『妹に婚約者を奪われた令嬢、今は魔剣と共にギルド最強です』

miigumi

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2章

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第14話 眠る刃と、目覚める知恵

 

ギルドの上階、重厚な扉の奥で、エアたち《クロノ・フェイル》は正式な依頼を受けていた。

「遺跡……ですか?」

エアが問い返すと、ギルド幹部の一人が頷いた。

「ザルグレア北西にある“ウィルゼの廃遺跡”――300年前に封印された魔導文明の遺構だ。
この前の大雨で、一部の扉が開いた。その調査を、君たちに任せたい」

「魔物は?」

「おそらく“自動防衛式”の魔導罠。それと……まだ確認されていない“守護者”が存在する可能性もある」

 

アデルは視線を鋭くした。

「つまり、探索と戦闘、両方の対応力が必要ってことですね」

「その通りだ。……君たち《クロノ・フェイル》の連携に期待している」

 

任務の紙を手にしたとき、エアは静かに、でも確かに覚悟を決めた。

(これは……ただの昇格じゃない。試されてる)

「……受けさせてください」

 

***

 

遺跡の入り口は、苔むした石の階段の奥、崩れかけた門の影にひっそりと口を開けていた。

「うわ~、不気味だねぇ……」

「まあ、こういう場所は“雰囲気が9割”だよ」

アデルが軽口を叩きつつ、手のひらを掲げる。
そこに魔法陣が浮かび、淡い光が一行を包んだ。

「光球展開、風探知起動。……よし、進もう」

 

最初の数部屋は静かだった。
だが、奥へ進むにつれ、床に走る魔導式、天井に仕掛けられた穴、壁に描かれた不自然な模様――

明らかに“トラップ”の気配が濃くなる。

 

「この部屋、なにかおかしい……」

エアがそう呟いた瞬間、足元の石が沈んだ。

「……踏んだ?」

ゴゴゴ、と鈍い音。

上から、鋭い鉄の杭が落下してくる。

 

「エア、動かないで!」

アデルが叫ぶ。

彼が放った風の魔法が、空間をねじ曲げるように渦を巻き――
杭の角度を微妙に逸らす。

「っく……!」

そのすきに、エアは床を転がり、ぎりぎりで避ける。

「……ありがとう、アル!」

「油断は禁物。遺跡の罠は“反応してから”じゃ遅いんだよ」

 

その後も、回転床、魔力感知型の毒針、落とし扉などが容赦なく襲いかかる。

 

(このままじゃ、進めない……)

焦りがつのる中――

《“迷えば、刃を研げ。道を塞がれても、斬れぬものはない”》

 

エルグレイドの声が脳内に響いた。

「……斬る?」

 

「……アル、罠の魔力構造は見える?」

「見えるよ。魔導式の柱に集中してる」

「なら――あの構造ごと、破壊する!」

 

エアが魔剣を抜く。刃に魔力が集い、赤黒く輝き始める。

「エルグレイド、いける?」

《“当然だ。この手で、道を切り拓け”》

 

「――破斬!」

 

一閃。

魔剣から放たれた魔力の衝撃波が、罠の魔力核を斬り裂く。
バチン、と音が弾け、足元の仕掛けが沈黙する。

 

「おぉ、やったじゃん!」

リルが笑いながら拍手する。

アデルも頷いて、静かに言った。

「見事な判断だったよ、エア。……“君らしい戦い方”になってきたね」

 

その言葉に、エアの胸が少しだけ熱くなる。

“ただ振るう”だけだった剣が、
今は“仲間と進むために振るう刃”になってきている――そう感じた。
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