『妹に婚約者を奪われた令嬢、今は魔剣と共にギルド最強です』

miigumi

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2章

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第26話 白き祈りに忍ぶ刃

 

ラゼンティア王国・聖堂の一室。
雪のように白い衣を纏った少女は、今まさに祈りを終えたばかりだった。

「……お導きに、感謝を」

そう微笑みながら、手を組んだセリーナは、後ろの扉に視線を向ける。

「入って」

 

扉の向こうから現れたのは、一人の女性。
ギルド制服に身を包み、金髪をきっちりと編み込んでいる。表情は冷静で、目立たないように存在を薄く保っていた。

「初めまして、“聖女様”」

「いいえ、私たちは“二度目”よ、ソフィア。
あなたがギルドに潜り込んだのは、もう……三年前のことだったかしら?」

 

ソフィア――彼女は、王国情報部直属の隠密。その任務は、
“必要な時に動く、動かぬ刃であること”。

 

「《クロノ・フェイル》という新興パーティ。特に、“魔剣の少女”――彼女のことを調べてほしいの」

「……例の、“元公爵令嬢の姉”という噂」

「そう。けれど、まだ確証はないわ。
でも私には、姉様の声が……遠くからでもわかるのよ。
あの震えるような強がりも、偽るような微笑みも」

 

セリーナはふっと笑った。

「“今さら、あなたが何をしようとも”。――私はもう、“すべてを奪う”と決めたのよ」

 

ソフィアは膝をつく。

「任務の指示は?」

「彼女に直接手を出す必要はないわ。
情報を集めて、《クロノ・フェイル》を揺らして。仲間の隙から崩れていくのを待ちましょう」

「……了解」

「ふふ。ええ、どうか彼女に――“後悔を教えてあげて”」

 

***

 

その頃、リステルのギルド――

事務所の片隅にて、報告書の整理をしていたソフィアは、そっとエアの名が書かれた紙に指を滑らせた。

(あなたが、姉様――)

(どこまで、“守れるつもり”か、見せてもらいましょう)

 

視線の先。
廊下を歩くエアと、楽しげに話すリルとアデルの姿。

ソフィアは何も言わず、ただその背を見つめた。

それは、“白き刃”が鞘の中で静かに目を開いた瞬間だった。
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