【完結】奇跡の魔女

蛇姫

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4章 ※アナタのために

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も……戻ってきちゃったんだ。
どうしよう!
私………取られたもの取り返してないのに!
そもそも願いの代償が【穏やかな生活】って……何で私から穏やかな生活を奪うの?
そんな権利ないでしょ!
神殿なら何とかしてくれるかな?
だって相手は【魔女】なんだから神殿の敵だよね?
そうと決まれば神殿に行かなくちゃ!
私は今どんな状況なのかを忘れて勢いよく走った。

「おい!どこ行く気だ!」

後ろからあの男の人が声を掛けてきたみたいだけど、私は今【魔女】に奪われたものを取り返すために神殿に行く必要があるの!
だから、ごめんね?戻ってきたら助けてあげるから!

「帰ってきたら助けてあげるから!待ってて!」

私は後ろを振り返らずに叫んだ。
だから知ることはなかった。
街の人達が私がいなくなった後、私を街から追い出す算段を付けてたことを……。

やっと神殿に辿り着いた私は、神殿の前で叫んだ。

「あ……あの!誰かいませんか!?」

「こんにちは、どのようなご要件でしょう?」

「あ……あの!ここの人ですか?」

「ここ……というと神殿ですか?」

「そうです!」

「………私のことをご存じないのですね?」

「知りません!」

そんな会話をしていると、神殿の奥から失礼な男の人が出てきた。

「お前………神殿に来たの初めてだろ?」

「口が悪いよ、リオ」

「けどコイツ!」

「街の人間で神殿に来たことがない人を見るのは初めてだけれど、不信心を咎めるのは神の意に背く行為だからね。神は総ての存在を等しく愛しておられる」

「自由をお許しになる………と?」

「裁かれなかった罪人は、残念だけれど死後に裁かれることになるだろうね」

「それって……別にいいのでは?」

「リオは永遠の苦しみに呑まれたいのかな?」

「………それは嫌です」

「そうだろう?」

私がいるのに理由の分からないことを話しはじめた。
神殿に来たのが初めてだと何か問題でもあるの?
そんなことより私から大切なものを奪った【魔女】をどうにかするべきでしょう?

……最初に出てきた男の人が私のことをジッと見てた。
何だか分からないけど、神殿の人なんだから【魔女】を裁いてくれるはず!

「あ……あの!私、魔女に大切なものを奪われて!」

そう云った瞬間、最初に出てきた方の男の人が優しく穏やかな口調で私に問いかけた。

「その【魔女】というのは【奇跡の魔女】のことだろうか?」

「そうです!」

「【願いの代償】に【大切な何か】を奪うけれど、願いは叶えてもらわなかったんだね?」

「……え?叶えさせてあげましたよ?」

「だとするなら、ただの対価だ。裁けないよ」

「何でですか!?」

「君は金銭を払わずに品物を持って行くのかな?」

「そんなことしません!」

私は酷いことを云われて涙が溢れ出た。
それでも必死に訴えた。
【魔女】がどんなに冷酷な人だったのかを。

このとき、彼女は男の顔を見るべきだった。
その男の顔には美しい微笑みが浮かんでいたが、目が全く笑っていなかったのだから。


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