107 / 133
第十九章
愛らしい猫
しおりを挟む
公爵邸迎賓室に隣接された露台、そこで第一王子ルードリッヒ・ハイセルとお茶を楽しむ女がいた。
エリージェ・ソードルである。
この女、公爵領に来てから三日間、幼なじみオーメスト・リーヴスリーに振り回されてヘロヘロになっている第一王子ルードリッヒ・ハイセルを見かねて、お茶会の席を準備させたのだ。
因みに、弟マヌエル・ソードルも誘ったのだが、同じく疲れ果てた顔をしていた彼に『もう少し、頑張ります!』と返されてしまった。
少し心配だったが、ルマ家騎士団長ウルフ・クリンスマンが見ていてくれるのだからと、様子を見ることにした。
晴天の公爵家庭園を眺めながら、この女にしては珍しく、機嫌良さげに話をする。
「殿下、わたくし、寝台が手には入ったことが嬉しいわけではございません。
もちろん、素晴らしい出来なのは間違いありませんが――それよりももっとかけがえのないモノを平民達はわたくしに捧げてくれたのだと思っておりますの」
ここの所、ずっと話している内容を繰り返す女に対して、第一王子ルードリッヒ・ハイセルは「う、うん」などと気もそぞろに頷く。
その視線は、チラリチラリと女の膝の上に向けられていた。
それに気づいたエリージェ・ソードルは、特に気を悪くした風でもなく、訊ねる。
「あら殿下、殿下は猫がお好きですか?」
「猫……そ、そうだね……。
猫”は”結構好きかな」
エリージェ・ソードルはその返事に、頬を緩める。
「まあ、そうだったのですか。
わたくし、初めて猫というものを飼い始めたのですが、ここまで愛らしいのかと驚いておりますの」
エリージェ・ソードルが膝の上にいる”子”を優しく撫でると、気持ちよさそうな「グガォォ!」という鳴き声が聞こえてくる。
第一王子ルードリッヒ・ハイセルは困ったように眉を寄せる。
「う、うん……。
『グガォォ!』って鳴く猫は、初めて見たよ」
――
前日のことだ。
ハマン邸から戻り、あれこれがあった夕頃、従者ザンドラ・フクリュウから、猫が数匹手には入ったとの報告を受けた。
その時のこの女、執務中だった事もあり、「クリスに見せて上げておいて」と伝え、書類に目を戻した。
手早く仕事を終わらせたエリージェ・ソードルが、庭園に向かうと、クリスティーナがルイーサ・ヘルメス伯爵令嬢と共に、猫を嬉しそうに抱き上げているところだった。
クリスティーナの望み通り赤毛の猫ばかりだったが、毛が長かったり、逆に短かったりと様々な種類の猫がいた。
皆、人なつっこいようで、クリスティーナ達に甘えている様子だった。
「あら、思ったより可愛いのね」と女騎士ジェシー・レーマーと話しながら、この女、胸を高鳴らせつつ少し早足で近寄っていった。
ところがである。
この女、衝撃的な場面に遭遇することとなる。
のんびりと、甘い鳴き声を上げていた猫達が、エリージェ・ソードルに気づくと、凄まじい速度で逃げ出したのである。
「え?」
誰もがポカンとした。
クリスティーナなどは撫でていた手を宙に置きながら、先ほどまで猫がいた膝上を何度も見返している。
この時はまだ、誰に怯えたまでは分からなかった。
ひょっとしたら、側にいた女騎士ジェシー・レーマーや従者ザンドラ・フクリュウ、少し離れた所にいた騎士リョウ・モリタや騎士ギド・ザクスにだって可能性はあった。
だが、決定的な瞬間をこの女は迎えることとなる。
まだ、一匹の猫が閉められた籠の中に残っていたのだが、この女が恐る恐る近づくと、バタリと倒れてしまったのである。
口からは白い泡が、こぼれ出ていた。
従者ザンドラ・フクリュウが後に、金貨数百枚を失ったジェシー暴走事件――その時を上回る表情だったと回想することとなるエリージェ・ソードルに対して、誰もが――脳天気なクリスティーナですら――声をかけることが出来ず固まってしまうこととなった。
手を伸ばしたままで硬直していたこの女だったが、しばらくすると、スーッと姿勢を正した。
そして、光を失った瞳のまま言う。
「クリス、あなたは好きな子を選んで飼いなさい。
わたくしの事は気にしなくて良いから」
それに対して、クリスティーナは立ち上がるとエリージェ・ソードルに抱きつき、瞳を潤ませながら女を見上げる。
「いいの、エリーちゃん!
クリス、エリーちゃんが猫ちゃんと一緒にいる姿が見たかっただけなの!
それが出来ないなら、クリス、クリスも猫ちゃんなんていらないの!」
「クリス……。
ごめんなさいね……」
エリージェ・ソードルはこの女らしからぬ事に情けなく顔をゆがめ、クリスティーナをギュッと抱きしめた。
そんな女だったが、運命的な出会いをすることとなる。
それはその翌日――本日の朝の事だ。
それは、とある異国の商人の訪問に起因する。
その褐色の肌をした商人は、自身を南東の奥にある国の出身だと紹介した。
そして、オールマ王国では見ることのない民芸品や豪奢な宝石、奇抜な色をした鳥の羽や魔獣の毛皮を並べて見せた。
少々怪しげなその商人は、売り込みのために熱が入っているのだろう、なにやらペチャクチャと喋っていた。
だが、この女、ろくに聞いていなかった。
その男の前に並べられた一つに、目が釘付けとなっていた。
それは、小さな檻に入れられた”猫”――だった。
赤毛に赤黒い斑の入ったその”猫”は、エリージェ・ソードルの方をじっと――怯えもせず――見つめていた。
女が”猫”を熱心に見ているのに気づいた商人が、何やら自信満々に説明する。
「オオ、コイツガ気ニナリマスカ?
残念、メスデェ~ス。
デモォ~コノ魔獣ハ飼育デキル中、最強!
庭デ護衛良イ!
憎イアイツニ送ル、愉快!」
だが、その商人の訛りの強い言葉が聞き取りにくいのも災いして、エリージェ・ソードルの頭には全く入って来ない。
気にせず、ずんずんとその檻の近くまで歩いていった。
そして、言う。
「この檻を開けなさい」
「エ?
イヤ、子供デモ危ナイ、デス」
と、商人が慌てるも、その態度に苛立ったエリージェ・ソードルに「さっさとしなさい」とギロリと睨まれては従わざるえない。
商人は付き人の一人に指示を出した。
檻から出された猫はつぶらな目でこちらを見上げてくる。
エリージェ・ソードルは恐る恐る手を差し伸べ持ち上げるも、されるままになっている。
どころか、「グガォォ~」と”可愛く”鳴くと、女に身を寄せてきた。
「お、おお……」
この女、感動で身を震わせながら、その猫を優しく抱きしめる。
そして、上気した顔で宣言した。
「この猫を飼うわ!」
「エ?
ネ、猫違ウ!」
「いいえ、飼う、じゃないわ!
この子は、わたくしの娘として、立派に育ててみせるわ!」
「違ウヨ!
マダ小サイケド、ソノ子、魔獣デス!
赤大獅子トイウ、大人ニナルト、村、ドコロカ、小サナ町、一匹デ簡単滅ボス、デス!」
「ちょっと、お嬢様!
いったん、落ち着いてください!
この商人、何やら不穏なことを言ってますから!」
商人や女騎士ジェシー・レーマーが必死で落ち着かせようとするものの、エリージェ・ソードルの耳にはいっさい入らず、「クリスと名前を考えなくてはぁ~」とその場を出て行ってしまった。
――
エリージェ・ソードルはしばらく、愛らしい猫に夢中になっていたのだが、ふと視線を向けると、第一王子ルードリッヒ・ハイセルとその従者が、
「公爵代行の従者殿より、魔獣縛りの首輪がされているので安全だと説明を受けました」
「あ、そうだよね。
そりゃそうだよね」
などと、やり取りをしているのが目に入った。
エリージェ・ソードルは猫のフサフサした背中を撫でながら、少し、目を尖らせる。
「殿下、それよりも少しお伺いしたい件がございます」
「え!?
何かな!?」
第一王子ルードリッヒ・ハイセルは少し、ビクッと体を震わせたが、エリージェ・ソードルは一切気にせず続ける。
「そこにいる従者ですが、どうやら、わたくしの”知らない”殿方のようですが?」
「え!?
あ、ああ!
ご、ごめん、紹介してなかったね。
彼はラーム伯爵家――」
「殿下、違います。
わたくしの”記憶に無い”程度の家格、そう言っているのです」
エリージェ・ソードルである。
この女、公爵領に来てから三日間、幼なじみオーメスト・リーヴスリーに振り回されてヘロヘロになっている第一王子ルードリッヒ・ハイセルを見かねて、お茶会の席を準備させたのだ。
因みに、弟マヌエル・ソードルも誘ったのだが、同じく疲れ果てた顔をしていた彼に『もう少し、頑張ります!』と返されてしまった。
少し心配だったが、ルマ家騎士団長ウルフ・クリンスマンが見ていてくれるのだからと、様子を見ることにした。
晴天の公爵家庭園を眺めながら、この女にしては珍しく、機嫌良さげに話をする。
「殿下、わたくし、寝台が手には入ったことが嬉しいわけではございません。
もちろん、素晴らしい出来なのは間違いありませんが――それよりももっとかけがえのないモノを平民達はわたくしに捧げてくれたのだと思っておりますの」
ここの所、ずっと話している内容を繰り返す女に対して、第一王子ルードリッヒ・ハイセルは「う、うん」などと気もそぞろに頷く。
その視線は、チラリチラリと女の膝の上に向けられていた。
それに気づいたエリージェ・ソードルは、特に気を悪くした風でもなく、訊ねる。
「あら殿下、殿下は猫がお好きですか?」
「猫……そ、そうだね……。
猫”は”結構好きかな」
エリージェ・ソードルはその返事に、頬を緩める。
「まあ、そうだったのですか。
わたくし、初めて猫というものを飼い始めたのですが、ここまで愛らしいのかと驚いておりますの」
エリージェ・ソードルが膝の上にいる”子”を優しく撫でると、気持ちよさそうな「グガォォ!」という鳴き声が聞こえてくる。
第一王子ルードリッヒ・ハイセルは困ったように眉を寄せる。
「う、うん……。
『グガォォ!』って鳴く猫は、初めて見たよ」
――
前日のことだ。
ハマン邸から戻り、あれこれがあった夕頃、従者ザンドラ・フクリュウから、猫が数匹手には入ったとの報告を受けた。
その時のこの女、執務中だった事もあり、「クリスに見せて上げておいて」と伝え、書類に目を戻した。
手早く仕事を終わらせたエリージェ・ソードルが、庭園に向かうと、クリスティーナがルイーサ・ヘルメス伯爵令嬢と共に、猫を嬉しそうに抱き上げているところだった。
クリスティーナの望み通り赤毛の猫ばかりだったが、毛が長かったり、逆に短かったりと様々な種類の猫がいた。
皆、人なつっこいようで、クリスティーナ達に甘えている様子だった。
「あら、思ったより可愛いのね」と女騎士ジェシー・レーマーと話しながら、この女、胸を高鳴らせつつ少し早足で近寄っていった。
ところがである。
この女、衝撃的な場面に遭遇することとなる。
のんびりと、甘い鳴き声を上げていた猫達が、エリージェ・ソードルに気づくと、凄まじい速度で逃げ出したのである。
「え?」
誰もがポカンとした。
クリスティーナなどは撫でていた手を宙に置きながら、先ほどまで猫がいた膝上を何度も見返している。
この時はまだ、誰に怯えたまでは分からなかった。
ひょっとしたら、側にいた女騎士ジェシー・レーマーや従者ザンドラ・フクリュウ、少し離れた所にいた騎士リョウ・モリタや騎士ギド・ザクスにだって可能性はあった。
だが、決定的な瞬間をこの女は迎えることとなる。
まだ、一匹の猫が閉められた籠の中に残っていたのだが、この女が恐る恐る近づくと、バタリと倒れてしまったのである。
口からは白い泡が、こぼれ出ていた。
従者ザンドラ・フクリュウが後に、金貨数百枚を失ったジェシー暴走事件――その時を上回る表情だったと回想することとなるエリージェ・ソードルに対して、誰もが――脳天気なクリスティーナですら――声をかけることが出来ず固まってしまうこととなった。
手を伸ばしたままで硬直していたこの女だったが、しばらくすると、スーッと姿勢を正した。
そして、光を失った瞳のまま言う。
「クリス、あなたは好きな子を選んで飼いなさい。
わたくしの事は気にしなくて良いから」
それに対して、クリスティーナは立ち上がるとエリージェ・ソードルに抱きつき、瞳を潤ませながら女を見上げる。
「いいの、エリーちゃん!
クリス、エリーちゃんが猫ちゃんと一緒にいる姿が見たかっただけなの!
それが出来ないなら、クリス、クリスも猫ちゃんなんていらないの!」
「クリス……。
ごめんなさいね……」
エリージェ・ソードルはこの女らしからぬ事に情けなく顔をゆがめ、クリスティーナをギュッと抱きしめた。
そんな女だったが、運命的な出会いをすることとなる。
それはその翌日――本日の朝の事だ。
それは、とある異国の商人の訪問に起因する。
その褐色の肌をした商人は、自身を南東の奥にある国の出身だと紹介した。
そして、オールマ王国では見ることのない民芸品や豪奢な宝石、奇抜な色をした鳥の羽や魔獣の毛皮を並べて見せた。
少々怪しげなその商人は、売り込みのために熱が入っているのだろう、なにやらペチャクチャと喋っていた。
だが、この女、ろくに聞いていなかった。
その男の前に並べられた一つに、目が釘付けとなっていた。
それは、小さな檻に入れられた”猫”――だった。
赤毛に赤黒い斑の入ったその”猫”は、エリージェ・ソードルの方をじっと――怯えもせず――見つめていた。
女が”猫”を熱心に見ているのに気づいた商人が、何やら自信満々に説明する。
「オオ、コイツガ気ニナリマスカ?
残念、メスデェ~ス。
デモォ~コノ魔獣ハ飼育デキル中、最強!
庭デ護衛良イ!
憎イアイツニ送ル、愉快!」
だが、その商人の訛りの強い言葉が聞き取りにくいのも災いして、エリージェ・ソードルの頭には全く入って来ない。
気にせず、ずんずんとその檻の近くまで歩いていった。
そして、言う。
「この檻を開けなさい」
「エ?
イヤ、子供デモ危ナイ、デス」
と、商人が慌てるも、その態度に苛立ったエリージェ・ソードルに「さっさとしなさい」とギロリと睨まれては従わざるえない。
商人は付き人の一人に指示を出した。
檻から出された猫はつぶらな目でこちらを見上げてくる。
エリージェ・ソードルは恐る恐る手を差し伸べ持ち上げるも、されるままになっている。
どころか、「グガォォ~」と”可愛く”鳴くと、女に身を寄せてきた。
「お、おお……」
この女、感動で身を震わせながら、その猫を優しく抱きしめる。
そして、上気した顔で宣言した。
「この猫を飼うわ!」
「エ?
ネ、猫違ウ!」
「いいえ、飼う、じゃないわ!
この子は、わたくしの娘として、立派に育ててみせるわ!」
「違ウヨ!
マダ小サイケド、ソノ子、魔獣デス!
赤大獅子トイウ、大人ニナルト、村、ドコロカ、小サナ町、一匹デ簡単滅ボス、デス!」
「ちょっと、お嬢様!
いったん、落ち着いてください!
この商人、何やら不穏なことを言ってますから!」
商人や女騎士ジェシー・レーマーが必死で落ち着かせようとするものの、エリージェ・ソードルの耳にはいっさい入らず、「クリスと名前を考えなくてはぁ~」とその場を出て行ってしまった。
――
エリージェ・ソードルはしばらく、愛らしい猫に夢中になっていたのだが、ふと視線を向けると、第一王子ルードリッヒ・ハイセルとその従者が、
「公爵代行の従者殿より、魔獣縛りの首輪がされているので安全だと説明を受けました」
「あ、そうだよね。
そりゃそうだよね」
などと、やり取りをしているのが目に入った。
エリージェ・ソードルは猫のフサフサした背中を撫でながら、少し、目を尖らせる。
「殿下、それよりも少しお伺いしたい件がございます」
「え!?
何かな!?」
第一王子ルードリッヒ・ハイセルは少し、ビクッと体を震わせたが、エリージェ・ソードルは一切気にせず続ける。
「そこにいる従者ですが、どうやら、わたくしの”知らない”殿方のようですが?」
「え!?
あ、ああ!
ご、ごめん、紹介してなかったね。
彼はラーム伯爵家――」
「殿下、違います。
わたくしの”記憶に無い”程度の家格、そう言っているのです」
11
あなたにおすすめの小説
強制力がなくなった世界に残されたものは
りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った
令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達
世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか
その世界を狂わせたものは
だから聖女はいなくなった
澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」
レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。
彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。
だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。
キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。
※7万字程度の中編です。
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
婚約者を奪った妹と縁を切ったので、家から離れ“辺境領”を継ぎました。 すると勇者一行までついてきたので、領地が最強になったようです
藤原遊
ファンタジー
婚約発表の場で、妹に婚約者を奪われた。
家族にも教会にも見放され、聖女である私・エリシアは “不要” と切り捨てられる。
その“褒賞”として押しつけられたのは――
魔物と瘴気に覆われた、滅びかけの辺境領だった。
けれど私は、絶望しなかった。
むしろ、生まれて初めて「自由」になれたのだ。
そして、予想外の出来事が起きる。
――かつて共に魔王を倒した“勇者一行”が、次々と押しかけてきた。
「君をひとりで行かせるわけがない」
そう言って微笑む勇者レオン。
村を守るため剣を抜く騎士。
魔導具を抱えて駆けつける天才魔法使い。
物陰から見守る斥候は、相変わらず不器用で優しい。
彼らと力を合わせ、私は土地を浄化し、村を癒し、辺境の地に息を吹き返す。
気づけば、魔物巣窟は制圧され、泉は澄み渡り、鉱山もダンジョンも豊かに開き――
いつの間にか領地は、“どの国よりも最強の地”になっていた。
もう、誰にも振り回されない。
ここが私の新しい居場所。
そして、隣には――かつての仲間たちがいる。
捨てられた聖女が、仲間と共に辺境を立て直す。
これは、そんな私の第二の人生の物語。
蔑ろにされましたが実は聖女でした ー できない、やめておけ、あなたには無理という言葉は全て覆させていただきます! ー
みーしゃ
ファンタジー
生まれつきMPが1しかないカテリーナは、義母や義妹たちからイジメられ、ないがしろにされた生活を送っていた。しかし、本をきっかけに女神への信仰と勉強を始め、イケメンで優秀な兄の力も借りて、宮廷大学への入学を目指す。
魔法が使えなくても、何かできる事はあるはず。
人生を変え、自分にできることを探すため、カテリーナの挑戦が始まる。
そして、カテリーナの行動により、周囲の認識は彼女を聖女へと変えていくのだった。
物語は、後期ビザンツ帝国時代に似た、魔物や魔法が存在する異世界です。だんだんと逆ハーレムな展開になっていきます。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる