【完結】奇跡の魔女

蛇姫

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3章 地獄に堕ちても構わない

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俺が色褪せた世界で孤独に耐えることが出来ないと嘆いていたときだった。
家中が突然光に包まれて、気が付けば森の中にいた。
俺は何が起こったのか分からず、声を発することも出来ずに周囲をキョロキョロ見回した。
ここは森か?何で森にいる?家にいたはずなのに。
どういうことだ?寝落ちしたのか?

そんな風なことを色々と考えていた訳だが、傍らに誰かいることに気が付いた俺は、徐ろに人の気配がする方を見た。
………すっごい美人が微笑みを浮かべながら立っているのは反則だと思う。

「ごきげんよう」

美しい人からは美しい声が発せられたのだが、俺にそれを気にする余裕は欠片もなかった。
何故なら、美しい人の後ろで殺気を放つ黒髪の青年が、明らかに俺を睨みつけていたからだ。

「ノエル、嬉しいけれど今は控えて」

美しい人が黒髪の悪魔をノエルと呼んだ。
名前だけなら天使かと思うだろ?
違う……あれは悪魔の目だ。
俺がリズを見る野郎どもにしていたのと同じ威嚇か?俺に?

「おい!そんな目で見るなよ!黒髪の方!俺にはリズって名前の女神がいるんだ!」

俺は黒髪の青年に、俺も一途な男なんだと訴えかけたが、まあ俺と似た感覚をしてるなら、信じねぇよなぁと思い直し苦笑する。

「ここが何処だか分かる?」

痺れを切らした美しい人が俺に問いかけた

「いや、分からねぇ。夢じゃねぇってのは、黒髪の野郎の殺気で分かったけどよ……」

俺は美しい人に自棄糞になって返答した

「ここは【奇跡の魔女の森】だよ」

「奇跡の魔女?」

「ああ、聞いたことは無いかな?」

「……妻が……リズが……そんな噂を聞いたことがあるって云ってた気がする」

「フフッ、その噂の正体が僕なんだ」

「………は?」

いや……どう見ても男だろう?
何で魔女なんだ?心が女なのか?
だとしたら失礼になるから…これ以上は云わねぇけどよ………まあ、美人だし?女装とか絶対に似合うし?
いいんだけどよ……噂だろ?

「自分で流したのか?」

「いや、流したのは神殿の人間だった人だろうね」

「………何で神殿?」

「ああ、昔お世話になっていたんだ……今も本当の意味でお世話になっているけれど」

………黒髪の野郎の殺気が【神殿の人間だった人】に向けられてる気がするのは何でだ?まあ、俺も神殿の人間は好きじゃねぇんだけど。
リズを聖女として連れて行こうとしてたからな。
……まだリズも俺も子供だった頃だけど。

「リズさん、聖女にされるところだったの?」

「何で知ってんだ」

「心で考え事をしていただろう?」

「してたけどよ……心でも読めんのか?」

「そんなところだね」

読まれて困るほどのことは考えてねぇけど、何かムカつく!俺の心だけ読まれてんのは!

「ごめんね、君だけではないから許してね」

「そういうんなら別にいい」

「……………そう、君も面白い人なんだね」

そう云うと、【奇跡の魔女】が微笑んだ

「僕達の家に案内するよ」

拒否権はなさそうだから、取り敢えず俺は【奇跡の魔女】について行った。
黒髪の男に睨まれながら………
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