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グルムンド
しおりを挟むグルムンドの街は私の予想をはるかに超え、城壁に囲まれた大きな街だった。
スヴェンが商人だからか、私の身分を示すものがなくても中にはいる事が出来たが、できるならば商業ギルドか冒険者ギルドに登録しておいた方が今後スムーズに行くだろう。
街中は活気溢れ人々の声が響き合っており、店前で客を呼び込む人もいれば、ひっそりと佇むかのようにある店もあり人々の生活も様々だ。
それこそ老若男女が賑わっていて、冒険者や商人、色んな職業の人たちで溢れかえっていた。
「まずはじめに商業ギルドで”コレ”を売ろう」
コレとは勿論持参した塩と砂糖で、今回は前回よりも多くの量を持って来た。
おおよそ一キロほどの麻袋を各三袋。それの他にウイスキーを瓶で五本。これは瓶までも庭で出来たものである。
本当は胡椒も売ってみたいのだが、下手に商売すると危険だからと却下された。
商売ギルド言われる施設は木造二階建ての建物で、中には小さな酒場も設けられている。スヴェンに冒険者ギルドもこんな感じなのかと聞けば、そっちは酒場がもう少し大きく、依頼を貼り付ける掲示板も付いているとのことだった。
スヴェンはニッコリと笑う女性に買い取って欲しいものがあると言うと、その女性は二階へとどうぞと上を指す。
その様子にスヴェンは顔を顰めながらもその言葉に従い階段を上ろうとするが、後ろにいたわたしを思い出した様に振り返った。
「リズ、お前はそこで待ってろよ。ねーちゃん、そいつに飲みもん頼む」
「はい、わかりした。君はこっちに座ってね?」
スヴェンとは真逆に案内されだ私はカウンターの席にちょこんと座り、受付の担当だろう彼女はどうぞとテーブルのうえにマグカップを置く。
上からマグカップを覗くと中には茶色い色をした液体が入っており、持ち上げ一口飲んでみればその味わいは紅茶のようだった。
「これってどこで買えます?」
「気に入ったの? 此処でも買えるわよ」
「そうですか、スヴェンに相談してみます」
今祖父にお金を預かっているのは私ではなくスヴェンだ。幼い私に持たせる不安も分かるが、買いたいものが買えないのは辛い。
注がれたお茶をちびちび飲みながら辺りを見渡すも、別に面白そうなものはなく、ただただそこでスヴェンが戻ってくるのを待った。
詰まらなそうにお茶を飲む私を見兼ねて時より受付の彼女は声をかけてくれるが話題はあまりなく、いつしか一時間ほどの時間がたっていた。
うとうとと舟をこぎ始めていたところ、ふいに体が浮いた。
何事だとキョロキョロと目を動かすと直ぐに見知った顔がそばににある。どうやら私はスヴェンに抱きかかえられたらしい。
「また来る」
大きく欠伸をし、そう言ったスヴェンに身を任せ私達は商業ギルドを後にした。
ギルドから少し離れたところでスヴェンは私を地面に降ろし、スヴェン自身も私に合わせるように屈むがその顔は気まずそうだ。
「どうしたの? 売れなかった?」
「いや、売れなかったわけじゃねぇんだが。なんだ、その。……定期的に同じ量を持ってきてくれってたのまれて、な」
「なんだ。そんなことか」
「出来るのか!?」
私からすればお安い御用だ。
しかしスヴェンは庭を知っているけれど、どういった形で私が採取したかを知らない。定期的に同じ量は難しいと思ったようだ。
二ヘラと笑い、ただ価格は下げないでねと釘をさす。
量を渡して金が減るなら手間なんてかけたくない。
悩みの種も消えたところで私達は昼食をとる事にした。とはいってろも露店で買ったファングの串焼きだが。
匂いはなかなか香ばしく、肉厚もある。私はこれ一本で十分だろう。
はぐっと大きく開けた口で肉にかぶり付き、口の奥で肉の味を堪能する。
だがしかし、直ぐにそれを吐き出したくなった。
「うべぇぇぇえ」
「吐くな吐くな。飲み込め」
「まじゅい……」
鼻をつまんで必死に噛み砕き、飲み込む。
何時もの食べてるファングより生臭いというか腐った味がした。味も味で、どことなく塩がふってあるかな? と感じるほどで肉の臭みしかない。
口の中が気持ち悪くて麻袋からドライフルーツを取り出し、口直しの為に放り込む。噛みしめるたびにフルーツの甘みが口いっぱいに広がり、ファングの臭みが消えていく。
「なんなのあれ。なんで不味いの?」
「おやっさんは血抜きして帰って来るだろ? 普通に売る奴は血抜きなんしねぇんだよ。だから不味い。と言うことを最近改めて俺も思った」
「スヴェンさんは血抜きしないタイプだったんだね」
「嗚呼、めんどクセェし時間がかかる」
面倒臭くても血抜きは大事だよ。肉が臭くなるし腐りやすくなる。
大きくため息をつき残りの串焼きをスヴェンに押し付け、私はおとなしくドライフルーツを食べる事にしてブラブラと街中を探索する。するといい香りのするパン屋を発見することをできた。
「スヴェンスヴェン! パンなら食べられるはず!」
静止の言葉など聞く耳持たずに私はダッシュでお店に入り込んだ。
カランコロンと扉の上の鐘はなり、その音に反応するかのようにお腹の音も鳴り響く。
パンから放たれる芳醇な香りに酔いしれながら目の前にパンを吟味する。
干し葡萄が練りこまれたパンや、蜂蜜が練りこまれたちょっと高めのパン。中には棒に巻きつけられたなど変わり種パンなどもそこにはあった。
「スヴェンスヴェンスヴェン! 蜂蜜の! 蜂蜜のパン買って!」
蜂蜜は高い? そんなの知るか、金ならある。
私の後ろにいるスヴェンの袖をぐいぐいとひき子供らしく我儘を言うと、あからさまに高いと言う顔を彼はし、私は可愛らしい笑顔で思いっきり足を踏みつけつけた。
「蜂蜜パン、買って」
金はあるだろ?
と、否定などさせずに大人しくパンを買ってもらう事に成功した。
買ってもらった蜂蜜パンはもっちりしっとりしていて、蜂蜜の甘みも確かにある。
これを蜂蜜たっぷりに改良すれば、もっと私好みの蜂蜜パンができるに違いない。
「スヴェンスヴェン、蜂蜜パン作ったらスヴェンにもあげるね!」
「今直ぐくれてもいいんだぞ?」
「は?」
誰が大好物を渡すものか!
フンっと顔を背けるもちゃっかりと左手はスヴェンと繋ぎ、蜂蜜パンを堪能しながらも次にいかなければならない場所へ向かう。
そこはアルノーに必要であろう本屋だ!
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