石ころ令嬢

あきづきみなと

文字の大きさ
上 下
12 / 31

12

しおりを挟む
他国の関係者も招いて行う学園の魔法科発表会は規模も大きく学園内での期待値も高い。学生の中にはここで見出だされて出世街道に乗る者もいるし、招かれる側もそれを目論んで能力の高い若者を探しに来る。
今回の目玉は何と言ってもこの天才少年で、彼の発表目当てに来た者が一定数はいたはずだ。
「そ、それがおまえに何の関係がある!」
「……私も魔法科の末席を汚す者ですので。参加は出来ませんでしたが、準備は手伝わせていただいたのです」
そうした努力を無に帰されたのでは、怒ってもいいのではないかと思うのだが。
「まあ、お父様もお兄様も!皆さん私のことを気遣って励ましてくださった、素敵な『お友達』なのよ!?」
そこへ普段以上に高い声を張り上げてステファニーが割り込んできた。芝居がかった身振り手振りでまるで酔っ払っているような仕草に、兄がぼそりと呟き、ステイシアは吹き出すのを堪えるのが精一杯。
「自分に酔ってるな」
「っ、兄様」
それを見咎めたか、ステファニーが一際大声を張り上げる。
「ステイシア、貴女もあまりに失礼が過ぎるわ!ウラジール様は天才魔法使いでしょう、貴女なんか足下にも及ばなくてよ!」
「ええ、それは承知しております」
だからといって他の学生達の期待を一身に負っていたはずの『天才』がその大舞台をすっぽかしていいはずが無い。そもそもステイシアも状況を確認しただけでまだウラジールを責めたわけでも何でもないのだ。その前に声を荒げる辺り、拙い行いだったくらいの自覚はあるのだろう。
エドガー王子はともかく、後の青年達はいずれもあまり褒められた行為ではないくらいの認識はあるらしい。その自覚があるのなら、反省して次回以降やらかさないようにして欲しいと思うのは当然ではないだろうか。



「もちろん大変な騒ぎでしたわ」
溜め息混じりに嘆息するのは魔法科の女傑、『魔女』リリアンナだ。魔法をとりわけ巧みに扱う女性にのみ許される尊称、それに恥じぬ彼女は魔法科教授を父に持ち母もまた『魔女』だったという言わば純血の魔法使い。
他者の組んだ理論を展開して使いやすいものにしたり、省魔力化を施して高価な魔道具をもっと手軽に使えるものに改良するくらいが精一杯のステイシアとは雲泥の差がある。もちろんリリアンナとは別に親しくしていた訳でもない、だが姉の評判を確認する意味もあって魔法科の友人達に話を聞いていたところ、リリアンナが飛び込んできたのだ。
昨夜、屋敷前で派手に大騒ぎを演じたステファニーはじめ彼女の『お友達』は、改めて話を集めてみればわざわざ集めなくても良いくらいに色々とやらかしていたらしい。
その中でウラジールは元々他国の孤児だった。しかしその能力を見込んだ学園の教授が彼を引き取り、教育してゆくゆくは娘婿に、と考えていたそうだ。それがリリアンナの父であり、彼女とウラジールも婚約関係にあると見られている。
とは言えここまでやらかした彼に、当の教授も立場を無くして怒り心頭だとか。リリアンナの方も何度注意しても堪えないウラジールに既に愛想を尽かしているらしい。先程から頻りに愚痴っている。
「あの子も、周囲が見えないものだから……本当、手が掛かるったら」
ただし話を聞いている限りでは、色恋沙汰というより面倒見のいい母親のようだ。
しおりを挟む