【完結】奇跡の魔女

2章 命の重さは平等であり、不平等でもある

11（奇跡の魔女視点）

「ノエル、ご苦労さま」

僕はノエルに声をかけた

「いえ、アステル様のご命令ですから」

そう答えたノエルの瞳は僕に対する信頼を隠しもしない……隠していても無駄なのだけれど。
信頼……といえば、子供たちには隠しているようだったから黙っていたけれど、母親が元貴族令嬢だと知ったなら、面白いことになりそうな気がする……。
子供のことだけを考える母親に免じて僕は黙っておくけれど、いつまでも隠してはおけないよ？

「ノエル、今日の夕飯は何かな？」

僕は愛するノエルに問いかけた

「本日はシチューをご用意いたしました」

シチュー？……そんな食べ物があるのか……

「楽しみにしているよ、ノエル」

僕はノエルに全幅の信頼を置いているから、よく分からない食べ物でも食べるけれど……美味しいのかな？

「アステル様の好みは総て把握しておりますから」　

恍惚とした表情でノエルが云った……僕以外なら逃げるところだろうか？よく分からないが、取り敢えずノエルが僕の好みを把握しているのは事実なのだから、僕好みの食べ物なのだろうとは思う

「ノエル、ありがとう」

僕は気持ちを素直に伝え、彼女の事を思い浮かべた。

さて……問題は彼女の【願いの結果】だが……思った通りの展開になっているようだね。
三人とも愛人に唆されて妻の不貞を疑った結果、妻有責で離縁したはいいものの…一人残らず、自分の子ではない子を愛人が産んだようだね。
今更になって自分がしようとしたことを理解したのかな？顔が真っ青を通り越して真っ白になっている。

もう遅いけれど……あの子達は君たちの子に相違なかったよ。後継を孕んだ妻を追い出したのだから自業自得だと思うよ、僕は。
……ああ、元妻の実家に三人揃って行ってみたようだけれど、無駄だよ…だって君たちが云ったんだよね？
阿婆擦れだの何だのと…そんな娘を……妹を……貴族が家に置いておけると思う方がどうかしているよ。

居場所は当然ながら把握しているようだけれど、教えるわけがないよね？結婚した経験すらも忘れた彼女を君たちに渡すわけがない。ましてや可愛い盛りの子供たちは、癒しになっているのだからね。

面白い子供たちだった……母親に似たのだろうね。
安心して老衰するまで長生きするんだよ
僕を愉しませてくれた君たちに、奇跡の魔女の祝福を