30 / 133
第六章
とある平民達のお話6
しおりを挟む
「……普通に拉致だな」
「……はい」
青年マルコの呟きに、少女ミラは苦笑する。
「でも……。
あのまま行っていたら、酷い所に嫁に出されていましたので、ほんのちょっとですが、そのう……。
希望が持てると言いますか……。
持ちたいと言いますか……」
少女ミラが続けた言葉は小さくか細くなっていく。
それに対して、娘ザンドラが顔をしかめる。
「わたしが言うのもなんだけど、フリックの所に行くなら、どこへ行くにしてもマシよ。
金にモノを言わせてやりたい放題のクズだから」
「そ、そうですか……」
少女ミラは首を竦めた。
それに、老人ヨナスも続ける。
「まあ、安心せい。
フリックとやらはよく知らんが、わしの予想が正しければ、お前さんらは確実に守って貰えるじゃろう」
老人ヨナスの言に、青年マルコが訊ねる。
「なんだ、じいさん。
何か分かったのか?」
娘ザンドラと少女ミラも視線を老人ヨナスに向けた。
それに対して、老人ヨナスは苦笑する。
自分が護送車に突っ込まれた時は顔を出さなかったご令嬢について、老人ヨナスは様々な噂を耳にしていた。
曰く、効率を重視したエリージェ式の立案。
曰く、働かない父親を働くように仕向けず、あっさり病気療養という名の引退に追い込む。
曰く、謀反の疑いがある騎士を、聴取も無しにボコボコにしたあげく、牢屋に押し込む。
曰く、曰く、曰く……。
それがたった十歳のご令嬢がした事と聞き、老人ヨナスは良い時期に役職を辞し隠居出来たと安堵していた。
老人ヨナスとて効率の重要性は理解していた。
ただ、それに偏りすぎる事への不安も持っていた。
例えば、指示者に課せられた”指示書”についてだ。
確かに、指示者が書けば間違いは少なくなるだろう。
言い間違いなどの問題も、起きないだろう。
だが、双方がそれに頼りきりになった場合、どうだろうか?
指示者は指示書に書いてある通りにすれば問題無いからと、”何故”それが必要なのかの理解を指示する相手にさせなくなるのではないか?
逆に、受け取る側も、”何故”それが必要なのかも理解せず、書いてある通りにするだけで面倒事も責任もないと考えるのを放棄する愚物に成り下がるのではないか?
老人ヨナスは効率をおもんばかる余り、人と人、上役と部下、それらの相互理解が無くなるのではないか?
そう、懸念していた。
だが、恐らく効率という御旗の元、それは理解されず淘汰されるだろう。
もし、もう少し若ければ多少は何かしらを行おうという気も起きたかもしれない。
だが、たかだか平民の爺の話など一笑に付されるだろう。
だから、引退できることを喜んでいたのだが……。
「まあ、なんじゃ……。
わしの予想が正しければ、わしらは公爵家に雇われることになるだろうて」
「はぁ?
何でそうなる?」
青年ヨナスは訝しげに眉をひそめた。
他の二人も困惑した顔で顔を見合わせた。
公爵家ほどの大貴族に仕えるのであれば、それ相応の”格”が必要となる。
大商人の子息子女ならともかく、いかにも平民の自分が――しかも護送車に詰め込まれた自分が、そうなる理由が分からないのだろう。
そんな三人のことなど頓着せず、老人ヨナスは一つ、ため息をついた。
「何にしても、散々こき使われるんじゃろうなぁ」
――
公爵邸に連れてこられた四人は、一室の中央に並べられた椅子に座らされていた。
その中には、鍋などの場違いな物を抱えている者もいたが頓着せず、彼らの前に立つ者がいた。
エリージェ・ソードルである。
色々と予定外のことが起きてしまい、多少、遅くなってしまったが、この女、取りあえず四人揃ったことに満足することとしていた。
「では改めて自己紹介をするわね。
わたくしはエリージェ・ソードル。
現在は公爵代行をしてるわ」
改めても何も、四人に自己紹介などしていないのだが、この女は気づいていない。
だが、顔をひきつらせる四人もそれを指摘できない。
なので、話はそのまま進む。
「現在、公爵家は人手が足りていないの。
なので、あなた達には公爵家に仕えてもらう事になったわ」
この女、”仕えてもらう”と言いながら、四人の意志を一切聞かない。
そんな様子に、四人の顔は不安と諦めがごちゃ混ぜになったものとなる。
だが、これにも異論を挟めない。
当たり前である。
大貴族であるエリージェ・ソードルは四人が断るなど欠片も考えてないし、四人も大貴族の言葉を否定できるとは思えない。
やはり、話だけがさっさと進んでいく。
「賃金について。
後ほど説明をさせるけれど、正直、大した額ではないわ。
ただ、それはあなた達の能力をまだ、十全に見せて貰えてないからだと理解して頂戴。
それさえ見せて貰えれば、それなりのものを用意すると約束するわ。
今から、政務官にその辺りも含めて説明をさせるから、良く聞くように。
また、後ほど個別に面談も行うので、家族との生活環境等の要望があったら、その時にでも聞かせて頂戴」
そこまで言うと、視線を部屋の隅に待機している政務官の男に向ける。
そして、「よろしくね」と場所を譲った。
政務官の男は女に頭を下げると、入れ替わるように四人の前に立ち、話を始めた。
そんな様子を部屋の隅で眺めていると、隣にいた女騎士ジェシー・レーマーが姿勢を低くし、声を落としながら報告する。
「お嬢様、ミーナが何やら用事があるようで、廊下で待ってます」
「そう?
分かったわ」
エリージェ・ソードルが戸まで歩くと、早足で抜かした女騎士ジェシー・レーマーがそれを開ける。
扉のすぐ側に、侍女ミーナ・ウォールが立っていた。
何やら、長細い入れ物を持っているのだが、それには重量があるらしく、少しつらそうな表情をしていて、女の姿を見ると、ほっとしたものに変わった。
「お嬢様、実は例の扇子が届いたのですが……。
何か間違ったものが届いたらしく、送り返そうと思うのですが、念のために確認して頂こうとお持ちしました」
「間違ったもの?」
エリージェ・ソードルが小首をひねると、侍女ミーナ・ウォールは苦笑しながら答える。
「はい、扇子とはおよそ思えない重量の”何か”が届いたようで……」
「ああ、そういうこと。
ジェシー、念のために改めて貰えるかしら?」
「はい」
と女騎士ジェシー・レーマーは侍女ミーナ・ウォールからそれを受け取る。
「確かに重いですね。
北西に住む異民族が使う、重量で殴り倒す短刀ぐらいでしょうか」
などと言いながら、女騎士ジェシー・レーマーは革張りの黒い入れ物の留め具を外し、開ける。
そして、中のものを取り出した。
「扇子ではありますね。
鋼……で出来ているのでしょうか?
美しいですが、ご令嬢が持つには重すぎますね」
女騎士ジェシー・レーマーはそれを開いてみせた。
その扇子は黒地に銀色の縁のみの装飾で、ややもすれば地味な印象を受けがちだが、精巧で上品な一品だった。
エリージェ・ソードルはそれを確認すると、一つ頷く。
そして、手を伸ばした。
女騎士ジェシー・レーマーはそれに焦る。
「あっ! お嬢様!
見た目はともかく、すごく重いので――」
だが、エリージェ・ソードルは気にする風でもなく、扇子を掴むと女騎士ジェシー・レーマーから引き寄せる。
恐る恐る手放す女騎士ジェシー・レーマーなど気にする素振りも見せず、それを片手で持った。
そして、扇子を閉じると、目を見開く二人の前で軽く振って見せた。
空気を裂く音が鈍く響く。
一度、二度、三度……。
そして、エリージェ・ソードルは扇子を眺めながら呟くように言った。
「そうね……。
”まだまだ”、重く感じるわね。
でもまあ、今はこんなものでしょう」
女騎士ジェシー・レーマーは驚愕のまま訊ねる。
「お、お嬢様?
お嬢様のその細腕で――」
だが、そこに割り込むように、騎士が近づいてくるのが見えた。
騎士リョウ・モリタだった。
騎士リョウ・モリタは恭しく頭を下げると、エリージェ・ソードルに言った。
「失礼します、お嬢様。
少し、よろしいでしょうか?」
「何かしら?」
「騎士団も落ち着きを取り戻して来たので、そろそろ、お嬢様の護衛に戻りたいと思うのですがよろしいでしょうか?」
騎士団の現在は、騎士団長フランク・ハマンが責任を取り、一ヶ月の謹慎処分となっていた。
その代わりに、副団長が団長代行となっている。
「……」
エリージェ・ソードルは扇子の先を顎に当て、少し考えた。
そして、答える。
「リョウ、申し訳ないけどもう少し騎士団にいて頂戴」
「お嬢様?」
驚き見返す騎士リョウ・モリタに対して、話を続ける。
「護衛についてはレネがいてくれるし、それよりも、騎士団にあなたがいてくれる方が安心よ」
騎士リョウ・モリタは困惑した。
当たり前だ。
そもそも、騎士団からすでに除隊した身である。
最初の内であれば、エリージェ・ソードルと騎士団の渡し役としては意味があっただろうが、落ち着いた今、すでに余所者になった――しかも若造の自分が団にいたとして、特にすることなど無かったからだ。
ただ、女に「よろしくね」と言われてしまえば否と言うわけにもいかず、了解の意を示すと共に頭を下げるしかなかった。
「……はい」
青年マルコの呟きに、少女ミラは苦笑する。
「でも……。
あのまま行っていたら、酷い所に嫁に出されていましたので、ほんのちょっとですが、そのう……。
希望が持てると言いますか……。
持ちたいと言いますか……」
少女ミラが続けた言葉は小さくか細くなっていく。
それに対して、娘ザンドラが顔をしかめる。
「わたしが言うのもなんだけど、フリックの所に行くなら、どこへ行くにしてもマシよ。
金にモノを言わせてやりたい放題のクズだから」
「そ、そうですか……」
少女ミラは首を竦めた。
それに、老人ヨナスも続ける。
「まあ、安心せい。
フリックとやらはよく知らんが、わしの予想が正しければ、お前さんらは確実に守って貰えるじゃろう」
老人ヨナスの言に、青年マルコが訊ねる。
「なんだ、じいさん。
何か分かったのか?」
娘ザンドラと少女ミラも視線を老人ヨナスに向けた。
それに対して、老人ヨナスは苦笑する。
自分が護送車に突っ込まれた時は顔を出さなかったご令嬢について、老人ヨナスは様々な噂を耳にしていた。
曰く、効率を重視したエリージェ式の立案。
曰く、働かない父親を働くように仕向けず、あっさり病気療養という名の引退に追い込む。
曰く、謀反の疑いがある騎士を、聴取も無しにボコボコにしたあげく、牢屋に押し込む。
曰く、曰く、曰く……。
それがたった十歳のご令嬢がした事と聞き、老人ヨナスは良い時期に役職を辞し隠居出来たと安堵していた。
老人ヨナスとて効率の重要性は理解していた。
ただ、それに偏りすぎる事への不安も持っていた。
例えば、指示者に課せられた”指示書”についてだ。
確かに、指示者が書けば間違いは少なくなるだろう。
言い間違いなどの問題も、起きないだろう。
だが、双方がそれに頼りきりになった場合、どうだろうか?
指示者は指示書に書いてある通りにすれば問題無いからと、”何故”それが必要なのかの理解を指示する相手にさせなくなるのではないか?
逆に、受け取る側も、”何故”それが必要なのかも理解せず、書いてある通りにするだけで面倒事も責任もないと考えるのを放棄する愚物に成り下がるのではないか?
老人ヨナスは効率をおもんばかる余り、人と人、上役と部下、それらの相互理解が無くなるのではないか?
そう、懸念していた。
だが、恐らく効率という御旗の元、それは理解されず淘汰されるだろう。
もし、もう少し若ければ多少は何かしらを行おうという気も起きたかもしれない。
だが、たかだか平民の爺の話など一笑に付されるだろう。
だから、引退できることを喜んでいたのだが……。
「まあ、なんじゃ……。
わしの予想が正しければ、わしらは公爵家に雇われることになるだろうて」
「はぁ?
何でそうなる?」
青年ヨナスは訝しげに眉をひそめた。
他の二人も困惑した顔で顔を見合わせた。
公爵家ほどの大貴族に仕えるのであれば、それ相応の”格”が必要となる。
大商人の子息子女ならともかく、いかにも平民の自分が――しかも護送車に詰め込まれた自分が、そうなる理由が分からないのだろう。
そんな三人のことなど頓着せず、老人ヨナスは一つ、ため息をついた。
「何にしても、散々こき使われるんじゃろうなぁ」
――
公爵邸に連れてこられた四人は、一室の中央に並べられた椅子に座らされていた。
その中には、鍋などの場違いな物を抱えている者もいたが頓着せず、彼らの前に立つ者がいた。
エリージェ・ソードルである。
色々と予定外のことが起きてしまい、多少、遅くなってしまったが、この女、取りあえず四人揃ったことに満足することとしていた。
「では改めて自己紹介をするわね。
わたくしはエリージェ・ソードル。
現在は公爵代行をしてるわ」
改めても何も、四人に自己紹介などしていないのだが、この女は気づいていない。
だが、顔をひきつらせる四人もそれを指摘できない。
なので、話はそのまま進む。
「現在、公爵家は人手が足りていないの。
なので、あなた達には公爵家に仕えてもらう事になったわ」
この女、”仕えてもらう”と言いながら、四人の意志を一切聞かない。
そんな様子に、四人の顔は不安と諦めがごちゃ混ぜになったものとなる。
だが、これにも異論を挟めない。
当たり前である。
大貴族であるエリージェ・ソードルは四人が断るなど欠片も考えてないし、四人も大貴族の言葉を否定できるとは思えない。
やはり、話だけがさっさと進んでいく。
「賃金について。
後ほど説明をさせるけれど、正直、大した額ではないわ。
ただ、それはあなた達の能力をまだ、十全に見せて貰えてないからだと理解して頂戴。
それさえ見せて貰えれば、それなりのものを用意すると約束するわ。
今から、政務官にその辺りも含めて説明をさせるから、良く聞くように。
また、後ほど個別に面談も行うので、家族との生活環境等の要望があったら、その時にでも聞かせて頂戴」
そこまで言うと、視線を部屋の隅に待機している政務官の男に向ける。
そして、「よろしくね」と場所を譲った。
政務官の男は女に頭を下げると、入れ替わるように四人の前に立ち、話を始めた。
そんな様子を部屋の隅で眺めていると、隣にいた女騎士ジェシー・レーマーが姿勢を低くし、声を落としながら報告する。
「お嬢様、ミーナが何やら用事があるようで、廊下で待ってます」
「そう?
分かったわ」
エリージェ・ソードルが戸まで歩くと、早足で抜かした女騎士ジェシー・レーマーがそれを開ける。
扉のすぐ側に、侍女ミーナ・ウォールが立っていた。
何やら、長細い入れ物を持っているのだが、それには重量があるらしく、少しつらそうな表情をしていて、女の姿を見ると、ほっとしたものに変わった。
「お嬢様、実は例の扇子が届いたのですが……。
何か間違ったものが届いたらしく、送り返そうと思うのですが、念のために確認して頂こうとお持ちしました」
「間違ったもの?」
エリージェ・ソードルが小首をひねると、侍女ミーナ・ウォールは苦笑しながら答える。
「はい、扇子とはおよそ思えない重量の”何か”が届いたようで……」
「ああ、そういうこと。
ジェシー、念のために改めて貰えるかしら?」
「はい」
と女騎士ジェシー・レーマーは侍女ミーナ・ウォールからそれを受け取る。
「確かに重いですね。
北西に住む異民族が使う、重量で殴り倒す短刀ぐらいでしょうか」
などと言いながら、女騎士ジェシー・レーマーは革張りの黒い入れ物の留め具を外し、開ける。
そして、中のものを取り出した。
「扇子ではありますね。
鋼……で出来ているのでしょうか?
美しいですが、ご令嬢が持つには重すぎますね」
女騎士ジェシー・レーマーはそれを開いてみせた。
その扇子は黒地に銀色の縁のみの装飾で、ややもすれば地味な印象を受けがちだが、精巧で上品な一品だった。
エリージェ・ソードルはそれを確認すると、一つ頷く。
そして、手を伸ばした。
女騎士ジェシー・レーマーはそれに焦る。
「あっ! お嬢様!
見た目はともかく、すごく重いので――」
だが、エリージェ・ソードルは気にする風でもなく、扇子を掴むと女騎士ジェシー・レーマーから引き寄せる。
恐る恐る手放す女騎士ジェシー・レーマーなど気にする素振りも見せず、それを片手で持った。
そして、扇子を閉じると、目を見開く二人の前で軽く振って見せた。
空気を裂く音が鈍く響く。
一度、二度、三度……。
そして、エリージェ・ソードルは扇子を眺めながら呟くように言った。
「そうね……。
”まだまだ”、重く感じるわね。
でもまあ、今はこんなものでしょう」
女騎士ジェシー・レーマーは驚愕のまま訊ねる。
「お、お嬢様?
お嬢様のその細腕で――」
だが、そこに割り込むように、騎士が近づいてくるのが見えた。
騎士リョウ・モリタだった。
騎士リョウ・モリタは恭しく頭を下げると、エリージェ・ソードルに言った。
「失礼します、お嬢様。
少し、よろしいでしょうか?」
「何かしら?」
「騎士団も落ち着きを取り戻して来たので、そろそろ、お嬢様の護衛に戻りたいと思うのですがよろしいでしょうか?」
騎士団の現在は、騎士団長フランク・ハマンが責任を取り、一ヶ月の謹慎処分となっていた。
その代わりに、副団長が団長代行となっている。
「……」
エリージェ・ソードルは扇子の先を顎に当て、少し考えた。
そして、答える。
「リョウ、申し訳ないけどもう少し騎士団にいて頂戴」
「お嬢様?」
驚き見返す騎士リョウ・モリタに対して、話を続ける。
「護衛についてはレネがいてくれるし、それよりも、騎士団にあなたがいてくれる方が安心よ」
騎士リョウ・モリタは困惑した。
当たり前だ。
そもそも、騎士団からすでに除隊した身である。
最初の内であれば、エリージェ・ソードルと騎士団の渡し役としては意味があっただろうが、落ち着いた今、すでに余所者になった――しかも若造の自分が団にいたとして、特にすることなど無かったからだ。
ただ、女に「よろしくね」と言われてしまえば否と言うわけにもいかず、了解の意を示すと共に頭を下げるしかなかった。
10
あなたにおすすめの小説
強制力がなくなった世界に残されたものは
りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った
令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達
世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか
その世界を狂わせたものは
だから聖女はいなくなった
澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」
レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。
彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。
だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。
キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。
※7万字程度の中編です。
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
婚約者を奪った妹と縁を切ったので、家から離れ“辺境領”を継ぎました。 すると勇者一行までついてきたので、領地が最強になったようです
藤原遊
ファンタジー
婚約発表の場で、妹に婚約者を奪われた。
家族にも教会にも見放され、聖女である私・エリシアは “不要” と切り捨てられる。
その“褒賞”として押しつけられたのは――
魔物と瘴気に覆われた、滅びかけの辺境領だった。
けれど私は、絶望しなかった。
むしろ、生まれて初めて「自由」になれたのだ。
そして、予想外の出来事が起きる。
――かつて共に魔王を倒した“勇者一行”が、次々と押しかけてきた。
「君をひとりで行かせるわけがない」
そう言って微笑む勇者レオン。
村を守るため剣を抜く騎士。
魔導具を抱えて駆けつける天才魔法使い。
物陰から見守る斥候は、相変わらず不器用で優しい。
彼らと力を合わせ、私は土地を浄化し、村を癒し、辺境の地に息を吹き返す。
気づけば、魔物巣窟は制圧され、泉は澄み渡り、鉱山もダンジョンも豊かに開き――
いつの間にか領地は、“どの国よりも最強の地”になっていた。
もう、誰にも振り回されない。
ここが私の新しい居場所。
そして、隣には――かつての仲間たちがいる。
捨てられた聖女が、仲間と共に辺境を立て直す。
これは、そんな私の第二の人生の物語。
蔑ろにされましたが実は聖女でした ー できない、やめておけ、あなたには無理という言葉は全て覆させていただきます! ー
みーしゃ
ファンタジー
生まれつきMPが1しかないカテリーナは、義母や義妹たちからイジメられ、ないがしろにされた生活を送っていた。しかし、本をきっかけに女神への信仰と勉強を始め、イケメンで優秀な兄の力も借りて、宮廷大学への入学を目指す。
魔法が使えなくても、何かできる事はあるはず。
人生を変え、自分にできることを探すため、カテリーナの挑戦が始まる。
そして、カテリーナの行動により、周囲の認識は彼女を聖女へと変えていくのだった。
物語は、後期ビザンツ帝国時代に似た、魔物や魔法が存在する異世界です。だんだんと逆ハーレムな展開になっていきます。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる