11 / 78
第2章事前対策
破滅シミュレーションゲーム?
しおりを挟む昨日は悪役令息を匂わせる締めとなった、とんだミステリー小説みたいな終わり方だ。ただ笑みを浮かべている少年を見ただけと言えばそうだけど。これから嫌な予感しかしない。
ルイスとの2度目の出会いから一夜が開けた今日。
もう関わらない事を再度胸に誓って、ライザは朝食を食べに食卓へと向かった。
戸を開けると、父と母が居て、兄はどうやら朝早くに出かけたようだった。
「おはようライザ、今日は朝食の後、おまえに大事な話があるんだ。」
ーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
話があると言われて現在父の書斎にきた。
(丁度良かった。私も話があったし。)
「それで、お父様話とは…。」
「うむ。父さんもな、おまえのように美しく聡明で賢い娘を何処にもやりたくはないんだ。だが、いつか、父さんの手を離れる時が…っく。想像はしたくはないがな…」
「ま、まさか…っ」
(そろそろ来ると思っていた皇太子との縁談話がついに来てしまったのね…。12歳に婚約話したとゲームで言っていたから、覚悟はしていたけれど…)
まだ正当に断る理由が思い浮かんでいない。
ライザは婚約者がおらず、皇太子と同じ年頃。しかも自分で言うのも何だが、その美貌は後に国の3代美女とまで言われる程に将来有望な見た目。そしてライザは我儘だけどそのぶん勤勉で頭も良かった。本当に自分で言うのも何だけど、王妃に申し分ない。王家が指名するのはわかるけど。
だからこそ、隙がなくて近寄りがたく、後々皇太子に嫌われるらしいんだよね。
(記憶が戻るのがもっと早ければ…。せめてあと1年あれば…婚約者を探して別の婚約を取り付けるよう行動出来たのに…そしたら断れたのに。)
「大変有難い縁談話がおまえに来ている。」
父の額から汗が滲んでいる。数ある令嬢の中から王家直々に打診が来るのはかなり栄誉な事だ。
伯爵家以上の令嬢の中から、厳選に厳選を重ねて選ばれたらしいから、汗の一つも流すだろう。
ゴクリと喉をならして、父の取り出した見合い写真が、目の前の机に置かれるのをじっと眺めていた。
「…ん?何で2つあるんですか?」
「有難い縁談話が2つ来ている。1つは王家。もう1つはアウステル公爵からだ。」
「待ってください、何でアウステル公爵も婚約者候補に?」
「おまえに惚れたんだそうだ。」
(…そう言えば先日そんな事を言ってた様な。)
なんだっけ。このパターンのルートあったかな。
いやなかった。
「何でアウステル公爵が王家と迷うくらいに良いと?」
「いやぁ。アウステル公爵家って言えば国で1番の資産家だろう?既に本人が公爵になっているし。他にご兄弟もいないから…正直な話、暫くお世継ぎ出来なくても、おまえの立場は安泰じゃないか。
皇太子はほら。光栄な話ではあるんだが、優秀な第2王子がいらっしゃるから…な?おまえが苦労するかもなぁと。そう考えると迷うと言うか…。」
(成る程。アウステル公爵家であれば、子供が公爵やっているから、あわよくば婚約者の父である自分がアウステル公爵家のお金を管理出来るかもとかも考えてそうね。
小狡い事は考えられるのに何故あの辻褄の合わないめちゃくちゃな自領の内部資料に気付かないのかしら…不思議だわ。
まぁ、私を愛してくれているのは本当だから憎めないのだけど。)
※ウェルネ公爵家の家訓。重要書類を置いてる執務室だろうが何だろうがライザはお家の中全て出入り自由。
子供は親が思うよりも、いつの間にか色々見抜く様になっているものである。
「どちらもお断りして良いですか?」
「ライザ、それは駄目なんだ。そうしてあげたいのは山々なんだがなぁ…。アウステル公爵と婚約すると言う名目でも無い限り王家からの話は断れないし、逆もまた然りなのだよ。」
「どちらかと言われましても…。」
1.ゲームの皇太子ルート
ハッピーエンド=婚約破棄・国外追放
バッドエンド=婚約破棄・処刑
2.ゲームのルイスルート
ハッピーエンド=ゲーム中盤で娼館行き
バッドエンド=ルイス自らに惨殺される
因みに1も2も、公爵家は爵位剥奪されて追放されてる。
(……何これ、悪役令嬢がどう破滅するか自ら選ぶゲームなんだっけ?)
21
あなたにおすすめの小説
【完結】私ですか?ただの令嬢です。
凛 伊緒
恋愛
死んで転生したら、大好きな乙女ゲーの世界の悪役令嬢だった!?
バッドエンドだらけの悪役令嬢。
しかし、
「悪さをしなければ、最悪な結末は回避出来るのでは!?」
そう考え、ただの令嬢として生きていくことを決意する。
運命を変えたい主人公の、バッドエンド回避の物語!
※完結済です。
※作者がシステムに不慣れかつ創作初心者な時に書いたものなので、温かく見守っていだければ幸いです……(。_。///)
※ご感想・ご指摘につきましては、近況ボードをお読みくださいませ。
《皆様のご愛読に、心からの感謝を申し上げますm(*_ _)m》
転生したら悪役令嬢だった婚約者様の溺愛に気づいたようですが、実は私も無関心でした
ハリネズミの肉球
恋愛
気づけば私は、“悪役令嬢”として断罪寸前――しかも、乙女ゲームのクライマックス目前!?
容赦ないヒロインと取り巻きたちに追いつめられ、開き直った私はこう言い放った。
「……まぁ、別に婚約者様にも未練ないし?」
ところが。
ずっと私に冷たかった“婚約者様”こと第一王子アレクシスが、まさかの豹変。
無関心だったはずの彼が、なぜか私にだけやたらと優しい。甘い。距離が近い……って、え、なにこれ、溺愛モード突入!?今さらどういうつもり!?
でも、よく考えたら――
私だって最初からアレクシスに興味なんてなかったんですけど?(ほんとに)
お互いに「どうでもいい」と思っていたはずの関係が、“転生”という非常識な出来事をきっかけに、静かに、でも確実に動き始める。
これは、すれ違いと誤解の果てに生まれる、ちょっとズレたふたりの再恋(?)物語。
じれじれで不器用な“無自覚すれ違いラブ”、ここに開幕――!
本作は、アルファポリス様、小説家になろう様、カクヨム様にて掲載させていただいております。
アイデア提供者:ゆう(YuFidi)
URL:https://note.com/yufidi88/n/n8caa44812464
【完結】名前もない悪役令嬢の従姉妹は、愛されエキストラでした
犬野きらり
恋愛
アーシャ・ドミルトンは、引越してきた屋敷の中で、初めて紹介された従姉妹の言動に思わず呟く『悪役令嬢みたい』と。
思い出したこの世界は、最終回まで私自身がアシスタントの1人として仕事をしていた漫画だった。自分自身の名前には全く覚えが無い。でも悪役令嬢の周りの人間は消えていく…はず。日に日に忘れる記憶を暗記して、物語のストーリー通りに進むのかと思いきや何故かちょこちょこと私、運良く!?偶然!?現場に居合わす。
何故、私いるのかしら?従姉妹ってだけなんだけど!悪役令嬢の取り巻きには絶対になりません。出来れば関わりたくはないけど、未来を知っているとついつい手を出して、余計なお喋りもしてしまう。気づけば私の周りは、主要キャラばかりになっているかも。何か変?は、私が変えてしまったストーリーだけど…
悪役令嬢に転生したので地味令嬢に変装したら、婚約者が離れてくれないのですが。
槙村まき
恋愛
スマホ向け乙女ゲーム『時戻りの少女~ささやかな日々をあなたと共に~』の悪役令嬢、リシェリア・オゼリエに転生した主人公は、処刑される未来を変えるために地味に地味で地味な令嬢に変装して生きていくことを決意した。
それなのに学園に入学しても婚約者である王太子ルーカスは付きまとってくるし、ゲームのヒロインからはなぜか「私の代わりにヒロインになって!」とお願いされるし……。
挙句の果てには、ある日隠れていた図書室で、ルーカスに唇を奪われてしまう。
そんな感じで悪役令嬢がヤンデレ気味な王子から逃げようとしながらも、ヒロインと共に攻略対象者たちを助ける? 話になるはず……!
第二章以降は、11時と23時に更新予定です。
他サイトにも掲載しています。
よろしくお願いします。
25.4.25 HOTランキング(女性向け)四位、ありがとうございます!
【完結】【35万pt感謝】転生したらお飾りにもならない王妃のようなので自由にやらせていただきます
宇水涼麻
恋愛
王妃レイジーナは出産を期に入れ替わった。現世の知識と前世の記憶を持ったレイジーナは王子を産む道具である現状の脱却に奮闘する。
さらには息子に殺される運命から逃れられるのか。
中世ヨーロッパ風異世界転生。
公爵令嬢は、どう考えても悪役の器じゃないようです。
三歩ミチ
恋愛
*本編は完結しました*
公爵令嬢のキャサリンは、婚約者であるベイル王子から、婚約破棄を言い渡された。その瞬間、「この世界はゲームだ」という認識が流れ込んでくる。そして私は「悪役」らしい。ところがどう考えても悪役らしいことはしていないし、そんなことができる器じゃない。
どうやら破滅は回避したし、ゲームのストーリーも終わっちゃったようだから、あとはまわりのみんなを幸せにしたい!……そこへ攻略対象達や、不遇なヒロインも絡んでくる始末。博愛主義の「悪役令嬢」が奮闘します。
※小説家になろう様で連載しています。バックアップを兼ねて、こちらでも投稿しています。
※以前打ち切ったものを、初めから改稿し、完結させました。73以降、展開が大きく変わっています。
転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎
水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。
もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。
振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!!
え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!?
でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!?
と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう!
前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい!
だからこっちに熱い眼差しを送らないで!
答えられないんです!
これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。
または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。
小説家になろうでも投稿してます。
こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。
【完結】その令嬢は号泣しただけ~泣き虫令嬢に悪役は無理でした~
春風由実
恋愛
お城の庭園で大泣きしてしまった十二歳の私。
かつての記憶を取り戻し、自分が物語の序盤で早々に退場する悪しき公爵令嬢であることを思い出します。
私は目立たず密やかに穏やかに、そして出来るだけ長く生きたいのです。
それにこんなに泣き虫だから、王太子殿下の婚約者だなんて重たい役目は無理、無理、無理。
だから早々に逃げ出そうと決めていたのに。
どうして目の前にこの方が座っているのでしょうか?
※本編十七話、番外編四話の短いお話です。
※こちらはさっと完結します。(2022.11.8完結)
※カクヨムにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる