【完結】奇跡の魔女

1章 醜い嫉妬の炎を消す方法

10（奇跡の魔女視点）

「ねぇ、ノエル」

僕はノエルに声をかけた

「どうなさいました？アステル様」

あぁ、彼女は婚約者だった男に対する恋心を失った
けれど、浮気する男に彼女は勿体無いからね
【奇跡の魔女】の本当の姿を知って、あんな反応をするのは彼女を含めてもとても少ない
と云っても…彼女の両親も同じ反応をしたけれど

「彼女に嫉妬していただろう？とても嬉しいよ」

僕は愛するノエルにそう云った、するとノエルは…

「……！気が付いておられたのですか！？」

…と思いの外ノエルが驚いたことに僕は驚いた。当然だろう。僕が心の声が聞こえるせいで、この森に閉じ籠もったことを知っている唯一の存在なのだから。

「…心の声が聞こえるからね、僕は真面目な顔を保つのに必死だったのに…ノエルは…気が付いていなかった」

と、僕が落ち込んだ風を装うと……

「も…申し訳ありません！本日はアステル様のお好きな朝食をご用意いたしますので、お許しください！」

あぁ…思った通りの反応だ…フフッ、僕の大好きな朝食で手を打つとしよう。
さて…問題は彼女の【願いの結果】だが…思った通りだ。彼女は最後まで気が付かなかったね。浮気男が実は自分を好ましく思っていたなんて………知る必要も無いけれど。あの男も愚かなことだ…浮気などしなければ良かったものを。
今更になって足掻いたところで、彼女は二度とお前を愛することなどない。云っただろう？彼女にとっては大したことにはならないと。

どんな気分かな？自分が粗末に扱った婚約者に見捨てられるというのは…。そもそも彼、子爵令息ではなかったかな？大出世が見込めたのにね。
僕には欠片ほどの関係も無いけれど。

愉しませてくれた彼女が幸せなら何でもいいよ。
僕達の関係を見抜いた上で…受け入れた。
嬉しかったから…君の幸せの邪魔はしないよ。

「次のお客様はどんな願いを持っているのかな？」

彼女の両親も……彼女自身も……面白い人たちだったけれど、願い事は大した願いではなかったね
3人とも【相手に対する恋心】を消すだけの願い
恋心は無くならない。素敵な恋が出来たんだね。
結婚おめでとう、僕を愉しませてくれた人