【R18】冷徹なエリート社長はセフレな私を一途に愛して孕ませたい

おうぎまちこ(あきたこまち)

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第1章 海外での出会い

4-1 酒の力

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 ホテルの部屋の中。
 美桜みお恭司きょうじのことを引き留めた。

「良ければ、私と一緒にお酒を飲みませんか?」

 一瞬だけ間があった後、彼が問いかけてくる。

「どうしてだ?」

「色々と助けてもらったお礼がしたいんです、おかしいでしょうか?」

 我ながら大胆な申し出だったとは思う。
 ホテルの一室で一緒にワインを飲もうだなんて、未婚の女性としては不適切な言動だったかもしれない。
 男性に向かって一緒に酒を飲もうなんて声をかけたのは生まれて初めてだ。
 ドクンドクンドクン。
 心臓の音が鳴りやまない。 
 まるで好きな男の人にでも告白している気持ちになってくる。
 美桜は緊張を和らげたくて、頬にかかった髪をそっと耳にかけた。そわそわしてしまって、身体の一部を触っていないと落ち着かないのだ。

「嫌だったら別に良いんですけれど、せっかくだから、誰かと一緒の飲めるなら楽しいかなって」

 恭司は逡巡しゅんじゅんしているようだ。
 ドキドキと相手の反応を待っていると、彼がふっと微笑んだ。

「だったら、お言葉に甘えるとするか」

 ひとまず断られなかったのでホッとする。

(良かった、すごく緊張しちゃった)

 しばらくすると、赤ワインが届いた。

「ええっと、Danke Schönありがとうございます!」

 美桜が感謝を告げると、ホテルマンは立ち去った。

「さっきは白ワインだったが、今度は赤ワインみたいだな。ちゃんと飲めそうか?」

「はい。何事も挑戦かなって」

「だが、そんなに酒には強くなさそうだ。まあ、飲み過ぎないように俺が見張っておいてやるよ」

「ありがとうございます!」

 そうして、ワインを抱き抱えたまま室内に戻ろうとしたところ、ほろ酔いのせいか足がもつれて転びそうになる。
 けれども、すぐに恭司が美桜の身体を支えてくれたので助かった。
 またしても彼に抱きしめられる格好になってしまい、ドキドキ落ち着かない。

「言ったそばから、そそっかしいな」

「すみません!」
 
 美桜は部屋の中の備え付けのテーブルの上にワイン瓶を置くと、火照った身体を落ちつけたくて窓に手を添えた。

「もうすぐ冬なのに、なんだか身体が熱くって」

 言い訳をしながら窓を開けた、その瞬間。

「みゃお!」

「きゃあっ……!」

 何かが美桜の顔に乗っかってきた。
 なんだか生暖かい。
 慌てて引き剥がすと……。

「もしかして、マルクト広場の近くにいた猫ちゃん?」

「みゃあお!」

 なんと――黒猫がそこにいたのだった。
 美桜の顔を見ると、すりすりと擦り寄ってくる。

「ふふ、私も会えて嬉しい」

 黒猫を抱きしめてやると、幸せそうに一声鳴いた。
 しばらくじゃれていたら、視線を感じたので背後を振り向く。

「どうしましたか?」

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