世界を救えと言われたOLはケモノになって勇者パーティーの聖職者を担う

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私は知らないニャ☆

第二十九話 妖精と人間

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「490個も使ってようやくって40層の敵おかしくないですか?!!」「確かに今までとは段違いだ、統率力などでは説明がつかない。今後一般の冒険者がここまで降りることがあるとしたら……」「あやつの皮膚を調べてみたら魔力に応じて硬くなるようじゃ。巨人ともなれば魔力の一つや二つ自身で生成し放題、それに治癒力も高いようじゃ。倒すのに苦戦するのは仕方がなかろう。対策を何か考えてはみるがこの辺はバースドールと共同でやるしかなさそうじゃな」「そうですね、新しい兵器等そろそろ必要になってきますから」「うーん、死体の皮膚すら傷が付きにくいとは、この敵が大群で来られると困りますね」

それもフラグというのだよカイナル。ともあれ倒した巨人の素材はオートマティックの改造に使えそうだ。さっそくオールリアが試している、皮をはいで骨を粉にして心臓を動力炉に繋いで。

「解体現場って臭いから嫌いなんですよね、毛に臭いがつくし」「一番言わなそうなセリフを言うとは、偽物か?」「にゃんでそーなるんですか!」「魚の時とかねー?」「あれはその、とにかくちょっと休んできまーす!!」

バラバラにされた巨人の手やら足やら、皮。骨、肉。下処理の終わったものの中で改良に使わない材料がオートマティックへと運ばれてきた。

「せっかく離れてたのに、もしかしてこれでご飯作れとか言いませんよね?!」「安心しろ、肉は飛んでくる奴らを退かすのに使う。骨と皮はオートマティックの補強用だ」「まぁ補強と言ってもオートマティック内は別の場所にあるから問題はないんじゃがな!」

外で火を囲みながら食事を取る。安全性のため、勇者、付与師、聖職者が先に食べてから偵察ということになった。残りのメンバーはオートマティックの中で仮眠をとっている。
ダンジョンでは敵の自然発生が確認される為、あの巨人がいつここに現れてもおかしくはないのだ。振り分けの基準は近距離戦特化と遠距離防衛特化。

「うん、おいしい。梅干しは元気が出る味だ」「私は食べないけど。ヘイティアこれってどう作るの?」「梅とシソないと作れないから難しいかも。塩もかなり使うから」

カイナルはとても気に入ったようで毎回のように欲しがる。落ち着いたら作るのもありだけどダンジョンに行って帰ってを繰り返す生活の中では難しいだろう。

「うふふ、私ちょっと席外しまーす」「気を付けなさいよ。あんたのために範囲型の転移石六個作ったんだから」「僕が護衛でついていこうかい?」「女子の席を外す、その意味をカイナルはティーベルと語ってなさい!め!」

正直あの二人がどんな会話をするのか気になる、カイナルもティーベルも私を挟んでの会話が多いから。ティーベルは警戒の為、人間大だ。鎧は着たまんまだが。

「ティーベルは楽しくやれている?毎回気を張ってみんなに適切な付与を掛けるのは結構大変だと思うんだ」「へ?!いや私なんて戦闘に参加しないし、ずっと鎧だし、色々迷惑を掛けて」「やっぱり気に病んでいたんだね。もう鎧は外しても大丈夫だよ、ティーベルが居るだけで戦闘が有利になる。それに全力で守るから素の君で居てもらいたいな」「えっ?!そのそりゅは……やっぱカイナルの前では鎧付けたい!外して戦うのは無理ぃぃ!!」

鎧のまま頭を抱えて動かないティーベル。カイナルにいたってはオロオロとして声をかけて良いのかダメなのか迷っている。いつもの勇気はここで生かすべきだ少年。しっかりしてもらいたいものだが仕方ない、ここは私が手を貸そう。

「ふぅーすっきりした。そんな暗い雰囲気だしてどうしたの二人とも」「へ、ヘイティア、ちょっと来なさい!話があるんだわ」「え、いやえ?今ですか」「火の番なら僕一人で出来るから……大丈夫だよ」

明らかに落ち込むカイナルを一人にし、ティーベルが私を引き摺る。こっちもこっちで伝説の妖精が人間界に出る方が緊張するだろと言いたい。

「やっぱり無理だよぉヘイティア」「まぁまぁ、でもあの反応でわかると思うけどカイナルは気にしないよ。なんなら謝ってくるかもよ」「なら聖水をずっと掛けて!あからさまじゃない!顔が赤いまんまって!」「えぇー。あっ名案思いついたよ。ここに鎧を置いていきなさい。逃げ場を無くせば良い、それに恥じらう乙女に落ちない男はいないよ」「でも……もし私を見てうわぁとかなったらどうするの、耳もエルフのほうが長くてきれいだし?」

「バカね、カイナルはティーベルが種族バレ覚悟で飛び出た事を気に掛けていたんですよ?」「え、ならなんで鎧の下が見たいなんて」「誤解を解いたから?だってカイナル以外は知ってたじゃない」「そ、それじゃカイナルは妖精としてではなく私の事単体で知りたがっているってこと?!」「そうそう。頑張ってね応援してるよ」

恥じらうティーベルを連れて戻ってきた。一人になって落ち着いたのだろう、ランタンを近くの木箱においてカイナルはまったりと本を読んでいた。

「やほー戻ってきたよ。ほらティーベル、私に隠れてないで?それに身長的に飛び出てるよ」「ど、どう!カイナル!これが私よ」「(なんか色々間違った気がするけど、まーいっか)」「うん、やっぱり鎧がない方がティーベルは輝くよ」

炎でよく見えないがカイナルも顔を赤くしている様子だった。本を落として見つめ合う二人。何も語りはないがそれぞれ思うところを解消できたのだろう。

「こほん。とりあえず交代まで時間があるのでイチャイチャするなら後でしてください」「しませんよ!」「しないですよ」

火番の間に、食事と工作を続ける。聖職者系ユニークスキルの一つ。―信心深きは主の恵あれ―これにより日々の信仰値(可視化されていない)に応じて様々な恩恵を得れるという。文献や先代達のまとめた中にあったので正確せいすら危ういが、このスキルを認識して、魔力を使う意識をすると色々出せるというのだ。

「信仰値なんてマックスでしょ、生まれてこの方ずっと愛してる包丁とかなんとかかんとか。それで何を出すか、何を出せるか……いやもう出すしかないでしょ!あれさえあれば基本何でも切れる」

イメージをしてみる。前世で使っていた名匠の包丁……形、色、触り心地、切やすさ……手元に手繰り寄せるイメージをする。

「来た、もはや小さい日本刀とも言える私の愛用包丁!紙をも切れる芸獣的に美しいフォルム!」

次は塩をイメージ……茶色の紙の中に入った塩……1キロくらい、よく触っていたあの袋と味をイメージ……

「うーん?でない、ずっと愛用するといっても物体自体は変化しているから?。そうなると次にイメージするものは、信仰するレベルで使っていた物品は……本」

出なかった。紙一枚すら出なかった。これで判明した事がある。私の信仰値が消費される、だけど私の信仰値はアホほど低かったようだ。薄利多売のような信仰だったから?それとも普通にだめだった?

「泣きそう、腐っても聖職者だし色んな物に祈ったりしてたのに?!」

いや、きっと名匠の作った包丁がとっても信仰値をつかった。そうに違いない。値段だって他のより10万も高かったんだから、信仰値10万持ってかれたんだ!と割り切るしかない。

「交代の時オールリアに見てもらおっと。この世界ではまだ見た事がない刃文!今使ってる剣の先とやらでさえ辿り着けない境地!」

早速聖水につけていたゾンビ肉もといい以下略を取り出す。柔らかくほぐれた肉の繊維がモーセの水割りのように分かれていく。本物だ。確かに向こうの世界のものが出せたら色々アウトだろうから贋作でしょなんて発想だったが、この切れ味を疑うことは出来ない。

結局交代時間ギリギリまで手持ちにある限りの食材を調理し切っていた。

「オールリア、これ鑑定頼める?」「ふむ、包丁とな。問題はないが、調理ができなくなるぞ?」「全部作り切ったので大丈夫です。朝ごはんは終わったので昼ごはん分とあと、これはおやつです」

昼まで睡眠をとり、夕方までに前進。夜はまたどこかで交代制をする事になっている。
カイナルは壁にもたれ掛かるように眠りに付き、ティーベルも冷蔵庫の上で眠っている。
私はというと眠気はない。変な時間に蘇生したせいか活性化を通り越して最強ハイ状態である。
例えるなら二日寝ずに作業をこなした後に9%をバカ呑みしたような、そんな脳状態なのだ。
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