石ころ令嬢

あきづきみなと

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「スターシャ、お茶会はステファニーだけで良いだろう」
「まあ、何を仰いますの、旦那様」
当主であるエルロッド子爵の発言に、聞き捨てならないとばかりに声をあげるのはその妻だ。
「確かにあの子はステファニーと違って、気の利いたお喋りも出来ませんし可愛げもないですが、同じ姉妹ですのよ?同じように社交を楽しむ権利がありますわ」
本人がそんな権利等放棄したいと思っているにも関わらず。
父や長兄がステイシアに求めるのはにこやかな笑顔を振りまいて何処ぞの令息を射止めることではなく、魔法研究の中で得た知見や技術に基づいて売り物になる品や手法を確立させることだ。ステイシア自身それは分かっているし、自分に向いているとも思う。
しかし母は、彼女も姉同様社交界で立ち回り良い結婚相手を捕まえて嫁ぐことこそ唯一の幸福と考えている。その母の価値観を否定はしないが、ステイシアと相容れないのは確かだ。正直放っておいてほしい。
一つには、既にステファニーの婚約が整い彼女に目を掛ける必要が減ったせいもあるのだろう。
これまで母は、ステファニーに掛かりっきりであれこれと世話を焼き、実に熱心な貴族夫人としての責務を果たしていた。ただしそれは快活で可愛らしく自慢の種である上の娘に対してのみ。次女のステイシアに対しては可愛げのない出来損ないでとても外には出せないと公言してはばからなかったのだ。ステイシア自身、はっきりそう言われている。
『ステファニーは宝石のような、私の宝物よ』『ステイシア?……あの子はそうね、そこらの石ころみたいなものかしら』とか。
先頃ステファニーが子爵家の領地近くに領地を持つ伯爵家の嫡男と婚約を結び、落ち着くと。今まで『表に出せない子』呼ばわりしていたもう一人の娘もしかるべき嫁ぎ先を見つけねばならないと、義務感を覚えたらしい。
実際のところその辺りは既に当人と父で話はついていたのだが、母は殆ど躍起になって「ステファニーのような良縁は望めなくても、嫁ぎ先を」と主張している。
実際社交的で容姿も優れたステファニーはあちこちから声が掛かったのだが、最終的には父が持ち込んだ伯爵家との婚約に落ち着いた。色々とやり取りはあったらしいが、ステイシアには知らされていない。自分は知る必要はない、というよりその辺りの事情は知らせたくないのだろう。
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