どうか『ありがとう』と言わないで

黄金 

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21 お買い物

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 野波のなみ郁磨いくとと修学旅行の準備で買い物をしようという話になった。
 最近一緒にいることが多くなった紫垣しがき和壱かいちと野波郁磨の組み合わせに、最初こそ周りは興味深々に見ていたが、そんな状況も一月ひとつきも経てば当たり前の風景となった。
 和壱が修学旅行でパソコン部と同じ班になったと教えると、野波は羨ましがっていた。野波がいる一組では、仲が良いのは家庭科部部長以下女子数名らしく、男子だけの班となると毎回どこかに混ぜてもらうらしい。授業の班くらいなら気にしないが、修学旅行の班となるとまた話が違ってくる。
 一組ならバスケ部がいるからそこに入っとけばいいと和壱が部活の友人を紹介した。
 その流れから修学旅行の荷物に何を持って行けば良いかという話になり、基本は制服だろうから、あとは下着や上着なんかを買おうという話になった。
 
 休日に電車で移動しないと求める物が手に入らないくらい田舎にすむ和壱だが、和壱は都会より田舎の方が好きだった。
 元々そう便利な場所に住んでいるわけではない。地元には地域のスーパーや小店が多く、全国展開するような商業施設は隣の市に行かなければならない。
 大型の商業施設に行きたいなら電車で数十分はかかるが、別にそれでいいと思う方だったし、それはそれで楽しいと思える方だった。
 
 待ち合わせの駅で野波と合流し、野波の出身地を聞くと、和壱とは合流した駅から逆方向だった。
 結構遠くから通学していたのだと初めて知った。
 開店に合わせて待ち合わせたので、買い物はサクサクと進み、先に昼ご飯を済ませようということになった。混み出すと席が取れなくなるし、親子連れが増えるのでなんとなく食べにくくなるという意見の一致だった。
 野波がバーガーが食べたいと言うので、近くの店に入る。

「席取ってて。適当に買ってくる。なんかコレってのある?」
 
「何でもいいぞ~。あ、ジュースは炭酸系!」

 ヒラヒラと手を振って了解と言い和壱はカウンターに向かった。既に前に二組注文者が並んでいたのでその後ろに並ぶ。レジは二つあり、隣の列も同じだった。
 何気なく隣のグループを見た。同じ歳くらいの男子四人組は、全員でスマホ片手に何か喋っていた。
 そのスマホの画面に和壱は目を見開く。
 よく知る顔がそこにはいた。

 野波……?の、女装?この前の文化祭の時のやつか。

 そこに写る野波は、文化祭の時に着ていたセーラー服姿で笑っていた。なかなか可愛らしい写真だ。上半身が写っていて、態とらしいポーズ写真ではなく、普通に笑っている顔だった。誰かと喋っている時の写真なのだろうと思う。
 何でコイツらが?
 四人組の顔を確認したが、花籠井かごい高校ではなさそうだった。和壱は顔をよく覚えている方なのだが、四人とも知らない顔だ。
 先に隣のレジが進み、四人組は和壱よりも早く注文が終わってしまった。
 少し気になりつつも、レジ上のメニュー表を確認することにした。
 野波はよく食べる。バーガーは大きいのが良さそうだし、一個では足らないだろう。
 悩んでいると和壱の番になったので、野波が食べそうな物をいくつか注文した。




 こんな普通の買い物を友達としたのは久しぶりだ。こんな田舎じゃ推し活とか言って出歩けるところもないし、精々がネットで買うか手作りするか。仲間と連れ立ってどこか行くと言う程のこともなく、割と一人で楽しんでいる感はある。
 そうなると普通に友達と遊びに行くということもなく、オタクっぽい何かをすることもない。
 よく紫垣は自分を買い物に誘ったなと思った。でもなんとなくその理由もわかる気がする。
 紫垣は雑誌から飛び出てきたモデルかというくらいカッコいい。学校でも一際浮いた存在だが、人が良いし社交的なので周りに友達が多い。
 そんな紫垣と友人だと周知されたり、ましてやお出掛けしたり、女子なら付き合ったりなんかすると、それだけで特別になる。
 紫垣もそれは分かっているのか、付き合い方にも気をつけているフシがある。
 誰も特別にならないように平等に上手くやる紫垣には感心する。
 本当は幼馴染の槻木つきのき聡生そうだけが特別だったのだろうが、今はその存在もいない。
 紫垣の特別になる為に、静かな争奪戦が繰り広げられているのだが、それが鬱陶しくなったのか、最近はパソコン部員たちと一緒にいるようになった。
 そして郁磨ともよくつるむようになった。
 なんとなく皆さんオタクは度外視している。オタクは特別にはなり得ないのだ。
 彼女の代わりにオタクに入り込んで休息をとっているのはちょっとムカつくが、あの見た目なら仕方ないかと郁磨も相手をするようになった。
 この買い物もその一環なのだろうと思っている。
 
 紫垣は数々の彼女との経験がものをいうのか、今日の買い物もとてもスムーズだった。
 さりげなく必要な物を教えて店まで連れて行ってくれるし、自分のを選びつつ郁磨のまで選んでくれたりする。しかも押し付けがましくない。
 やつは天然のタラシだなと思った。
 おかげで必要なものは午前中に買い終わり、食べたら遊ぼうと言われた。
 しかし郁磨には何をして遊んだら良いのかわからない。
 候補としてゲーセンか映画を聞かれている。この施設の中にどちらもあるから移動しやすいのだろうなと思った。
 手持ちが少ない郁磨は映画かなと思っている。
 そんなことを考えながら、窓側端っこのカウンター席でのんびり紫垣を待っていると、背後に人が立つ気配がした。
 紫垣は黙って人の後ろに立ったりする人間ではないので、なんだろうと後ろを振り向く。そこには見知った顔が四人いた。

「やっぱ郁磨じゃん!」

「うわぁ、お前でもここ来んの?」

 わぁっと騒がしく四人は喋り出した。
 嫌な奴らに見つかったなと郁磨は顔を強張らせる。同じ中学の奴らだった。
 郁磨の中学は今いる商業施設のある市と同じ市内にある。郁磨がいた中学では、進学高に行きたいなら、今いるこの市にいくつか進学高校があるので、皆そこを選ぶ為、隣の市にある花籠井かごい高校に進学した人間はいない。
 郁磨は態と離れた高校を選んだ。
 朝の登校は早い電車に乗るので、誰とも会わない。帰りは学校で時間を潰して遅く帰って、誰ともあまり会わないようにしていた。
 母親に逃げられた父子家庭。変な趣味を持つ郁磨は、地元の中学校では浮いた存在だった。
 だから揶揄ってくる人間も多く、郁磨の趣味もよくバカにされていた。

「…………僕も買い物くらいくるけど?」

 黙って言われて泣くような性格でもない郁磨はそんな彼等とよく喧嘩になった。その度に忙しい父さんの手を煩わせてしまったので、郁磨は態々遠い高校にしたのに、コイツらには会いたくなかったなと嫌な気持ちになってきた。
 今日は食べたら帰ろうかな……。
 きっとコイツらは夕方までここで遊んで帰るのだろうし。先に帰って会わないようにした方がいいのかと思った。
 座っているので立っている四人から見下ろされている状況にムカついていた時、目の前にパッとスマホの画面を見せられた。

「これ、お前だろ?高校でこんなカッコしてんの?」

「変態じゃねぇの?」

 笑う四人は大きな声で店内に響き渡るように喋っている。

「うるさい。黙れよ。」

「なんだよ?恥ずかしいならこんな格好しなきゃいいだろ?」

 わはははと笑う四人は昔から変わらないなと思う。中学の時コスプレを見られたのはたまたまだった。中学校にも女子だが同じようにアニメが好きで、何人かと話して簡単なコスプレなんかして遊んでいたのだ。
 女子の服を着たのもその時が初めてで、少しだけ皆んなと外を歩いただけだった。
 一緒にいた女子は逆に郁磨の服を着たのだが、普段着と変わらないねと喋っていた時だった。外で遊んでいたコイツらに見られて写真を撮られたのだ。
 消せと言ったら喧嘩になり、学校の外のことだったから良かったが、父さんには知られてしまった。
 父さんは女装のことも趣味のことも喧嘩のことも、何も言わなかった。
 父さんは何も言わない人だ。だから何を考えているのかよく分からない。
 嫌なことを連鎖的に思い出して、郁磨の表情はなくなってしまう。さっきまで楽しい気分だったのに……。
 どこか脱力感のようなものを感じた。

「今日は何でズボン履いてんだよ?スカートだろ?」
 
「着替えてくるか?」

「あのな……?静かに……っっ!」

 郁磨の肩が掴まれた。

「行こうぜ?どうせ一人なんだろ?」

「はぁ?」

 勝手に一人で来たとか決めつけるなと思った。


「連れをとられるのは困るな。」


 郁磨の肩を掴んだ男子の後ろから、静かだけど低い声が掛かった。
 四人は驚いて後ろを振り返る。本気で郁磨に連れがいるとは思っていなかったらしい。
 そして四人は大きく目を見開いた。
 そりゃそうだろう。紫垣はとにかく顔が良い。ちょっとそこら辺では見ないレベルなので、初めて見た人間は大概驚くだろう。
 紫垣はトレーを両手に一つずつ持ち、三段重ねのバーガー三つと、ジュースのカップを二つ、ポテト大盛りを載せていた。
 
「うわ、美味しそう…。」

 普段高くて買えないバーガーが三つも載ってる!ポテトもあんなにいっぱい!
 グゥと郁磨のお腹が鳴った。
 その様子を紫垣が楽しそうに見て、目を細めてクスリと笑った。それだけで近くにいた客から溜息が漏れる。
 薄茶色の髪と瞳に、派手だけど清潔感のある顔。長い手足に高い身長で、服装も淡い色合いと濃い青を組み合わせた涼しげな服なので、老若男女問わず皆見惚れていた。
 しかし郁磨はそんなイケメンよりトレーのご飯の方が魅力的だった。

「どいて。」

 郁磨の座るカウンターを塞いでいた四人は、紫垣に軽く邪魔だと告げられ、あっさりと場所を開いてしまった。紫垣の雰囲気に完全に呑まれてしまっている。
 紫垣は郁磨の前にトレーをどちらも置いて、四人を振り返る。

「…で?アンタらなに?」

 薄茶色の瞳を細めて笑いながら問い掛けられ、四人は赤くなったり青くなったりしながら、あからさまに狼狽えていた。



 注文の品を受け取って野波の所へ向かおうとして、窓側の端っこに立って大声で話している四人が視界に入った。
 四人の奥には野波が座っているはずだが、完全に囲まれてしまって見えない。
 先程隣のレジに並び、野波のセーラー服姿を見ていた奴らだと気付いた。

「…………。」

 知り合い?たまたま野波の写真を手に入れた物好きにしては、スマホ画面を見ている目つきが気になっていた。
 近付いて行くと会話がはっきりと聞き取れるようになる。
 何故か野波を連れ出そうとしていた。
 今日は和壱の方から誘ったのだ。最初野波は家にあるものを適当に持って行くから買い物はいらないと断ったのを、無理矢理約束させたのは和壱の方だった。
 無性に腹が立つ。

「連れをとられるのは困るな。」

 普段はもっと砕けた話し方をする和壱だが、態と威圧的に声を掛けた。
 和壱の登場に野波を囲って大声をあげて笑っていた四人は振り返り固まるのがわかった。
 和壱は自分の容姿がどんな影響を与えるかよくわかっている。
 笑顔を作りつつも、相手に何の用かと尋ねる。
 どうせ大した用もなく野波を連れて行くつもりだったのだろう。
 どこに連れて行くつもりだった?
 コイツらならカラオケとか?

「な、お前は何だよ!?」

 一番野波に突っかかっていた奴が和壱に食い掛かってきた。
 
「何って高校の友達だけど?そういうお前らは?」

「俺達は中学校のころの友達だよっ!」

「…そうかぁ?」

 完全に野波はバーガーにしか意識が向いていない。
 少し考え和壱は野波に声を掛けた。

「郁磨。」

 んうぇ?と変な声で郁磨はバーガーから漸く視線を外した。

「コイツら友達じゃないよな?」

 ニコーと笑顔で和壱は確認する。

「友達?」

 郁磨は元同中の四人を見た。

「違うけど?」

 あっさりとした郁磨の返事に、和壱は四人を見た。顔が歪んで不細工だなと思う。
 他の客が和壱達の様子をチラチラと見ていた。奥の方からも店員が様子を窺っている。
 四人は居づらくなり買ったジュースやらポテトやらを持って立ち去って行った。




「あんなのが多かったのか?」

 尋ねられて郁磨はバーガーから顔を上げる。口いっぱいに頬張っているので、返事はちょっと待ってもらうしかない。

「んむ、んむ、んんんん~………。んぐ、一部かな?元々小さい学校だし。人数少ないし小学校からそのまんま全員中学校に持ち上がりだし、ほぼ皆んな知り合いみたいな学校なんだよなぁ。基本男子は遠巻きだったし、アイツらは絡んでくるしでめんどくさい。」

「面倒だから離れた高校選んだのか?」

 郁磨は大きく口を開けてまた頬張りながら頷く。なんと紫垣はバーガーを三つとも郁磨にくれた。三種類違うバーガーに、どれを食べようか悩んだ郁磨を見て、呆れた顔で食べていいと言ってくれたのだ。
 郁磨の一口を眺めながら、紫垣はふぅーんと頷いている。
 何だろう?さっきから変な紫垣だ。

「…………郁磨。」

 しかも何でか名前呼びに変わってるし。こっちも和壱と呼んだ方がいいんだろうか。

「んぅんん?」

 食べながら返事をすると、紫垣はニコリと微笑んだ。
 片手にジュースを軽く持ち、カウンターの高い椅子にも負けない長い足はちゃんと地面についているし、組んだ足はさまになっている。
 薄茶の柔らかそうな髪は窓から入る太陽の光で煌めき、長いまつ毛に覆われた薄茶の瞳はほんのり微笑んで、まるでどこかのモデルが今から撮影でも始めるのかと思える程にかっこいい。
 こっそり赤の他人がスマホ構えて写真を撮っているが、あまり気にしていない。慣れっこなのだろうな。
 何でコイツこんな田舎にいるの?郁磨はモグモグと咀嚼しながら首を傾げた。

「今度からこっちに買い物来る時は付き合うよ。声掛けろよ。」

 郁磨は更に首を傾げた。
 妙に優しいな?
 ま、いいかっと郁磨は頷いた。バーガーが美味しすぎて、そっちの方が重要事項だった。
 







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