【完結】悪役令嬢ライザと悪役令息の婚約者

第2章事前対策

悪役令息はまだ悪役では無いようです2

「そう言えば、叔父伯爵様は今どうされているのですか？」

「極秘裏に身柄を拘束されているよ。
今詳しい事を調査している段階みたい。隣国とのやりとりもしなくちゃいけないみたいだ。」


（そうか、他国の貴族が貴族を殺すって、これ一歩間違えば戦争になる案件だわ。それにしても。極秘なのに私に言ってるのは良いのかしら…良いのか、結構知ってしまったし。今更すぎか。）

　それにしても、何て恐ろしい事件に関わってしまったのだろうか。至る所に地雷臭がする…。

「ライザの言ってるとおりになったらさ、これからどう言う景色が見れるんだろうねー…」


  ルイスはギべオンの髪をなびかせながら、隣国の地がある方角を見て、目を細めた。その姿が、ゾッとする程に美しくて。

　先程ライザが言った事柄が起きる事を、何処かで楽しみにしているかのような口振りにも受け取れた。

　まるで、その先に世界の崩壊すらも望んで待っているかのように。作り物のように綺麗な顔の口元が笑みを浮かべた。

（い。いや。そんな、楽しみにしてそうだなんて。失礼だよね。ただ風が気持ち良いって笑んだだけよね？）

「…。あの。ルイス様、先程言った事ですが。多分外れます。」

「そうなの？何故？」
　

「放って置いたらどうなるか分かっていたら、人はそれを回避する努力が出来るので。
もし先程申し上げたとおりになってしまったら、隣国と貿易をしているウェルネ公爵家の領民や、金融不安の煽りを当国とて全体的に受ける可能性がありますから。」


　チラッとルイスの様子を伺うと、キョトンとした顔をしていて何を考えているのか読み取れなかった。

「君が、何とかするの？」

「いえまさか。私のお父様は優秀な方ですのよ？きっと今の叔父伯爵会社の話をしたら放って置かないわ！」



（そう、私は悪くないです。決して私が、ルイス様のお楽しみを取り上げようとしている訳じゃないのですよ。

悪役令嬢ライザの我儘を増長させ、自らも最後不正に手を染め爵位剥奪される父は、とにかく娘の〝お願い〟は何でも聞いてくれる優秀・・なお父さんなんです。）


　誤魔化す為に、胸元に片手で握り拳を作って、真実を訴えかけるように目を逸らさずにルイスを見つめるライザの内心は、とてつも無くドキドキしていた。※トキメキのドキドキではない。



「ふぅん…」


  口の両端がキュッと上がり、心なしか期待を滲ませた視線を受ける。
　先程、経済危機が訪れるかも知れなかった隣国に向けて浮かべていた笑みを、私に向けている。

　まるで、新しい玩具を見つけて、楽しんでいるみたいに。
　

（…ーやっぱりこの人は、悪役令息になる人なんだ。）


　先程まで、私の話を聞いて純粋に驚いていた少年と、内側に燻っている得体の知れない感情があるのか、不思議で妖艶な表情を作る少年が入り混じる。
　悪役令息12歳ある日の日常を、垣間見た気がした。

　私は、これから、どうなってしまうのだろうか？

　ふとそんな疑問が過った。