しなずち ~転生触手妖怪 異世界侵略風味、褐色爆乳女神と現地収穫の巫女衆を添えて~

花祭 真夏

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第140話 何とは言わないけど被害者の会

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「…………起きられる奴、いるか……?」


 ギュンドラ王のか細い声に、私とテトとヴァニク殿下は泣きながら顔を横に振った。

 クルングルーム領主館の一室で、私達はふかふかの絨毯の上にうつ伏せで倒れている。痛み続けて力が入らない下半身を庇い、顔を絨毯に押し付けて悲痛に歪む表情を隠す。

 結論から言うと、四人揃ってあの場の女達にレイプされた。

 男同士の尊厳を賭けた決闘――――そんな物、初めからどこにもなかった。尻を拡張されて息絶え絶えの私達を、頃合いを見て女達が組み敷く出来レースだったのだ。

 それに気づいたのは、最終的な勝者だったテトの触手が最大サイズにまで拡張され、抽送されながら街娘達に跨られて搾られ始めた時。

 勝敗の結果なんて誰も彼もどうでも良く、ユーリカがばらまいた媚薬と興奮剤にケダモノ達はタガを外していた。たった一日で各々の経験人数が二十人ずつ増え、子種を宿した雌達は残らず一人身であり、注いだ各々が責任を取って貰う破目にもなっている。

 どうして、こうなったの?


「ごめん…………ごめんね……みんな…………」

「もう良い。二人目に犯されてた時まではどうしてくれようかって思ってたけど、お前が八人目に貫かれて死んだような目をしているのを見たらその気も失せた」

「兄貴の言った通りだったな…………アンタといると、身体がいくつあっても足りないってよ……」

「後で寿命を延ばす薬をくださいね……? みんな一緒が一番なので……」

「うん……出来る事なら何でもする――――?」


 コンコンッ、とドアのノックが私達の意識を一つにまとめた。

 ドア越しなのに、訪問者が誰だか何となくわかる。何度も何度も何年も、歪曲空間で嗅ぎ続けて覚えてしまった親友の臭いだ。十割方、間違いないと言って良い。

 ノックの音から、ヴァニク殿下もわかったらしい。

 芋虫の様に身体を動かし、ソファーの裏に隠れようとしていた。残念ながらその前にドアが開かれてしまい、情けない姿を敬愛する兄君に目撃されてしまう。

 意地の悪い笑顔が、私達に降り注いだ。


「おうおう、大変だなお前ら」

「ヴァテアァァァ……」

「兄貴、抉られるか出てくかどっちか決めろっ」

「だってよ、ラフィエナ。例の軟膏、たっぷり塗ってやんな」

「フフッ……あ・な・た? ちょっと脱ぎ脱ぎしましょう?」

「やっ、やめろぉおおおおっつ!」


 ヴァニク殿下が奥方に、ソファーの裏に連れていかれた。

 ショタ特有の高い声が裏返って甲高く、高く上げ過ぎて声を通り越した音へと至る。

 持っていた軟膏は、痛覚を性感に変換して増強する奴だ。精力剤も配合されているから――――うん、おっぱじめてるな、やっぱり。

 兄なら弟を大事にしろよ。


「さぁって……久しぶりだな、テト、ギュンドラ、しなずち」

「ヴァテアさん……最低です」

「何しに来やがった、クソ野郎」

「先に私の要件を済まさせて。そしたらすぐ帰るから」

「あ゛ぁ? ラスタビアでよくもやってくれやがって、逃がすと思ってんのか? シャレア、シュレス、ちょっとこいつらと話があるからテトを連れて行ってやれ。青天井の天国へ」

「テト。ちゃんと卵出来たから、もう安定期。たくさんしよ?」

「別に部屋を貸してもらいましたから、そっちに行きましょう。姉さん、そっち持って」

「これで良い?」

「やぁあっ! やめ――――ぃ……っ」


 悲鳴を上げる事すら許されず、テトは痛みに耐えながら二人に脚を抱かれて運ばれていった。

 あの抱き方をされたら私は泣く。

 アレは男が二人がかりで女にする物であって、女二人が男にする物ではない。もしやるなら懲罰的な意味合いしかなく、楽しんでやっているなら余程性格が歪んでいる。

 可哀想に。後でしっかりオシオキできるよう、手を貸してあげないと…………。


「じゃ、次はしなずちか」

「やめよ? ねぇ、やめよ? 私はあの娘達のヴァテアへの想いを遂げさせてあげただけ。誰かが悪いんじゃなく、ヴァテアの甲斐性無しが悪いんだよ?」

「言うに事を欠いて、自分の置かれてる状況わかってんのか? あの晩で十七人も孕ませたせいで、ロザリアとルエルとアイシュラに監禁されて犯され続けた俺の気持ちがわかんのかよ、えぇ?」

「契約したばかりの巫女に最大の性感帯を暴かれて、三十五人がかりで丸一日回され続けた体験なら語れるよっ!」

「…………言ってて悲しくないか?」

「ふぇぇぇぇ……」


 絨毯に顔を埋めて、自分自身の尻を擦る。

 だんだん慣れて来たから、こっちはもう少しで大丈夫になると思う。そしたらまたナニカサレソウな気はするけど、今よりはきっと多分おそらくマシになるんじゃないだろうか?

 きっと、きっとなってくれる。

 そう思いたい。

 思わせて……。


「とりあえず、このままだと延々と逆レイプされ続ける未来しか見えねぇっ。聞きたい事があるならさっさと言え、しなずちっ。マックス達を救ってくれた礼に、答えられる限りは答えてやるよっ」

「マックス? 随分な大物と知り合いになったな。実力的にドルトマと同等の勇者で、ギュンドラの裏の最高戦力だぞ? 超美人の奥さんと結婚してからは性格も顔も丸くなったけど」

「興味あるけど、今は置いておくよ。――――神滅戦線って知ってる? 今敵対してて、今度調伏しにクロッセンド王国に攻め入るんだ。頭領とかの情報があれば凄く嬉しい」

「あ~……すまん。そいつらについては俺も詳しくない」


 ギュンドラは手を振って、私の期待には応えられないと手振りで示した。

 ユーゴを通して多少の交流くらいあるだろうと予想したのだが、結果は外れのようだ。

 汗の臭いにも嘘が感じられず、隠している事も何もなさそう。

 でも、何で?


「俺達と奴らは目的が違う。俺が仲間達とこの国を作ったのは、ディプカントに流れてくる転生者達を保護する為だ。必要ならやるけど、正面切って神々と争おうなんて考えちゃいない」

「神は嫌いだけど、滅ぼす気はない?」

「ただでさえ、すぐ南に上位神が二柱も陣取ってんだ。敵対した所で、うちの規模ならあっという間に潰される。そうなれば、今この国で抱えている数百人の転生者が不遇に陥る可能性が高い。そんなリスク、取れるわけないだろ?」


 真っ直ぐな瞳が、ギュンドラの確固たる意志を強く語りかけてくる。

 うつ伏せで脚と尻を痙攣させる無様を晒しつつも、上に立つ者の資質を彼は溢れさせている。同時に、大した役に立てない不甲斐なさに自責を抱え、悔しそうな表情を次いで浮かべた。

 いや、結構良い情報を貰えたよ。

 ギュンドラは国内の情報を、裏取引の詳細まで全て閲覧する事が出来る。にもかかわらず殆ど情報を持っていないとなると、神滅戦線がギュンドラ王国内で活動していない事と同義だ。

 ユーゴも、あっちの仕事をする時は国外でやっているのだろう。

 二人の仲は密の中の密。下手な隠し事は隠す前に露見するから、対策も念入りで厳重な筈だ。

 ――――となると、他の情報源を探す必要がある、か。

 次はどこに行こう?


「なんだ、しなずち。清水さん達とやりあうのか?」


 …………え? ヴァテア、今なんて?
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