令嬢スロート

桃井すもも

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婚約者S

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余程嬉しいのね。

ご希望通りに母ご自慢の庭園をご案内した。

「美しい」
ご満悦のご様子。何より。

嬉しいでしょう。これも全て、将来貴方の財産となるのですもの。

感情が漏れそうで扇子で顔を隠す。
目を細めて私を見つめる貴方、まさか私の顔まで金貨に見えて?

心なしか、帰りのエスコートの際、触れる手をキュッと握られたわ。
キュッと。

眩しい金の髪。
貴方、ご自分の色ばかりでなく、金貨もお好きなのね。

御免なさいね、申し訳ないわ。
私の髪はプラチナですもの。物足りなくてよね?

ご安心下さい。我が家は潤沢な財で潤っておりますもの。
この婚姻は貴方に幸福を齎すわ。
汚点は私ね。プラチナの私ね。

お目汚し御免遊ばせ。


「どう?ご満足?」
せめて笑顔だけはと大判振る舞いの笑みを向けた。

貴方の笑顔もとても素敵ね。
くらくらしちゃいそう。

駄目よスロート、しっかりして。

眼の前の男は、貴女の後ろに透けて見える
金とか金とか爵位とかが魅力なのよ。

煤けたプラチナなどは無用なの。

だから、揺れる心をしっかり止めて。
貴族夫人の人生における困難は、大抵笑顔で解決すると、そうお母様も仰っていたじゃない。
お母様の笑顔ってバリエーションが多くて、ちょっと私には難易度9(10中)ってところですけど。

だから、この巫山戯た殿方に心を寄せては駄目よ。
心だけは貴女のものよ。




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