30 / 48
3章 地獄に堕ちても構わない
8
しおりを挟む
「確かに願いは叶えたよ、君からは既に代償をもらっているからね。安心して帰るといい」
俺は【奇跡の魔女】に願いを叶えてもらった。
支払った代償は【リズと子供を殺した犯人に対する殺意】のみ。
お陰で穏やかな気持ちでリズと子供を弔える。
怒りはある。恨みもある。だけど、殺意だけがないってのは不思議な感覚だ。
俺の全身を光が包み込み、誰もいない家に帰ってきたようだが、俺の心の内側で燃えていた殺意が完全に無くなっているためか、色褪せた景色は変わらないのに心だけが少しだけ軽くなった気がする。
ドンドンドン!
家の扉が壊れるんじゃねぇかってくらいの音量で、家の扉が叩かれている。
「カイトちゃん!」
扉の向こう側から、リズを最初に発見してくれたパン屋のおばちゃんの声がした。
おばちゃんは礼儀を知っている人だから、余程のことが無い限り、早朝にデカい音を立てて扉を叩くような人じゃねぇ。
そう思った俺は、急いで家の扉を開けた。
「おばちゃん、どうしたんだよ?」
「これを見な!」
おばちゃんが勢いよく俺の胸に叩きつけたのは、今朝の新聞だった。
そこには大きな見出しで、昨夜の事件を含む通り魔事件が収束したと書き記してあった。
俺は念入りに新聞を読み込み、内容に愕然としたが、魔女様の云っていた【面白い結果】とやらに繋がっているのだろうと思い、考えるのを放棄した。
昨夜とは打って変わっての大逆転劇が事細かに書き記してある朝刊には、犯人が貴族であったことなど一切掲載されていないが、神は総てをご覧になっていると明記してあった。
通り魔事件の犯人は精神病棟に隔離されたようだ。
詳しくは記されてはいないが、余程のことがあったことは内容から察することが出来る。
殺意が消えてしまったとはいえ、恨みや憎しみまでは消えていない。
二度と出てくるなと思うのは被害者遺族として、当然の権利だと思っている。
願いが叶った事実を確認できて良かった。
これでリズと子供に報告できる。
二度と被害者は出ねぇってな。
後、俺もそっち行くから待っててくれって。
ヨボヨボの爺になっても気付いてくれるかなぁ?
土産は持っていけねぇから、土産話を持って行く!
たくさん用意するから待っててくれよな!
俺は【奇跡の魔女】に願いを叶えてもらった。
支払った代償は【リズと子供を殺した犯人に対する殺意】のみ。
お陰で穏やかな気持ちでリズと子供を弔える。
怒りはある。恨みもある。だけど、殺意だけがないってのは不思議な感覚だ。
俺の全身を光が包み込み、誰もいない家に帰ってきたようだが、俺の心の内側で燃えていた殺意が完全に無くなっているためか、色褪せた景色は変わらないのに心だけが少しだけ軽くなった気がする。
ドンドンドン!
家の扉が壊れるんじゃねぇかってくらいの音量で、家の扉が叩かれている。
「カイトちゃん!」
扉の向こう側から、リズを最初に発見してくれたパン屋のおばちゃんの声がした。
おばちゃんは礼儀を知っている人だから、余程のことが無い限り、早朝にデカい音を立てて扉を叩くような人じゃねぇ。
そう思った俺は、急いで家の扉を開けた。
「おばちゃん、どうしたんだよ?」
「これを見な!」
おばちゃんが勢いよく俺の胸に叩きつけたのは、今朝の新聞だった。
そこには大きな見出しで、昨夜の事件を含む通り魔事件が収束したと書き記してあった。
俺は念入りに新聞を読み込み、内容に愕然としたが、魔女様の云っていた【面白い結果】とやらに繋がっているのだろうと思い、考えるのを放棄した。
昨夜とは打って変わっての大逆転劇が事細かに書き記してある朝刊には、犯人が貴族であったことなど一切掲載されていないが、神は総てをご覧になっていると明記してあった。
通り魔事件の犯人は精神病棟に隔離されたようだ。
詳しくは記されてはいないが、余程のことがあったことは内容から察することが出来る。
殺意が消えてしまったとはいえ、恨みや憎しみまでは消えていない。
二度と出てくるなと思うのは被害者遺族として、当然の権利だと思っている。
願いが叶った事実を確認できて良かった。
これでリズと子供に報告できる。
二度と被害者は出ねぇってな。
後、俺もそっち行くから待っててくれって。
ヨボヨボの爺になっても気付いてくれるかなぁ?
土産は持っていけねぇから、土産話を持って行く!
たくさん用意するから待っててくれよな!
2
あなたにおすすめの小説
ナイスミドルな国王に生まれ変わったことを利用してヒロインを成敗する
ぴぴみ
恋愛
少し前まで普通のアラサーOLだった莉乃。ある時目を覚ますとなんだか身体が重いことに気がついて…。声は低いバリトン。鏡に写るはナイスミドルなおじ様。
皆畏れるような眼差しで私を陛下と呼ぶ。
ヒロインが悪役令嬢からの被害を訴える。元女として前世の記憶持ちとしてこの状況違和感しかないのですが…。
なんとか成敗してみたい。
いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持
空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。
その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。
※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。
※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。
悪役令嬢、休職致します
碧井 汐桜香
ファンタジー
そのキツい目つきと高飛車な言動から悪役令嬢として中傷されるサーシャ・ツンドール公爵令嬢。王太子殿下の婚約者候補として、他の婚約者候補の妨害をするように父に言われて、実行しているのも一因だろう。
しかし、ある日突然身体が動かなくなり、母のいる領地で療養することに。
作中、主人公が精神を病む描写があります。ご注意ください。
作品内に登場する医療行為や病気、治療などは創作です。作者は医療従事者ではありません。実際の症状や治療に関する判断は、必ず医師など専門家にご相談ください。
9時から5時まで悪役令嬢
西野和歌
恋愛
「お前は動くとロクな事をしない、だからお前は悪役令嬢なのだ」
婚約者である第二王子リカルド殿下にそう言われた私は決意した。
ならば私は願い通りに動くのをやめよう。
学園に登校した朝九時から下校の夕方五時まで
昼休憩の一時間を除いて私は椅子から動く事を一切禁止した。
さあ望むとおりにして差し上げました。あとは王子の自由です。
どうぞ自らがヒロインだと名乗る彼女たちと仲良くして下さい。
卒業パーティーもご自身でおっしゃった通りに、彼女たちから選ぶといいですよ?
なのにどうして私を部屋から出そうとするんですか?
嫌です、私は初めて自分のためだけの自由の時間を手に入れたんです。
今まで通り、全てあなたの願い通りなのに何が不満なのか私は知りません。
冷めた伯爵令嬢と逆襲された王子の話。
☆別サイトにも掲載しています。
※感想より続編リクエストがありましたので、突貫工事並みですが、留学編を追加しました。
これにて完結です。沢山の皆さまに感謝致します。
悪役令嬢カタリナ・クレールの断罪はお断り(断罪編)
三色団子
恋愛
カタリナ・クレールは、悪役令嬢としての断罪の日を冷静に迎えた。王太子アッシュから投げつけられる「恥知らずめ!」という罵声も、学園生徒たちの冷たい視線も、彼女の心には届かない。すべてはゲームの筋書き通り。彼女の「悪事」は些細な注意の言葉が曲解されたものだったが、弁明は許されなかった。
転生『悪役』公爵令嬢はやり直し人生で楽隠居を目指す
RINFAM
ファンタジー
なんの罰ゲームだ、これ!!!!
あああああ!!!
本当ならあと数年で年金ライフが送れたはずなのに!!
そのために国民年金の他に利率のいい個人年金も掛け、さらに少ない給料の中からちまちまと老後の生活費を貯めてきたと言うのに!!!!
一銭も貰えないまま人生終わるだなんて、あんまりです神様仏様あああ!!
かくなる上はこのやり直し転生人生で、前世以上に楽して暮らせる隠居生活を手に入れなければ。
年金受給前に死んでしまった『心は常に18歳』な享年62歳の初老女『成瀬裕子』はある日突然死しファンタジー世界で公爵令嬢に転生!!しかし、数年後に待っていた年金生活を夢見ていた彼女は、やり直し人生で再び若いままでの楽隠居生活を目指すことに。
4コマ漫画版もあります。
【短編】男爵令嬢のマネをして「で〜んかっ♡」と侯爵令嬢が婚約者の王子に呼びかけた結果
あまぞらりゅう
恋愛
「で〜んかっ♡」
シャルロッテ侯爵令嬢は婚約者であるエドゥアルト王子をローゼ男爵令嬢に奪われてしまった。
下位貴族に無様に敗北した惨めな彼女が起死回生を賭けて起こした行動は……?
★他サイト様にも投稿しています!
★2022.8.9小説家になろう様にて日間総合1位を頂きました! ありがとうございます!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる