこしキモく見えた。またこいつイン&アウトやらかそうとしてんだろう。こいつそういう事の常習犯なんだよ。
「それじゃ、そのお楽しみのプランというものを教えてくれよ。ジモーさん。」
ドゴは息遣いをハアハアと荒くしながらこう言った。
俺もドゴとは違う意味で興奮してた。
なんでかって?それは俺の左手に持ったおクスリでサイコーな気分になりながら右手のショットガン、そして背中に担いだパイプで大暴れキめられるのがたのしみでしかたなかったからなのさ。
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