《完結》愛する人と結婚するだけが愛じゃない

ぜらちん黒糖

文字の大きさ
78 / 93
第八章

78.真相解明

しおりを挟む
ハーバルがそこまで話すと部屋の中は静まり返った。

ゆっくりとジュノが立ち上がり、ループがジュノに近づく。

二人は一緒に並ぶとハーバル、アガサ、クロッグにお辞儀をした。

「驚かせてすみませんでした。私は隣にいるジュノと結婚します」

「お父様、お姉様、そしてお義兄様(クロッグ)、ジュノです。よろしくお願いします」

呆然としていたアガサが正気を取り戻し口を開く。

「あの、それはいいとして」

その言葉にびっくりするクロッグがアガサに声をかける。

「え?いいの?」

アガサは今一番気になっていたことを尋ねる。

「どうしてお父様とジュノが深夜、連れ込み宿で一緒にいるのか、それを聞かせてちょうだい!」

クロッグが呆れて呟く。

「関心事は……そっち?」

ジュノが答える。

「今日は連れ込み宿の取材に来たんです。でも一人だと心配だったのでお父様にお願いしたんです」

そこでクロッグがループを問い詰める。

「おい、ループ、使用人のメイサから入った報告は嘘だったのか?お父上は夜な夜な朝帰りをして香水をつけて帰ると言ってなかったか?」

アガサが急に立ち上がりジュノのそばに立ちクンクンと匂いを嗅ぎ始める。

「な、なんですか?お姉様」

アガサがクロッグに報告する。

「クロッグ、ジュノからは香水の匂いはしないわ。かすかに匂うのは爽やかな石鹸の香りよ?」

そのやり取りを聞いていたハーバルが狼狽え始める。

そしてジュノが決定的な一言を言う。

「あのう、私、お父様と深夜に会ったのは今回が初めてなんですけど……」

全員がハーバルに注目する。

ハーバルはできるだけ父親としての威厳を保ちながらごまかして話すことにした。

「実はノーマンに誘われてな……仕方なく付き合っていたのだが……もう断ろうと思っていたところだ」

これで十分だろうと話を切り上げてみんなに声をかけた。

「さ、もう遅い。帰ろうじゃないか」

腰かけていたベッドから立ち上がった瞬間にアガサが声をかける。

「お父様、お座りください」

「あ、はい」素直に座るハーバル。

アガサは追求の手を緩めない。

「それで?お父様はノーマンとどこへ行ってらしたのですか?」

「アガサ、仮にも私の友人であり、お前よりも年上なんだぞ?ノーマン様と言わんか、ノーマン様と」

「お父様、ノーマンとどこへ行ってらしたんですか?」

「あ、はい。えー、この近くに年老いた女性がお酌をしてくれる飲み屋があってそこに通っていたんだ」

クロッグが興味を抱いて質問する。

「父上、年老いた女性とはおいくつぐらいなのですか?」

ふいの質問に油断したハーバルが正直に答えてしまう。

「20歳前後かな……あ、じゃない、私よりも20歳くらい年上かな?」

慌てて訂正したが遅かった。

「お父様、夜遊びはもうおやめください。ノーマンの誘いに乗りませんようにお願いします」

「あ……はい」

ジュノがクスクスと笑っていた。





その後、ループとジュノは結婚した。ループは平民だったので、一度ギャラン伯爵家の養子として迎え入れ、ハーバル・ギャランの息子としてクルーズ伯爵家に婿養子として入ることになった。

ハーバルは夜遊びを止めて今では真面目に屋敷にこもっている。

ループがいなくなって一番困ってるのがクロッグだった。

「アガサ、新しい執事、雇わない?」

「執事はね……そんな簡単には見つからないのよ、特にループのように優秀で信用のおける人物はね」

クロッグがボヤく。

「私たちはループの手の平の上で泳がされていたんじゃないの?」

その言葉にアガサも同意する。

「多分ね……。でも久しぶりに楽しかったわねクロッグ」

「そうだな、楽しかった。だけど……一番得をしたのはクルーズ家だよな?」

アガサが微笑みながら返事をする。

「そうね、一度に優秀な婿殿と執事を手に入れたんだから」

執務室の開いた窓から爽やかなそよ風が吹き込んできた。

アガサはそよ風に包まれながらクロッグに言葉をかける。

「ループ、幸せになるといいわね」

その言葉にクロッグが返事をする。

「大丈夫、ループならもうとっくに未来の設計図を描いているさ」

   
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私のことはお気になさらず

みおな
恋愛
 侯爵令嬢のティアは、婚約者である公爵家の嫡男ケレスが幼馴染である伯爵令嬢と今日も仲睦まじくしているのを見て決意した。  そんなに彼女が好きなのなら、お二人が婚約すればよろしいのよ。  私のことはお気になさらず。

嘘つきな唇〜もう貴方のことは必要ありません〜

みおな
恋愛
 伯爵令嬢のジュエルは、王太子であるシリウスから求婚され、王太子妃になるべく日々努力していた。  そんなある日、ジュエルはシリウスが一人の女性と抱き合っているのを見てしまう。  その日以来、何度も何度も彼女との逢瀬を重ねるシリウス。  そんなに彼女が好きなのなら、彼女を王太子妃にすれば良い。  ジュエルが何度そう言っても、シリウスは「彼女は友人だよ」と繰り返すばかり。  堂々と嘘をつくシリウスにジュエルは・・・

はっきり言ってカケラも興味はございません

みおな
恋愛
 私の婚約者様は、王女殿下の騎士をしている。  病弱でお美しい王女殿下に常に付き従い、婚約者としての交流も、マトモにしたことがない。  まぁ、好きになさればよろしいわ。 私には関係ないことですから。

婚約者から婚約破棄されたら、王弟殿下に捕まった件

みおな
恋愛
「ルチル、君との婚約を破棄させてもらう」  五年間、婚約者として交流して来た王太子であるランスロットから婚約破棄を告げられたクォーツ公爵家の令嬢であるルチル。 「ランスロットと婚約破棄したって?なら、俺と婚約しよう」  婚約破棄をきっかけに、領地に引きこもる予定だったルチルに、思いがけない婚約の打診が。  のんびり田舎生活をしたいルチルだが・・・

私の愛した婚約者は死にました〜過去は捨てましたので自由に生きます〜

みおな
恋愛
 大好きだった人。 一目惚れだった。だから、あの人が婚約者になって、本当に嬉しかった。  なのに、私の友人と愛を交わしていたなんて。  もう誰も信じられない。

忙しい男

菅井群青
恋愛
付き合っていた彼氏に別れを告げた。忙しいという彼を信じていたけれど、私から別れを告げる前に……きっと私は半分捨てられていたんだ。 「私のことなんてもうなんとも思ってないくせに」 「お前は一体俺の何を見て言ってる──お前は、俺を知らな過ぎる」 すれ違う想いはどうしてこうも上手くいかないのか。いつだって思うことはただ一つ、愛おしいという気持ちだ。 ※ハッピーエンドです かなりやきもきさせてしまうと思います。 どうか温かい目でみてやってくださいね。 ※本編完結しました(2019/07/15) スピンオフ &番外編 【泣く背中】 菊田夫妻のストーリーを追加しました(2019/08/19) 改稿 (2020/01/01) 本編のみカクヨムさんでも公開しました。

【完結】婚約者は私を大切にしてくれるけれど、好きでは無かったみたい。

まりぃべる
恋愛
伯爵家の娘、クラーラ。彼女の婚約者は、いつも優しくエスコートしてくれる。そして蕩けるような甘い言葉をくれる。 少しだけ疑問に思う部分もあるけれど、彼が不器用なだけなのだと思っていた。 そんな甘い言葉に騙されて、きっと幸せな結婚生活が送れると思ったのに、それは偽りだった……。 そんな人と結婚生活を送りたくないと両親に相談すると、それに向けて動いてくれる。 人生を変える人にも出会い、学院生活を送りながら新しい一歩を踏み出していくお話。 ☆※感想頂いたからからのご指摘により、この一文を追加します。 王道(?)の、世間にありふれたお話とは多分一味違います。 王道のお話がいい方は、引っ掛かるご様子ですので、申し訳ありませんが引き返して下さいませ。 ☆現実にも似たような名前、言い回し、言葉、表現などがあると思いますが、作者の世界観の為、現実世界とは少し異なります。 作者の、緩い世界観だと思って頂けると幸いです。 ☆以前投稿した作品の中に出てくる子がチラッと出てきます。分かる人は少ないと思いますが、万が一分かって下さった方がいましたら嬉しいです。(全く物語には響きませんので、読んでいなくても全く問題ありません。) ☆完結してますので、随時更新していきます。番外編も含めて全35話です。 ★感想いただきまして、さすがにちょっと可哀想かなと最後の35話、文を少し付けたしました。私めの表現の力不足でした…それでも読んで下さいまして嬉しいです。

思い出さなければ良かったのに

田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。 大事なことを忘れたまま。 *本編完結済。不定期で番外編を更新中です。

処理中です...