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第3章学園入学
2人目の記憶保持者
しおりを挟む「……。」
第2王子ルートはともかく、ハッピーエンド?
私、思っていた事を口にしていたかしら?そんな訳がない。そんな無自覚はやらない。
口に出したのは『問題なのは第2王子ルート』って言葉だけ。
だけど、今この人はこの世界に無い単語を言っていた。たまたま、偶然聞き間違えた?
いいや、こんな偶然はあるわけない。
「…第2王子はもしかして、読心術をお持ちで?」
(そんな設定はゲームに無かったけれど。)
真面目にこちらが問いかけると、平静を装っている顔がプルプル震えはじめた。
「?あの…」
「ぷはっ。
此処はさ乙女ゲームの世界なんだろ?『私、心の声が漏れて!?』って言うの期待してたんだけど。成る程、悪役令嬢はそうなるんだ。」
楽しそうなお顔で笑っている第2王子に、ライザは直ぐ悟った。
「…と、言う事はまさか貴方は。」
「いやぁ。ご挨拶が遅くなったね。
君がなかなか1人にならないからさ。
僕は…いや、俺は恐らく君と同じだよ。前世、日本人だったからこの乙女ゲームを知っている。」
「私と同じ転生者…?」
「そうそう!でもまぁ、俺はこのゲームの細かなストーリーは知らないんだけどな!
妹がゲーム好きでキャラのポスターを家の壁に張ってたり、しかもなんと第2王子推し。
なんとかボイスCDとか聞いてたから、どんなキャクターかは取り敢えずわかるし多少単語もわかるけど。」
「ならば何故、私が悪役令嬢だとわかったの?」
「わかるよ、前世さぁ、俺の家狭くて。子供部屋って無かったんだ。妹がテレビずっと独占してゲームしてるとしょっちゅう悪役令嬢の高笑いが聞こえて君が現れたのは覚えてるわ。
あと、断罪シーンとかは見た。なんか知らないけど毎回スカッとしてたよ。ありがとな!」
「…どう致しまして。」
(ストーリー見ずに最後だけ見てスカッとする?もしかし無くてもこのお方、人の不幸が好きなタイプだわね。)
「だからストーリーはなんも知らない。
さっきの『問題なのは第2王子ルート』って台詞さ、君はもしかして詳しく知ってるんじゃないのか?」
「一応…多分貴方よりは。スマホアプリ版で一通りのキャラはやったわ。」(ドラマCD買う程ではないけど。)
「だと思ったんだよ!だってさ。悪役令嬢って初めから攻略キャラに嫌われてるはずじゃなかったかなぁってボンヤリとだけど思ってたんだ。
今のヒロインも攻略キャラと仲良くないしさ。君が暗躍してたわけだ。」
「……まぁ。そうなるのかしら。」
(私の暗躍は全て上手くいってないから、今の状況はたまたまなんだけどね。)
第2王子は余程、前世の記憶持ちと話せたのが嬉しかったのか、興奮気味に私の手を両手で握ってきた。
「良かった、やっぱストーリーちゃんと知っておきたいじゃん。俺はこの後どうなるの?ってめちゃくちゃ気になってたし。色々教えてくれよ。」
長年ゲームのストーリーが気になっていたのだろう。かなり食い気味で期待に満ちた目を向けてくる。
「そうですね…条件次第では全て教えなくもないです。。」
「……。此処は普通、情報提供を親切にしてくれる所じゃないのか?」
掴まれた力が緩んだすきに、手を引っこ抜いたライザは腕を組み鼻でフンッと笑った。
「何言ってるんですか。今会ったばかりの他人に変わりないでしょう。」
「…やっぱ悪役令嬢に選ばれてるだけあるな。」
「となれば、貴方も第2王子要素が何処かにあるという事。油断ならないわ。」
「仕方ない良いだろう。第2王子の権限で叶えられる事は聞いてやる。」
ーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーー
ゲームストーリーと学園生活前の自分の行動についてざっくり説明をすると第2王子は納得した様子で頷いた。
「成る程な、俺のルートのバッドエンドは戦争がおこるのか。」
「そうよ。」
「そんで君は、破滅ルートの中でも俺を回避させたいから、ヒロインに近付くなと。でも事情知らないでやろうとしてる事見ると悪役令嬢そのままだけど大丈夫?」
「自覚ありよ。でもね、第2王子ルートの戦争になるパターンだけは私バッドエンドで断罪されないの。ハッピーエンドなら国外追放で断罪されるけどね。」
「ふぅん、成る程ねぇ。
あとさぁ、君の学園生活始まってからの話聞いてて思ったんだけどさ。」
「何かしら。」
「君、もしかして乙女ゲーム下手だったんじゃない?」
「……。」
「だから、そんな余裕ないんだろう。色々と本編始まる前に準備してたのに。」
「難しいのよ、好感度上げる選択をするって。」
「大体想像つきそうなもんだけど…。じゃあほぼバッドエンドしか見た事ない?」
「舐めないでくれる?ちゃんとネットで調べた選択肢を忠実に守ってハッピーエンドにしたわよ。」
「…それ、何が楽しいの?」
「失礼な、楽しいわよ。
イケメンが私に夢中なのよ?そりゃ楽しいけど文句ある?」
「無いけど。…これからどうすんの?」
「貴方が条件を守るなら何もしないわ。取り敢えずヒロインに近付くのをやめなさいよね。」
「言ってる事、やっぱりゲームの君とほぼ同じなんじゃないか?
確かに君なら悪役令嬢の素質はありだな。この転生も頷ける。」
「私も納得してるわ。」
「他人事ながら、心配だなぁ…。
俺さ、さっきから思ってたんだけど。
手っ取り早い方法があるよ。」
「私の方が心配だわ。貴方既にヒロインと結構仲が良いでしょう?私が適役なら、貴方も適役だから第2王子として転生したのでしょう?つまり、ちょっと間違えれば戦争ルートに行ってもおかしくないのは変わらないのよ?」
「手っ取り早くさ、君と俺が婚約すれば良いんじゃない?
そうしたら明確に第2王子ルートに変化があると思うけど。」
「その提案はお断りだわ。変化はあるけど、結果はわからないじゃない。もっと最悪なバッドエンド迎えたらどうするのよ。主に私が。
それに私には今、婚約者がいるから。」
「ぁあ、そうか。確か…。アウステル公爵だよな?でも君は兄上の婚約者…とかじゃなかった?俺の記憶違いかなぁ、兄上の断罪シーンで確か…。」
「……。」
顎に手を当てて考えた第2王子に、ライザはフイッと目を背ける。
「へぇ~、君の推しキャラは彼だったのか?
何だ、上手くやってんじゃん乙女ゲーム。どうやったの?聞きたい!」
「違うわよ、私に推しとか居なかったわよ!予測不能の事態になったの。変な邪推しないでくれる?」
「その話も、条件次第では…。」
「言わないわ。」
「なんだ。つまんないの。
ところでこんな屋上に学年第3位の成績を誇る優等生なライザ・クライスが来て1人で悶々としてたのってさもしかして……婚約者と何かあったりして?」
(本当に、読心術もってんじゃないわよね?この人。)
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