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第3章学園入学
狂気の矛先
しおりを挟む「ライザ、わたしはいつか、〝君の心に近寄り触れてみたいだけだ〟と言った事覚えてるかな?」※[悪役令息から見たライザへの執着心《ルイスside》とその前頁]参照
少し間を置いた後、逃がさないよう、振り返らないライザの背中を覆い、戸に片膝をついてルイスは言った。
「言ったわね。…どういう意味かはわからないけれど、本音の気持ちを口にして欲しいって意味よね?」
「うん、そうだよ。あの時からずっとわたしの願いは同じだよ。」
「私はいつだってルイスには本音を言っていたわ。
愛よりもお金が好き。私はそう言う人間だからルイスと居ても違和感しかなくて場違いに思えてたわ。」
「まるで呪文みたいに良く言ってるよね。『愛よりもお金が好き』『人を愛する事は出来ない』まるで〝自分はそう言う冷たい人間だ〟と言い聞かせてるみたいに。
わたしは君がそう言う度に痛々しくて愛しくて仕方が無いけれど。」
「私が痛々しい?強がって嘘を言ってると言いたいの?」
思わず振り向いて、その瞳に怒りと動揺を滲ませながら睨みつけるライザの頬に、いつもの様に涼やかな表情をしたままルイスは左手を添える。
「ー…いつか、君の心に触れてからで良いと思っていたけれど。何故かそうも言ってる時間は無いみたいだから。」
近付いてくるカイヤナイトの輝きが揺らめく瞳から視線を背けられずにいると、柔らかなものが唇にあたる感触がしてライザは目を見開いた。
唖然として薄く開いた口の隙間から、すかさずルイスの舌がぬるりと侵入してライザの舌に絡みつく。
抵抗しようとするライザの左手は、空いた手で顔の横にある戸板に縫い付けられ片手の力だけでは昔よりも逞しくなり、押し戻す事の出来ない身体。
ルイスの左手が添えられた小さな顎に、口の端から溢れ出た唾液がつたった。
「ん…んン…ッんちゅ…んん」
頭の中を惑わす様に痺れさせる快楽が、抵抗する右手をふるふると震えさせ力が入らない。まさに腰がくだけそうになっていると、いつの間にか腰に回されたルイスの片腕がライザを引き寄せて身体の隙間をなくす。
目前で目を閉じている綺麗な顔は現実のもので、そこに湧き出てくる感情に
、ライザは心の内にひめていた前世の記憶が過って恐怖を感じていた。
『言うじゃない。
でも、1番馬鹿で、愚か者は誰か。
あんたわかる?』
頭の中に、前世のライザにそう問いかけた人物の聞こえてくる。
(何で、今…あの人の声がー。)
ここに来てやっと、ルイスはライザから口を離して、目尻からボロボロと溢れ出している涙を、ペロりと舐めとってから言葉を紡いだ。
「こんなに泣かせようと思った訳じゃないんだけど……。
ライザの全てが欲しいから。今日は此処までにしておくね。
君がわたしとずっと居てくれるのなら、2度と触れなくても良いと思ってるんだよ。でもね、そうでないならー…」
その時浮かべたルイスの表情は妖艶で、ゾクリと背筋につたう悪寒は忘れていた彼の、悪夢の日後、図書館の外で会った時に感じた、狂気を滲ませるものだった。
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