【完結】奇跡の魔女

2章 命の重さは平等であり、不平等でもある

6

「アステル様、最後の子供が目覚めるようです」

ノエルは最愛の主に進言し、子供たちが歩けることを確認した上で、四人で徐ろに少女の傍らに近付き、目覚めの時を待った。

「いやぁぁぁぁ！……………あれ？ここ、どこ？」

二人の兄よりも状況把握が迅速なのは御愛嬌。周囲を見渡し、母が眠っているのを確認すると、今度は兄たちを探そうと向いた先に、二人の兄はいた。
しかし、そんなことよりも美しすぎる青年が自分を見ていることに気が付き、乙女モードに入りかけたが…幼くとも女の勘は鋭かった。
アステルを見て、ノエルを見た瞬間に理解した。

「助けてくださって有難うございます！女神様！」

５歳の女の子とは思えないほどの処世術である。
瞬時にノエルはアステル至上主義の男だと理解した上で、アステルが女扱いされても怒らない人柄であると見抜いたのだから末恐ろしいものである。

「フフッ、三人の子供たちの中で一番聡い子だ」

アステルが嬉しそうに云うものだから、ノエルの頬が緩み…結果的に二人の兄を驚愕させた。

「私達を助けてくださって本当に有難うございます！ですが、母はまだ目覚めないのでしょうか？」

目覚めない母を案じる優しさを併せ持つ子供を、アステルが好ましく思わないわけもなく……

「ノエル、母親の方は目覚める兆しが無いのかな？」

珍しく子供の疑問に答える素振りを見せる

「いえ、直に目覚めるかと」

ノエルは珍しくも客人の疑問を解消しようとする主に驚きながらも、主の問いかけに対して返答する。

「よかった……お母さん、酷い怪我してたから」

安堵の表情を浮かべる妹に二人の兄はやっと実感が湧いてきた様で、同じく母親の無事に安堵する。
自分たちを必死で庇ってくれた母の命が助かったのも【奇跡の魔女】のお陰なのだと理解しているからこそ、三人の子供たちはアステルに深く感謝した。