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第一章:神の暇つぶし
【スペシャル】肝試し
しおりを挟むとある日の夜間のこと、四人は心霊スポットに肝試しに来ていた。
心霊スポットと言うのは、学校の裏山にある立ち入り禁止の神社。
なんでも、神社の階段をとある地点まで登ると、一番下に戻されるらしい。
それが、神隠しやらオバケが化かしているやら、まことしやかに色々と囁かれているのだ。
そんな階段の前に立っている四人は、ライトの光で上へと続く夜闇を照らしていた。
「うわぁ……暗いね…………」
陽葵は足をガクブルと、震わせている。
「それな? 一番上まで見れねーWWW」
「これ、本当に神社あるのかな?」
「どうかしらね? これだけ鳥居があるのだから、流石にあるんじゃないかしら?」
上へと続く階段には、幾つもの鳥居が存在する。
綾華はライトの光を鳥居の柱から額束へと、少しずつ移動させる。
鳥居の色は赤だ。
柱は所々禿げているため古そうだ。
額束には御札らしきモノが在る。
「何かしらね? あの御札」
「んーーー……鬼? かなぁ?」
「確かに鬼っぽい」
額束に在る御札には、炭で描かれた鬼がいた。
背格好は小さいが、何処か禍々しいオーラを感じる。
俺から言わせてもらえば、見た目がキショかった。
「…………なんかキショいな」
「いや、分からなくはないけど……」
「まぁ良いわ、早く進みましょう」
「「「リョーカイ」」」
俺達は階段に足を踏み入れる。
元が整っていたからなのか、経年劣化でボロボロだというのに、何処か登りやすい印象を受けた。
一段、また一段と、俺達は登り続ける。
ビューッ!!!
夜風が吹き荒れ、頬を掠った。
「きゃあああああ!!??」
陽葵は怖いモノが、人一倍苦手なのだ。
突風にビビった陽葵は俺の腕に抱きつき、顔を青ざめさせていた。
腕に陽葵の胸が当たっている、だと?
好きな子とこんなに近いとか、何という役得か。
ここは意地でも、男として格好つけなくては……。
「陽葵、大丈夫。俺らが居るから」
これは決まったのでは?
陽葵の好感度上限突破したのでは?
おっといけない、ここで浮かれてしまっては水の泡だ。
最後まで、頼れるイケメンを演じなくては。
「…………うん。ありがと、蒼」
陽葵は俺の身体に密着しながら、上目遣いをしてきた。
目を潤わせながらの上目遣い、だとっ!?
なんという破壊力なんだ。
ホラーでのドキドキじゃなくて、ラブでのドキドキで胸が高鳴っている。
そんなこんなで俺がドキマギしていると、左側を歩いている樹と綾華が話しかけてきた。
「後もう少しで、例のエリアだと思う。あとね……陽葵、怖いなら無理しないでね」
「体調悪くなったら言いなさいよー?」
「うん! 二人共、ありがとね!!」
「「あいよー!」」
そんな会話をしながら、俺達は上にへと足を伸ばす。
俺達が上に行くに連れて辺りの木々がざわめき、少し、身体が冷えてきた。
「なんか、寒いわね……」
「うん……めっちゃ寒い」
夜というのもあるのだろう。
風が冷たく、特に女子二人が震えている。
寒そうにしている陽葵と綾華を見た俺と樹は、それぞれが行動を起こした。
「はい、コレ。寒いだろ? 使えよ……」
「…………うんっ! ありがとう!! えへへ……蒼の匂いがする」
「そ、そっか…………なら、よかった」
俺は自分の羽織物を脱いで、そっと渡した。
それを受け取った陽葵は、羽織って微笑んだのだ。
全てにおいて破壊力が凄まじく、死ぬところだった。
「綾華。どう? コレで温かい?」
「う、うん……凄く、温かいわ。ありがとね、樹」
「う、うん……だ、大丈夫………………」
樹は自分の羽織物を脱ぐと、そっと綾華に被せた。
それを受け取った綾華は、顔を火照らせて微笑んだ。
どうやら樹も照れたようで、耳を赤くしている。
恋という名の熱病に支配された俺と樹は、身体中がポカポカなためか、外が寒いというのに湯気を出している。
イチャイチャを交わした俺達は、また歩き進める。
階段を登り始めてから、どれくらい経っただろうか?
恐らくだが、少なからず二十分は歩いたと思う。
その証拠に運動音痴な樹と綾華だけでなく、俺までが疲れを感じているのだから。
まぁ……陽葵の体力だけは、規格外だけど。
陽葵以外の三人でハァハァ言っていると、何故かは分からないが、階段の一番上まで来ていた。
「上まで着いちゃった…………」
「そうね……なんか着いたわね」
「階段を登っただけだったな……」
「「「…………はぁ」」」
特にコレと言ったことが起こらず、二十分間階段を上がっただけという事実。
それに対して陽葵以外の三人が、愚痴を少し言いつつ溜息をついた。
そんな三人を見た元気な陽葵は、口を開く。
「ちょっとだけさ、この中、入ってみる?」
階段の一番上には大きな鳥居があり、その先に、神社の本殿らしき建物が在った。
その先に、陽葵は行こうと言うのだ。
疲れたため帰りたい気持ちもあるが、ここまで来て収穫なしじゃ努力が報われない。
ならばこそ、疲れきっている三人は頷いた。
「「「うん」」」
「じゃあ行くよー? せーーのっ!!」
顔を見合わせた四人が息を合わせて一緒に、鳥居の中へと足を踏み入れる。
するとそこには、狛犬、狐、八咫烏、鹿の、光を発している四匹の動物が鎮座して居た。
「「「「眩しっ!?」」」」
神々しいことこの上ない、目が眩みそうだ。
四人が目を手で抑えていると、動物の中の一匹、狛犬が話しかけてくる。
『人の子よ。よくぞ、ここまで参られた』
この狛犬、すっごい渋い良い声じゃね?
狛犬の見た目は猛獣そのものなのに、そこから発せられるダンディーな声がギャップ過ぎて惚れそう。
いや、待てよ?
てか何で、この犬喋ってんの……………………?
俺達は顔を見合わせた。
すうううううううう……はあああああああああ………。
「「「「喋ったあああああ!!!???」」」」
声が辺り一面に木霊した。
動物達は五月蝿そうに耳を塞いでいる。
『人の子よ。いきなり叫んでどうしたのだ?』
「「「「動物が喋ったら驚くよ??!!」」」」
その言葉を聞いた動物達は顔を見合わせ、「?」を浮かべながら首を傾げている。
そんな動物達に俺達が呆れていると、鹿が口を開いた。
『ワタクシには、よく分かりませんね』
やけに身体が大きい雌鹿。
立派な角を頭に生やしており、毛がフカフカだ。
ん……? いや待てよ? 何で雌鹿に角があるんだ?
「何で角があるんです?」
『面白いことを聞きますね。ワタクシは神様の使いです。神様と連絡をするのに、角が必要でしょう?』
なるほど、神様の使いか。
ならば、神々しい光を発しているのも頷ける。
うんうん……
「って、な訳ねーだろ!!??」
『どうした、人の子よ。情緒不安定か?』
「いきなり神様の使いって言われたら驚くよ??!!」
俺が狛犬にツッコミを入れると、八咫烏が何やら申し訳なさそうに口を開いた。
『確かに……そりゃあ、驚くよね? ゴメンね?』
八咫烏は純白の綺麗な身体で、中性的な声をしている。
声の特徴としては、樹のようだった。
なんか樹って思った途端、申し訳なくなってきた……。
「ご、ごめん……俺も、声を荒らげ過ぎた……」
『んーん、良いんだよ。配慮が足りなかったね』
俺と八咫烏がペコペコし合っていると、頭の整理をしたのか、綾華が冷静な口振りで話し出す。
「一つ、聞いても良いかしら?」
『よかろう。妾に申してみよ』
綾華に返答したのは狐。
金色の毛並みはモフモフだが、目がキリッとしている。
気品溢れる美人さんって感じだ。
そんな狐に対して、綾華は話を続ける。
「本当はココに来る前に、下に戻されるって聞いていたのだけれど、何で私達はココに辿り着けたのかしら?」
綾華グッジョブ!
それ、俺も気になってたんだよ!
俺が内心で綾華にサムズアップしていると、狐が高笑いし始めた。
『オーホッホッホ! 何を申すかと思えば、そのような戯言を申すか! 気に入ったぞ! 良いかい小童、この神社は結界で守られているのじゃ。その結界は一定以上の妖力を持たない者を弾き飛ばす。故に、一般人はココまで辿り着くことが出来ないのじゃ』
ふむふむ、なるほど。
ココは結界で守られていて、それは、妖力を一定以上持たない者を弾き飛ばす。
だからこそ、一般人は頂上まで辿り着けない、と。
はいはいはい、分かります、分かりました。
ん…………? それってつまりさ、俺達に妖力があるってことじゃね!?
「も、も、も、もしかして……俺達には、その、妖力とか言う力があるってこと?」
『その通りじゃ』
頭が混乱してショート寸前な俺達は、間抜けた顔を見合わせる。
「なぁ……お前らは信じる? これ」
「なんて言うかアレだよね。信じるとか信じないとか言うレベルの話じゃないよね」
「「「…………確かに」」」
俺達が頭の悪そうな顔を浮かべていると、畳み掛けるように鹿が口を開く。
『貴方達には先天的か後天的は分かりませんが、常人以上の妖力と才能があります。ですので貴方達には、我等が神の御心を伝えます。これより貴方達には……』
『【我・妾・ワタクシ・ボク】の力を使って、日本全国に潜む悪霊共を退治して貰います』
「「「「はあああああああ????!!!!」」」」
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