世界を救えと言われたOLはケモノになって勇者パーティーの聖職者を担う

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私は知らないニャ☆

第二十六話 強敵

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雲より少し下、それほど高く伸びた蓮の葉っぽいオブジェクト。その上には巨人が居た。大きな槍を構えてまるでこちらが来るのを知っていたかのような。

「サナサナの言ってた強敵ですか、みなさん気を引き締めていきましょう」「はい!ティーベル!オールリアに付与を、カイナルとオールリアには私が回復魔術掛けるので惜しみなく突撃していってください!」「頼みました。私とミーヤで足元を崩します!」

即座に連携を組む。オールリアが大楯を持ち前方へ出陣。相手は四メートルを超える人型モンスター。交渉しないのは口がないのとサナサナの強敵という未来視による判断。

オールリアに巨人が槍をぶつける、もちろんびくともしない。どっしりと構えた大楯が欠けたのは意外だった。
その隙にバースドールとミーヤが土の魔術で地面を崩し、足を埋めた。
オールリアへの付与が終わったティーベルがカイナルへ付与をする。

「主よ、雷を!」「巫女サナサナの名において、クズオレノホロビトヌシを召喚します。さぁ導きをお与えください」

サナサナの召喚した大いなる存在が巨人を鎖で縛り上げ固定する。
動けない巨人に一方的な攻撃を仕掛ける。爆煙を掻い潜りカイナルが首へ斬撃を放つ。

「やりました、え?」「あっぶなー、私が居なかったら一回死んでたよ」「オールリア!二人を抱えて一旦退避しろ!」「おうよ!」

巨人の手刀が勇者を薙ぎ払いかけていた。が、ここは聖職者が使える魔術の一つ。死隷代行、自動回復と蘇生が瞬時に自分に掛けられ死に直面した対象と入れ替わる。

「体の半分が消し飛んだけど、カイナルが無事で良かったよ」「ヘイティア、すまない……」「気にしないでって、それよりアイツを早く倒すよ」

全身を固定したはずだが、巨人の力はそれを上回ったようだ。埋めたはずの足も地面から出ていた。この命の危機を感じるやり取りは懐かしさ感じる仮ダンジョンのゴーレム以来だ。

「ちょっ、勇者パーティー始まって以来のピンチじゃない?」「ミーヤが弱音を言うなんて珍しい」「全身の毛が逆立つような気迫なのよ。それにバースドールですら予期できなかった不意打ち」「アレは単純にオールリアの仕事を取ったヘイティアのせいな気がする……」

巨人はアレだけの猛攻を受けたのにも関わらず淡々と槍で地面を破壊していくだけ。我々のことなぞ虫けら程度に思っているのだろう。

「オールリア!大楯展開!ティーベルは補佐を」「ダブル大楯!はぁ、はぁ……魔術は慣れんと使うもんじゃないな」「これ疲れのポーションです」

鉄壁が得意とする力の一つ、護る物であればいくらでも所持可能と言う物。ただし出し入れに本人の魔力をかなり使うのでカバーが必要である。
大楯を地面に突き立てて前線を造り、ミーヤが魔術で付近の土台を固めていく。

「サナサナは引き続き巫女パワーで牽制するね」「私はカイナルに指示を出しながら援護します」

あのカードゲーム以来だろう、真面目な勇者パーティーを見るのは。勇者が斬っても斬れない頑丈さに、賢者の予測を上回る速度の攻撃、魔女と巫女の妨害魔術を簡単に看破する豪胆さ。

「大きな者を小さな者が倒す……カイナルに足りないのは力、それを補うのに必要なことは……よーし、これだ」「ヘイティアあんた、また変なことしようと模索してない?」「うん、でも今回は大丈夫なはず」

勇者が持つ武器は全て一流になる。また勇者もその武器をその道の達人以上に使い熟せる。
その定義はどこまで通用するのか、投擲武器の場合は手から離れたら効果を失うのか?路上の石は戦闘で武器に使われる事もあるが、果たして武器として括っても良いのか。

「まずはお試し価格。カイナル、投げナイフ使ってみて!目なら柔らかいはず」「おっと、刃物はあんまり投げない方がいいよ。でもありがとう」

さぁて、お手並み拝見。勇者の力に触れた投げナイフは輝きを放つ、聖水塗れだからではない。
オールリアが足場として宙に投げた大楯に乗り、アンダースロー!見事なストレート!ではなく見事な投擲。巨人もバカじゃない。目を閉じて防いでしまった。だが瞼に刺さったナイフのおかげで確信ができた。

「惜しかった、でも護ると言うことは弱点ということだ。それに奴は目を瞑りながらは攻撃を出さない」「カイナル、もう少し出力上げるわ!」

真ん中の方とはいえ、上空である。柵のない空間で視界無しに暴れれば落下する可能性もある、向こうはもとよりここの住人。理解はしているのだろう。

「目眩しか、闇よ……包み込め!これで暫くは動かないはず」「その隙に、ってヘイティアどうしたんだい?」「石とか色々投げてみて」「へ?」「ジャイアントキリングの代表は石だからね」

何言ってんだという顔は見慣れている。投擲器をカイナルへ渡す。石は巨人が槍でついた時に飛んできた破片を使えばいい。

「なるほど、勇者の力が投擲物に掛かるからと」「そう、回転すると外に外にって力が働くから。勇者の力と合わせれば、硬い皮膚にダメージを負わせることができるかなって」

横向きにぐるぐると回すカイナル。これはまたしても、アンダースロー!!
鋭角を描きながら、巨人の額に命中した。尖った石が額に突き刺さった。

「おぉービンゴ!」「なんであんたが嬉しそうなの」「さぁバンバンやっちゃいましょう!どうやらミーヤさんの魔術も解けたようですし」「勇者パーティー、反撃だね」

カイナルの右手をティーベルが握る。身体強化と効率の付与を施している。オールリアは大楯を両手に構え、右から左からくる攻撃を耐え凌ぐ。ミーヤが一歩も前進ませないように草木で邪魔をしていく。サナサナの追撃でさらに後退させていく。

「おぉー見事なヒットですね。危機の報いスリリングキャノンって名前とかどうですか?」「ちょっとヘイティア!回復怠らないで!」「はーい……(ステータスとかでみれる訳じゃないし。どのタイミングで掛けるとか難しいのに)」
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