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第79話 繁栄式拷問術
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結論から言って、封印のナイフを抜く事は出来なかった。
魔神の封印だけでなく、封印を解除できないようにする鍵魔術が柄に仕込まれていて、それを解除しないとビクともしない。解除する為の術式にも意味不明な程の多重封印がこれでもかとかかっていて、一体何を考えてこんな厳重にしてしまったのかと説教したくなるほどだった。
施した張本人は頑として解除方法を教えようとしないし、どうしたものか?
最終手段を取るべきだろうか?
「しなずち様。ヴァテア様の口を割らせるには、味方への尋問レベルでは全く足りません。敵兵への拷問に等しい責め苦でないと難しいです」
「こっちの口も堅いな。封印術の表層に罠魔術式が組み込まれている。正しい手順で解錠しないと鍵穴そのものを歪め、解封自体出来ないように中層の封印を組み替える設計だ。ここまで来ると、アイシュラ様か創造神でないと非正規の手段での解封は無理だ」
「あったりまえだっ! 誰にも悪用されないように、一ヶ月かけて封を重ねたからなっ! そう簡単に解かれてたまるかっ!」
マイアとラスティの報告に、ヴァテアの不機嫌な声が重なる。
触手で簀巻きにされ、尋問され、精神的に攻め立てられてもヒビすら入らない。最悪長期戦も視野に入れないとならず、先に開拓を進めた方が良いのではとまで思えてきた。
でも、まだ最終手段の一歩手前が残っている。
シムナとリタに準備に行かせて、段々と匂いが近づいてきた。そろそろ戻ってくる頃合いで、私はヴァテアを仰向けに寝かせ、両手を合わせてそっと拝む。
「な、なんだよ……?」
「ヴァテア。私はお前を洗脳するっていう最終手段がある。だけど、親友としてそれだけは絶対に使いたくない」
「なら諦めろよ。ってか、封印してある物を解封しようとすんじゃねぇって。何で封印されてんのかって意味を考えろっ」
「だから、その一歩手前をやろうと思う」
「聞けってっ!」
匂いがすぐそこまで来た事を感じ取り、出入り口に顔を向ける。
バンッ!と勢い良くドアが開かれ、リタとシムナを先頭に十数名の女性達が入ってきた。皆年頃の娘達で、ヴァテアの顔を認めるや、嬉しそうに駆け寄ってくる。
「八年ぶりね、ヴァテア。背、伸びた?」
「お久しぶりです、元ご主人様。相変わらずヘタレてそうで安心しました」
「おいおい、随分な格好じゃないか。報酬弾んでくれたら助けてやっても良いぜ?」
「ヴァテア様、やっと父上を説得できました。アルカウス家の跡取りとして、婿に来てくださいますね?」
「無様だな。前にも言ったように、お前は私がいないと全然駄目なんだ。しっかり自覚して私から離れるな」
「くぅ~んっ」
「ちょっ、お前ら、何で――――っ!?」
驚愕と驚愕と驚愕を合わせた瞳で、ヴァテアは彼女達でなく私を見た。
リタの話だと、ヴァテアは十年ほど前に勇国で魔狩人をしていた事があり、仲間や従者、恋人未満の知人友人が大勢いたそうだ。
その内の近場に住む者達だけを呼び寄せて、これから私は非道を行う。
当人は、もう気付いているだろう。
私が何をしようとしているのか。
「しししししなずち? か、か考え直せよ、なぁ?」
「皆さ~ん、実はヴァテア様は遥か南のグランフォート皇国の皇子様なんですっ! でも婚約者とかは一人もいなくって、溜まった性欲を義理の妹さんとの不貞で発散しているそうですよ? 許せない人は手を上げてーっ!」
「お兄様っ! 妹のように可愛がってくださったのは、私をそういう目で見ていたんですね!? 早く言ってください!」
「私はお前の姉貴分だ。妹とやれるなら私ともやれるよな?」
「そ、そういうのはいけないと思いますっ! 誰に対しても恥ずかしくない関係でこそ、赤ちゃんを授かる資格があるんです!」
「お嬢ちゃんには大人の世界はまだ早いみたいだな? こういうのは仕込んだ者勝ちさ」
「迂遠な話は不要だ。しなずち、と言ったか? 私はヴァテアと遂げられると聞いてきた。相違ないか?」
「間違いありません。望めば今日にでも、皆さんはヴァテアと夫婦になれます。逃れられない証を胎に孕み、その先の繁栄も約束しましょう。リタ。向こうの部屋で順番を決めてきて。あと、この薬を全員に配布」
「は~いっ! それじゃ皆さん、誰が一番に跨るか決めに行きましょう!」
『『『『私が最初に決まってるっ!』』』』
飢えた獣を思わせる簒奪者達が、我先にと奥の部屋に殺到していく。
後ろ姿を見送り、私はヴァテアに微笑んだ。
それがどういう意味なのか、以前ロザリアを焚き付けられた経験から良く知っている筈だ。あの時は一人が相手で、今回は十数人。対策を講じなければ最後まで保つまい。
最悪、最期になるか?
その時は無理矢理復活させよう。なぁに。ちょっと苦めのお薬をぶち込むだけだ。
ぶち込むのは……やりたそうなのが十数人いるから、全員に一回ずつ渡しておこうか。
「ヴァテア? ここに老人でも絶倫魔人になれるお薬があるんだけど、どうする?」
「…………やめろよぉ……」
消え入りそうな泣き声が床に染み、私は簀巻きの触手を一部分だけ開かせた。
魔神の封印だけでなく、封印を解除できないようにする鍵魔術が柄に仕込まれていて、それを解除しないとビクともしない。解除する為の術式にも意味不明な程の多重封印がこれでもかとかかっていて、一体何を考えてこんな厳重にしてしまったのかと説教したくなるほどだった。
施した張本人は頑として解除方法を教えようとしないし、どうしたものか?
最終手段を取るべきだろうか?
「しなずち様。ヴァテア様の口を割らせるには、味方への尋問レベルでは全く足りません。敵兵への拷問に等しい責め苦でないと難しいです」
「こっちの口も堅いな。封印術の表層に罠魔術式が組み込まれている。正しい手順で解錠しないと鍵穴そのものを歪め、解封自体出来ないように中層の封印を組み替える設計だ。ここまで来ると、アイシュラ様か創造神でないと非正規の手段での解封は無理だ」
「あったりまえだっ! 誰にも悪用されないように、一ヶ月かけて封を重ねたからなっ! そう簡単に解かれてたまるかっ!」
マイアとラスティの報告に、ヴァテアの不機嫌な声が重なる。
触手で簀巻きにされ、尋問され、精神的に攻め立てられてもヒビすら入らない。最悪長期戦も視野に入れないとならず、先に開拓を進めた方が良いのではとまで思えてきた。
でも、まだ最終手段の一歩手前が残っている。
シムナとリタに準備に行かせて、段々と匂いが近づいてきた。そろそろ戻ってくる頃合いで、私はヴァテアを仰向けに寝かせ、両手を合わせてそっと拝む。
「な、なんだよ……?」
「ヴァテア。私はお前を洗脳するっていう最終手段がある。だけど、親友としてそれだけは絶対に使いたくない」
「なら諦めろよ。ってか、封印してある物を解封しようとすんじゃねぇって。何で封印されてんのかって意味を考えろっ」
「だから、その一歩手前をやろうと思う」
「聞けってっ!」
匂いがすぐそこまで来た事を感じ取り、出入り口に顔を向ける。
バンッ!と勢い良くドアが開かれ、リタとシムナを先頭に十数名の女性達が入ってきた。皆年頃の娘達で、ヴァテアの顔を認めるや、嬉しそうに駆け寄ってくる。
「八年ぶりね、ヴァテア。背、伸びた?」
「お久しぶりです、元ご主人様。相変わらずヘタレてそうで安心しました」
「おいおい、随分な格好じゃないか。報酬弾んでくれたら助けてやっても良いぜ?」
「ヴァテア様、やっと父上を説得できました。アルカウス家の跡取りとして、婿に来てくださいますね?」
「無様だな。前にも言ったように、お前は私がいないと全然駄目なんだ。しっかり自覚して私から離れるな」
「くぅ~んっ」
「ちょっ、お前ら、何で――――っ!?」
驚愕と驚愕と驚愕を合わせた瞳で、ヴァテアは彼女達でなく私を見た。
リタの話だと、ヴァテアは十年ほど前に勇国で魔狩人をしていた事があり、仲間や従者、恋人未満の知人友人が大勢いたそうだ。
その内の近場に住む者達だけを呼び寄せて、これから私は非道を行う。
当人は、もう気付いているだろう。
私が何をしようとしているのか。
「しししししなずち? か、か考え直せよ、なぁ?」
「皆さ~ん、実はヴァテア様は遥か南のグランフォート皇国の皇子様なんですっ! でも婚約者とかは一人もいなくって、溜まった性欲を義理の妹さんとの不貞で発散しているそうですよ? 許せない人は手を上げてーっ!」
「お兄様っ! 妹のように可愛がってくださったのは、私をそういう目で見ていたんですね!? 早く言ってください!」
「私はお前の姉貴分だ。妹とやれるなら私ともやれるよな?」
「そ、そういうのはいけないと思いますっ! 誰に対しても恥ずかしくない関係でこそ、赤ちゃんを授かる資格があるんです!」
「お嬢ちゃんには大人の世界はまだ早いみたいだな? こういうのは仕込んだ者勝ちさ」
「迂遠な話は不要だ。しなずち、と言ったか? 私はヴァテアと遂げられると聞いてきた。相違ないか?」
「間違いありません。望めば今日にでも、皆さんはヴァテアと夫婦になれます。逃れられない証を胎に孕み、その先の繁栄も約束しましょう。リタ。向こうの部屋で順番を決めてきて。あと、この薬を全員に配布」
「は~いっ! それじゃ皆さん、誰が一番に跨るか決めに行きましょう!」
『『『『私が最初に決まってるっ!』』』』
飢えた獣を思わせる簒奪者達が、我先にと奥の部屋に殺到していく。
後ろ姿を見送り、私はヴァテアに微笑んだ。
それがどういう意味なのか、以前ロザリアを焚き付けられた経験から良く知っている筈だ。あの時は一人が相手で、今回は十数人。対策を講じなければ最後まで保つまい。
最悪、最期になるか?
その時は無理矢理復活させよう。なぁに。ちょっと苦めのお薬をぶち込むだけだ。
ぶち込むのは……やりたそうなのが十数人いるから、全員に一回ずつ渡しておこうか。
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