『妹に婚約者を奪われた令嬢、今は魔剣と共にギルド最強です』

miigumi

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3章

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第35話《ギルド再編の兆しと、王国からの動き》

 

ギルド内の空気が、少しだけ変わってきていた。

噂――いや、“情報”という名の風が、静かに動き始めている。

 

僕はそれを感じ取っていた。

「《クロノ・フェイル》の動きが、やけに注目されてるな」

受付の奥で書類を整理する幹部・ロイが、ぽつりと漏らす。

「王都方面の依頼担当が最近そわそわしててね。どうも“上”が介入しようとしてるらしい」

 

“上”――それは王国直属のギルド統括本部のことだ。

表向きは依頼の調整や報告機関。でも、実際は各ギルドの“監視”も兼ねている。

そしてその監視の目が、この街の小さなギルドにまで降りてきたということは――

「セリーナが動いたか」

僕は静かに呟いた。

 

 

***

 

一方、王都・第二魔導庁――。

 

「……何の役にも立たないと思っていたけれど、少しは使えるようね」

セリーナが書類を見下ろす。
その手元には、《クロノ・フェイル》の活動報告と、“元公爵令嬢エレシア”の名。

 

「まさか本当にS級の才能を隠していたとは。あの子、無自覚で恐ろしいわね」

近くで控えるソフィアが、にやりと笑う。

「次はどうします? 仕掛けますか?」

「まだよ。……でも、“紐を引く準備”くらいはしておいて。
あの子は、自分では“選んだつもり”でも――結局、私が与えた道を歩いているのだから」

 

 

***

 

「エア、リル。少し話がある」

 

夜の風が冷たい。灯りの消えた訓練場で、僕は彼女たちに向き合った。

「近いうちに……ギルド内で“何か”があると思う。再編か、それとも派閥の動きか。……僕たちも、備えておいた方がいい」

「再編って、そんなに大ごと?」

リルが眉をひそめる。

「ギルドの空気が妙にざわついてる。しかも“外”じゃなく、“中”から揺れてる」

 

エアは、じっと僕の目を見つめていた。

「それは……王国の動きと、関係あると思いますか?」

 

僕は少し黙った後、静かに頷いた。

「あるだろうね。……正直に言うと、僕は王国が嫌いだ」

ふと、僕は笑った。

「けど、エア。君は――君自身で選んで、今ここにいるんだ。だったら、今度は君の力で、過去を“越えて”みせろ」

 

その言葉に、彼女は小さく目を見開き――そして、笑った。

「……はい。今度は、私の意思で動きます」

 

 

《クロノ・フェイル》が本当の意味で“チーム”になるその日は、すぐそこにあった。
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