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02 「『ファーストキスはレモンの味』……っての、試してみねぇ…?」
しおりを挟む「うぁぁ、えっちしたいぃ~! 佐藤っオレはえっちがしたくてしょうがない!!」
「おれだってしたいしっ! っていうか、まずはちゅうがしたいっ」
「オレもちゅうしたいっつーの! ……でもさぁ、親友よ」
「んあ? なーに、親友?」
「…オレらってさ……もしこのまままじでこの先ずっと彼女できなかったら、どうするんだ…?」
「へっ……って、いやいやっ。今は無理でも、卒業したらきっとできるっしょ!」
「……卒業、できなかったら…?」
「えっ……いや、卒業は…できるでしょ…」
「だって…ほんとにできるんか? …オレらこの前の中間も全部赤点だったのによ…」
「うっ……それは、確かにそうだったけどぉ…」
「……できなかったら、ずっと留年…なんかな…オレらが大人になっても」
「ええっ大人になってもぉっ…!? そんなのぜってぇやだぁぁっ!!」
「うっせぇっ、オレだってやだわっ…!!」
……相当深い問題でも抱えてなければ、いくら二人がバカとはいっても、大人になるまで留年し続けることなどはそうない事柄ではあるのだが……そこは加藤と佐藤。
おバカらしく、どーしよっどーする!? とわぁわぁしばらく騒ぎ立てるのだった。
何にせよ、彼らが本当に無事『卒業』したいのは――結局、自分たちの『童貞』であり。
「はぁぁ……せめて、せめてファーストキスだけは済ませておきたいっ…」
「右に同じく……はぁ~…甘酸っぱい初ちゅうしたいよぅ……」
「なっ、甘酸っぱいっ………なぁ、佐藤よ」
「ん~…」
「……『ファーストキスはレモンの味』とかいうの、あるじゃん?」
「レモン……なんか聞いたことあっかも」
「あれさぁ…まじ、なんかな?」
「さぁ? わっかんね……あれかな? ちゅうしてる時にレモン味のなんか食べながらする人が多いからとか…?」
「まじかよっ…でも、それ正解っぽい気がすんなっ…!」
「えっおれ当たった!? わぁいっやったー!!」
「ははっよ~しよしっ、よくやったぞぉ佐藤っ」
「! …へへっ~♡」
「ふはっ…お前って、オレに頭撫でられんのほんと好きな」
「っ、べっ別に好きじゃねーもんっ…!!」
「ハイハイっそう言いながら、オレの手から頭離さないおバカさんがここにいま~す♡」
「お、おれじゃなくて加藤がおれの頭撫でんのやめねーんじゃんっ…! っていうか、バカにバカって言われたくねーし!!」
ファーストキスの話題からレモンの味へと発言が飛び、何故か全然違う回答で大喜びあったと思ったら、
いつのまにかバカップルのような事を突然しだした加藤と佐藤の二人。
……無二の親友にしては些かおかしい触れ合いのような気もするが、
しかしこれが二人の普段からの変わらない距離でもあった。
――だから、なのだろうか。
「…そういえばさぁ。レモンの味っていや、オレ今ちょうどレモン味のアメ舐めてたところだったわ」
「えっそうなん?」
「ほら…んべっ」
「あっまじだ、黄色い~! つーか加藤ばっかズルいっ、おれもアメ舐めたいんだけどっ」
「! ……んじゃぁ、さ……これ、舐めてみるか?」
「へっ……ん? え、これって、」
「というか…あれだ、その……ちゅう、してみねぇ…?」
「え……ちゅう、って」
「だから、今したら……レモン味のキス、体験できるかなって……オレと、お前…で、」
「…レモン味の…キス……ちゅう、おれと…お前で、ちゅう……ってええええっっっ!!?」
おバカの頭の中はわからない。
突然、加藤が佐藤に対し――まさかの『キス』の提案をしてきたのである。
「はっはぁっ…!? なっ、えっ、なっ、おまっいきなり何言ってっ…!?」
「っっ、だ、だってオレ今レモン味のアメ舐めてたしっ…!! このまま高校留年とかになっちまったら、えっちどころかキスだってできそうにないしっ、だからっ…」
「だっだからって、何でおれっ…」
「おっオレだってほんとは可愛くてお尻の形がイイ女の子とファーストキスしてえよっ!!」
「はぁっ!? そ、そんならおれだっておっぱいが超おっきい可愛いコとファーストキスしたいっつーの!!」
「そんなのわかってるっての…!! っ、でもっ…女の子じゃないけど……さ、佐藤となら、できるかもって…なんか、思って…」
「へ……っっ!!?」
「っ……」
「え、あ、え、っっ…」
高校留年かもっ…という絶望感も含まれていたことによる焦りからの咄嗟の発言ではあったものの、
『相手が佐藤だから』こその提案でもあり。
加藤のその言葉に、佐藤はわかりやすいほどに狼狽え――何故か同時に、顔を真っ赤に染め上げさせていた。
それはもちろん、キスの提案をした加藤もまったく同じで――
「っ……お、おれも、加藤とだったら、できるかも……ちゅう、」
「!! …っ、じゃあ……キス、してみっか?」
「! う、うん…して、みる」
何がどうしてこうなった。
加藤と佐藤、親友同士のはずの二人は、互いに顔をまるで茹でだこのように沸騰させながら、
お互いに『ファーストキス』を捧げる決意を、ここに誓い合ったのだった。
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