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03 「「『ファーストキスはレモンの味』って、ほ、本当なんだ……♡♡♡」」
しおりを挟む「――っ、よ、よしっ…じゃあ、キス、するからなっ…」
「っい、いーよ…どんとこいっ…」
チッチッチ…
部屋の壁に掛けてある時計の針が、妙に大きく聞こえるほどに静まり返った……加藤の部屋のベッドの上。
制服のまま正座する形でお互いに向き合い、
今まさにキスを行おうとしている加藤と佐藤の姿が、そこには存在していて。
一応、加藤からの提案であったためか。自然と加藤がする側、佐藤が待つ側の体勢となっていた。
ドッドッドッドッ…
一体どちらの心臓の音か……いや、おそらく両方の音が合わさった形であろう。
うるさすぎる心音の中。
「っ……」加藤はゴクリ、喉を鳴らしながら、両目を震えさせつつ目をきつく閉じている佐藤の唇に
――ちゅっ
「……」
「……」
軽く、ほんの少し触れるだけのキスをしてみせた。
これが、正真正銘……二人の『ファーストキス』となる。
「……っ、ど…どうだった?」
「っ……な、なんか、柔らかかった…」
「そっ、そうか……オレも、柔らかかった」
「う、うん……でも、レモンの味…しなかったんだけど?」
「! ……それは、確かにしなかったな?」
「だよねっ?」
「だよなっ!」
「「んん……??」」
――するわけがない。
ただ、口と口をくっつけただけなんだから。
せっかくのファーストキス、唇が触れ合ったところまではドキドキしっぱなしだったのが嘘のように、
おバカな二人は「あれ~?」と首を同時に傾げだす。
こいつらは本当に高校三年生男子なのか…??
しかし、「……あっ、わかった!」と、
「そうだよっ! ディープキスじゃねぇと口の中のレモンの味なんて確かめようないって!!」
「……!! そうだっディープキスっ!! すっかり忘れてた!!」
ようやく加藤の方が答えを導き出し、佐藤もポンっと手を叩き声をあげた。
「いやぁ…今までさんざんエロ漫画とかエロ動画見てきたってのに…なんか、いざ自分たちがやるってなると、頭から抜けちまうものなんだなっははっ」
「ほんとほんとっ、あんなにたくさん色々見てきたってのに、何でかおれも頭からポーンっと全部消えちゃってたよっ」
「なぁ、まじ不思議だわぁ~」
「これぞっミステリーだねっ。それじゃ、答えもわかったことだし、おれたちも早速っ」
「おおっ、早速っディープ……キス…を、」
「うんっ……ん? ディープ、キス……えっ!!? すっすっするの…!!?」
「っ!! ……こ、ここまで来たんだっ、するぞっ佐藤…!!」
「ぅええええっ…!?」
もともと頭空っぽだろうに、さらに空っぽにしてどうするんだと言わんばかりの二人であったが。
ちょこんと触れるだけのキスじゃない、もっとその先の大人なキスにチャレンジするぞっと加藤が意気込めば、
何だかんだと加藤の言うことに素直に従ってしまう佐藤も、結局は決意を固め。
「……っ、佐藤、次のキスの時…口ちょっとだけ開けとけよ?」
「! …わ、わかった…開けとく」
「じゃあ、キス…するからな」
「っ、うん」
――ちゅ、……ヌルリ
「んんっ!? っ、んんっ……あ、ふぁぁ♡♡♡」
「っ……は、ん……ふっ♡♡」
ちゅぷ、ちゅる、ぬちゅ…
「ひゃふ♡ あぅ……んぷっ♡♡ んんっっ♡♡」
「んぁ、じゅる…じゅっ、ん…♡♡」
ちゅばっ、ちゅっちゅうぅ
「んんんっ♡♡ …ぷはぁっ、ぁ、か、かとぉ…にゃにこれぇ…♡♡」
「っ!! さ、佐藤こそっ何だその顔っ…くそっ…!!」
「その顔って、なにっ……んぷぅっ、ひゃぅ♡♡♡」
「はぁ…んちゅ、んはぁ……♡♡」
じゅるるる、ちゅぱんっちゅるるる♡♡♡
((――なんだこれっっ…!!? ディープキスってこんなに気持ちいいモノなのかっっっ♡♡♡))
唇と唇がただくっついただけのファーストキスと違う、
お互いの舌と舌を絡ませ、ぐちゅぐちゅと咥内で唾液を交換し合う濃厚なベロちゅう
――初めてのディープキスに、二人は我をも忘れ、無我夢中で互いを貪りつくしだす。
「んぁ、ふぁ♡♡ …んんっ、加藤っもっと、もっとベロちゅうしてぇ…♡♡」
「ぷはぁっ…は、何ソレっ…何その可愛い言い方っ…ああもうっふざけんなよっ佐藤のバカ野郎っ…♡♡」
「はぁっ、加藤だってバカっ…んんん~っ♡♡♡」
ドサリっ
互いに正座をしながらしていたキスは、いつしか互いをきつく抱きしめながらのキスに変わり、
二人はとうとうベッドの海へと一緒にダイブしながらも……それでも、互いの唇を重ね合わせるのをやめることはなかった。
「あぅ、はぁ♡♡ か、かとぉ…♡♡」
「んっ♡ …は、なにっさとうっ…♡」
「ぁ、れもんっ……レモンの味、ちゃんとする、よっ♡♡」
「ふはっ、…だなっ♡♡ ちょう甘酸っぺぇ味っ…♡♡」
「うん、ぁん、本当…だったな、ファーストキスはぁ、レモンの味ってぇ…♡」
「おうっ…まじでっ、レモンの味で…すげぇ美味しいっ、んっ♡♡」
「んんっ♡ …んぁぁ♡♡」
――いま二人がしているキスはファーストキスではないので、
『ファーストキスはレモンの味』の実証にはまったくなってはいないのだが。
そんなこと、このおバカな二人には到底気づける案件ではなく。
「……ん、はぁ…♡」
「ぷはぁっ……はふ…♡」
はぁ、はぁ、はぁ……
一体どれくらいしていたのか。
ようやく互いの口を離し、肩で息をする二人は、
「っ……」
「……っ」
ベッドの上。重なり合いながら、お互いをジッと見つめ合い。
そして、
「……あのさ、佐藤っ…」
「……な、何っ…加藤」
「…お前が、よかったらなんだけど……さ、」
「――っ、続きも…してみたり、するか?」
「っっ――…加藤がそう言うなら…しても、いいよっ…」
濃厚な大人なキスよりも、もっともっとその先……
可愛い未来の彼女とする予定であったはずの夢にまでみた『セックス』を、
加藤と佐藤、おバカな二人は、今まさに行おうと
――まるで誓いのように、もう一度レモン味のキスをそっと交わし合うのだった。
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