【完結】悪役令嬢ライザと悪役令息の婚約者

マロン株式

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第2章事前対策

皇太子とお茶会

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 父が王家に何と言うかは一応カンペを渡しておいた。と言っても、婚約を前提にしないお茶会など失礼には変わらないだろうが。皇太子を選ばなかったら大変失礼に値するのはわかるけれど、良く考えてみて欲しい。

 別にそれで、追放も処刑もされない。元々父の無能は向こうも見抜いているだろうし、そこに不興を追加しようがどうしようが、焼け石になんとやらだ。

 ならば慎重にある選択肢の中から、婚約相手を選びたいと思う。

 選ばない時はアウステル公爵の婚約を選んだと言う事だから変に王家を嫌っている等々の誤解をされなければそれで良いのだ。

 ー…さて。そう言う訳で。


 今日此処、王城の庭園にて今作品ゲーム史上、最低最悪破滅フラグエントリーNo.2 皇太子殿下との楽しいお茶会が現在開かれようとしていた。

 皇太子プロフィールは次の通り。トルマリン皇国、皇太子
ベルン・クレインハルト現在私と同い年の12歳 外見は橙色の瞳に菫色の長い髪を横で緩く結えている。
 芸術や音楽には詳しいが勉強は普段から可もなく不可もなくという評価をされている。

  今の状況は互いに挨拶を済ませて、〝後は若い2人だけで〟と親が何処かに行った所である。
  2人にされて先に話題を切り出してきたのは皇太子だった。

「貴方、私と婚約者になりたいの?」

 如何やらアウステル公爵との話は聞いていないようだ。


(ゲームのベルン皇太子曰く、皇太子本人にとってこの婚約は嫌だったらしいけど。この人もやはりそんな感じか。)

 アウステル公爵がゲームと違ったので、皇太子も違うかと思ったけど、そうでも無さ…

「あのねぇ、期待していたら悪いんだけど。私女に興味ないから。」

 おっと、やっぱり皇太子もなんか違う、というか、今乙女ゲームに登場する皇太子として失格の爆弾落としていった。

 同時に後継者問題発生という特約付きの爆弾だ。王家の秘密に介入してしまうデリケートゾーンだ。聞かなかった事にしたい。

「…はぁ。」

「まぁ?他の縁談避けに一生涯性交渉しないパートナーとしてなら見た目も不愉快では無いし、お友達になってあげても宜しいわよ。影で男妾をつくっても良いし、贅沢も…まぁ国を傾けない程度にならして良いわ。考え様によっては最有力物件ね。でも私の美貌の横に生涯並び立つなんて、可哀想だけれどねぇ。やっぱでも嫌よね。こうして話してみたら女と結婚するなんて嫌よね、だって愛のない結婚て~…ペラペラ。」

(……話が長い。…おまえは女子か。)

 一回口を開いたかと思ったらその後も止まらない皇太子の無駄話をライザはニコニコしながら聞いていた。しかし話の後半からは頭に入り切らなかった。要するに聞き流した。

「……。」


10分後



「で、酷いの。その時ね。父上ったらね。〝結婚したらそのうち情も沸くから取り敢えず婚約しておけ〟なぁんて言うのよ?これだから仕事しか頭にない頑固親父は嫌よねぇ。私の気持ち何か1つも聞いてないのよぉ。」


「……。」


更に10分後


「それでね、奴らは弟と比べてくるわけ!こんなのが皇太子なんて不安だわとか。私だって皇太子なんかやぁよぉ。好きな人と結婚したいのだもの。

やっぱりこの世は身分より、お金より、愛が大事だと思うの。
貴方はどう思う?」

「へぁ?」

 笑顔を作ったまま頭が睡眠状態に入っていたライザは、ふいに話をふられて変な声をあげた。

「だから、身分やお金より、愛が大事だと思わない?お金で愛は買えないの。だから私は愛する人とでないとやっぱり結婚したくないのよ。貴方もそうでしょう?」





(前世銀行の志望理由に「お金がこの世で1番好きなんです」って面接で答えた人にふる話題としては厳しいわね…。)

「…ええ全くもってその通り…」

 適当に同調しておこうとしたその時、皇太子の雰囲気がガラリと変わった。


「私、女の嘘はわかっちゃうのよ?

心は同じ乙女ですからね。不愉快だからやめてくださる?先程から浮かべているその笑顔と生返事。」



 急に真顔になり、瞳の奥に鋭さを垣間見させたベルン皇太子に、ライザは目を細めた。
 

(先程から道化を演じてはいたけれど、トドメにこの一撃ね。この皇太子…案外曲者かもね。)

 皇太子に見据えられながら、目の前に置かれている冷め切った紅茶を飲む為、ティーカップの持ち手に手を伸ばして、ライザは喉を潤し、一息ついた後に口を開いた。


「ー…わかりました。皇太子殿下のご命令ですので、本音を語らせていただきます。」

 静かに告げると、皇太子はピクリと反応して品定めをする様に此方へと視線をよこす。

「私は愛より、身分と金が大事だと考えております。ですから、皇太子殿下とは価値観が合わないかもしれません。」


「ふっ。私の前で偽りのゴマスリをしないその姿勢は、ある意味信頼出来るけれど。そんな冷たい人間は側に置きたくないわね。貴方、性悪女と言われても傷付かないタチでしょう?
そう言う女、嫌いなの私。」

「このお茶会は婚約を前提としないもの。ですので、価値観の不一致が婚約成立前に分かって良かったです。」

「…婚約を前提としていない?貴方の言う愛より金と身分が欲しいと言うのなら、私は優良物件よ?いいの?逃して。」

(何処が優良物件?…例えば王妃になり、貴方がさっき言った様に男妾を設けたとして無事でいられるのは、貴方が黙認前提の話。貴方の気分次第では断罪される。…つまりはそう言う危うい物件よ。)


「…他者に。しかも自分を快く思わない人間に左右されてしまう身分や金は愛よりも価値の無いものですから。

人間社会において、時として金と身分は命より重いと私は考えているのです。

扱い次第で強みにも弱みにもなる、身分と金は自ら支配出来てこそ価値ある物になる。
逆に身分と金に振り回されるなど、愚かな選択を誰が好き好んで致しましょうか?

ですから、皇太子殿下に命を握られた状態で囲われるなど。没落した方がましですわ。」


 パサリと扇子を開いて口元を隠し、ニッコリ優雅に笑むと、皇太子は眉を潜めて丸い目を瞬かせた。

「……。」

「では、このお話は無かったと言う事で。私これで失礼を…「お待ちなさい。」

 後々ゲームの惨事になるのなら、今嫌われて倦厭されている方がましなので包み隠さずお話をした。この皇太子の様子から言って、無理にゴマスリをした所でずっと心の中に私への不満が溜まったであろうからこれが正解だろう。

 必要以上に欲張らなくとも、公爵家なのだから充分贅沢に生きてゆける。※父の無能の手から守れば。
 
  …と思ってある程度不興を買った所で退散しようと思ったけれど。


「貴方を私のお友達に任命してあげるわ!勿論…吟味の結果次第では婚約も許してあげるわよ?」

(…何故? ていうか。だから、貴方との婚約は嫌だって。)

 この日私は、皇太子命令によりお茶友達(?)が1人出来た。

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