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第10話_1 二人の物語の始まり※
しおりを挟む「ヴィオレッタ――!」
シュタインの叫び声を聞きながら、わたしはどさりと床に倒れた。
白い長い髪が、床に拡がる。
(気持ちが悪い……吐き気がする……息が苦しい……)
だんだん頭もぼんやりしてくる。
ブルネットの派手な巻き髪をした継母は、なおも叫んでいる。
「おほほほほ! ヴィオレッタが死ねば、今度こそ世界で一番美しい女はわたくしになる!!! 最高の気分よ」
(こんなバカ女の持ってた毒で死ぬとか、わたしも馬鹿っぽいわね……)
そんなことを思っていると、彼女がおほほと笑いながら倒れている騎士達に命じた。
「報酬はたんまりはずもう――そこの変態は一応辺境伯。殺したら外交問題になりかねない。しかたないから、おまえたち、痛めつけるだけ痛めておやり――!」
(ああ、やっぱりそうなる――? まあ、ちょっと痛いぐらい、あいつマゾだから我慢できるかななんて思ったんだけど――大丈夫かしら――?)
遠のく意識の中で、わたしは考えた。
その時――。
「俺がこの騎士達に痛めつけられることはない――」
騎士達に押しつぶされかけているシュタインが、今までに聞いたことのない低い声でそう言った――。
「このひょろひょろもやしっこが、何を言ってるんだい? 自分の置かれている状況が分からないのか? やっぱり、頭のねじがはずれた坊やは言うことが違うねぇ――」
おほほと継母は笑う。
だが――。
「何をするんだい、お前たち――!?」
突然――。
――継母の身体を、起きた騎士たちが数名で押さえつけ始めた。
(ど、どういうこと――!?)
ぼんやりする意識の中、わたしはシュタインの動向を見守った。
彼の身体の上から、騎士たちはいっせいに退いていく――。
そうしてゆっくりと、シュタインは立ち上がり、継母に対峙する。
「馬鹿はお前だよ、王妃――ほら、俺のこの顔に見覚えはないか――?」
シュタインは眼鏡をはずす。
彼の金髪碧眼で端正な顔立ちが露わになった。
変態なので忘れてしまいそうになるけれど、彼はとても綺麗な顔の持ち主だ。
彼の顔を見て、継母はわなわなと震え始めた――。
「お、お前――その顔は、あの疎ましき皇妃の――」
震える彼女の顔は真っ青だった。
「お前、お前は――まさか――」
「我が名は――」
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