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2章 いよいよ本編開始??
予定通りだけど予定通りじゃない
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◇
入学して1か月を過ぎた頃、季節は深緑が綺麗でとても過ごしやすい夏になる少し前。
お気に入りの場所となった裏庭に足しげく通うようになったヒロインは、怪我をした猫を見かけて手当てするのだが……実はその猫、ある方が家から連れてきてひっそりとここで世話をしている黒猫なのである。
鳴き声が近い。確か、この辺に……あ、いた。
「にゃぅ~……」
前足に血がついている。野鳥とケンカになったんだっけ?
爪で引っかかれて血が出ちゃって……痛いよね、可哀そうに……
「大丈夫?怪我してるんでしょ?怖くないよ~、すぐに治してあげるから、ちょっと近くにいかせてね~」
なるべく怖がらないよう、目線を合わせながら猫に近づく。
目線を合わせながらだとどうしても四つん這いになるので、近づく速度が遅いのも制服が汚れるのも仕方がない。
興奮してたみたいだけど、少しずつ警戒を解いてくれたのか、そこまでする気力すらないのか、黒猫ちゃんはシャーッとは言わず黙ってあたしを観察しているようだ。
なんとか至近距離に近づき、治療を試みる。
治療方法はもちろん光魔法。せっかく覚えたんだし使わない手はないよね。
だけど、そっと手を近づけた瞬間、驚いてしまった黒猫ちゃんに引っかかれてしまった。
「痛っ……ごめんね、痛くしないよ。大丈夫、あたしを信じてね……」
「……なぅ?」
「うん、大丈夫。今回復魔法かけてあげるからね……」
落ち着いた黒猫ちゃんに両手をかざし、光の回復魔法を唱える。
使える魔法は増えたんだけど、魔力量自体はそんなにないから1日数回が限度だ。
優しい光が黒猫ちゃんを包み、傷が少しずつ塞がっていく。
「……ふぅ、こんな感じかな?大丈夫?黒猫ちゃん」
「な~ぅ♪」
「あら、お礼のつもり?ふふ、じゃあ腕についちゃった血も綺麗に拭こうね~」
黒猫ちゃんの足を拭こうと手を伸ばしたら、ガサッという足音の方へにゃんこが駆け出してしまった。
……やっぱり、彼が来た……
「ロビン!元気にして……あれ?お前足に血がついてないか?怪我してる??」
燃えるような赤い短髪とオレンジの瞳、がっしりした体型から騎士であることは一目瞭然。
後に王太子の護衛も務めることとなる、攻略対象の一人……ケイン=ロックス。
「黒猫ちゃんは確かに怪我をしてましたが、傷はもう大丈夫だと思います。血を拭おうとしたらあなたの元へ行っちゃって……」
「あ、そうなんだ。もしかして、さっきの光って回復魔法?魔法で治してくれたの??」
「はい。早く治してあげたかったので……」
「そうなんだ、ありがとう!ボクはケイン=ロックス。今年入学したばかりの1年だ。キミは?」
「あたしはリナリア=ロンド、ちなみにあなたと同じクラスですよ?」
「えぇ?そうなの??……ごめんね、ボクちょっと記憶力に自信がなくて……」
うん、知ってる。あなたは脳筋なので、クラスのほとんどの人を覚えてないって。
「……キミは、黒猫が気持ち悪くないの?」
そう、彼の選択肢はココだ。
人の黒髪同様に、動物も黒いのは差別されることが多い。
別に魔力があろうがなかろうが、可愛いんだから良いじゃないって思うんだけどね。
ちなみに選択肢はこちら
① じつはちょっと……
② そんなことないよっ!
③ どんな猫でも大好きです。
もちろんあたしが選ぶのは……
「どんな猫でも大好きです。可愛いにゃんこに色は関係ありませんから」
「っ!!……そう、そうだよね!!」
そう、ケインは黒猫が家にいると、気味悪がっている家の人に処分されかねないので内緒でここで世話をしているのだ。
黒猫だって可愛いのにそんなの酷すぎるよねっ!
……そんな感じで、ケインとの出逢いイベントも予定通り進んでしまったなぁと思ったその時、予想外のことが起こった。
「あれ?キミのその手、ロビンに引っかかれちゃった?ごめんね?」
そう言って、黒猫ロビンに引っかかれたあたしの右手を、ケインは優しく掴み傷を舐めた。
「えっ……ひゃぅっ」
「……くす、可愛い声。あ、まだ血がついてるみたい」
「……っ、んんっ、や……も、離してっ……」
「ちゅっ……うん、もう傷は大丈夫そうだよ」
「……っ」
なに?!なんなの??!!ケインってこんなキャラだったっけ???
ただの脳筋でちょっとアホな子じゃなかったっけ???
「大事なロビンの怪我を直してくれてありがとう。リナリア!」
あたしの傷を舐めたときのちょっと色気を感じる雰囲気は一切なくなり、爽やかに去っていった少年Aことケイン。
予定通りなんだけど、予定通りじゃない出逢いにあたしはこれからどうしたらいいのかますますわからなくなってしまった。
入学して1か月を過ぎた頃、季節は深緑が綺麗でとても過ごしやすい夏になる少し前。
お気に入りの場所となった裏庭に足しげく通うようになったヒロインは、怪我をした猫を見かけて手当てするのだが……実はその猫、ある方が家から連れてきてひっそりとここで世話をしている黒猫なのである。
鳴き声が近い。確か、この辺に……あ、いた。
「にゃぅ~……」
前足に血がついている。野鳥とケンカになったんだっけ?
爪で引っかかれて血が出ちゃって……痛いよね、可哀そうに……
「大丈夫?怪我してるんでしょ?怖くないよ~、すぐに治してあげるから、ちょっと近くにいかせてね~」
なるべく怖がらないよう、目線を合わせながら猫に近づく。
目線を合わせながらだとどうしても四つん這いになるので、近づく速度が遅いのも制服が汚れるのも仕方がない。
興奮してたみたいだけど、少しずつ警戒を解いてくれたのか、そこまでする気力すらないのか、黒猫ちゃんはシャーッとは言わず黙ってあたしを観察しているようだ。
なんとか至近距離に近づき、治療を試みる。
治療方法はもちろん光魔法。せっかく覚えたんだし使わない手はないよね。
だけど、そっと手を近づけた瞬間、驚いてしまった黒猫ちゃんに引っかかれてしまった。
「痛っ……ごめんね、痛くしないよ。大丈夫、あたしを信じてね……」
「……なぅ?」
「うん、大丈夫。今回復魔法かけてあげるからね……」
落ち着いた黒猫ちゃんに両手をかざし、光の回復魔法を唱える。
使える魔法は増えたんだけど、魔力量自体はそんなにないから1日数回が限度だ。
優しい光が黒猫ちゃんを包み、傷が少しずつ塞がっていく。
「……ふぅ、こんな感じかな?大丈夫?黒猫ちゃん」
「な~ぅ♪」
「あら、お礼のつもり?ふふ、じゃあ腕についちゃった血も綺麗に拭こうね~」
黒猫ちゃんの足を拭こうと手を伸ばしたら、ガサッという足音の方へにゃんこが駆け出してしまった。
……やっぱり、彼が来た……
「ロビン!元気にして……あれ?お前足に血がついてないか?怪我してる??」
燃えるような赤い短髪とオレンジの瞳、がっしりした体型から騎士であることは一目瞭然。
後に王太子の護衛も務めることとなる、攻略対象の一人……ケイン=ロックス。
「黒猫ちゃんは確かに怪我をしてましたが、傷はもう大丈夫だと思います。血を拭おうとしたらあなたの元へ行っちゃって……」
「あ、そうなんだ。もしかして、さっきの光って回復魔法?魔法で治してくれたの??」
「はい。早く治してあげたかったので……」
「そうなんだ、ありがとう!ボクはケイン=ロックス。今年入学したばかりの1年だ。キミは?」
「あたしはリナリア=ロンド、ちなみにあなたと同じクラスですよ?」
「えぇ?そうなの??……ごめんね、ボクちょっと記憶力に自信がなくて……」
うん、知ってる。あなたは脳筋なので、クラスのほとんどの人を覚えてないって。
「……キミは、黒猫が気持ち悪くないの?」
そう、彼の選択肢はココだ。
人の黒髪同様に、動物も黒いのは差別されることが多い。
別に魔力があろうがなかろうが、可愛いんだから良いじゃないって思うんだけどね。
ちなみに選択肢はこちら
① じつはちょっと……
② そんなことないよっ!
③ どんな猫でも大好きです。
もちろんあたしが選ぶのは……
「どんな猫でも大好きです。可愛いにゃんこに色は関係ありませんから」
「っ!!……そう、そうだよね!!」
そう、ケインは黒猫が家にいると、気味悪がっている家の人に処分されかねないので内緒でここで世話をしているのだ。
黒猫だって可愛いのにそんなの酷すぎるよねっ!
……そんな感じで、ケインとの出逢いイベントも予定通り進んでしまったなぁと思ったその時、予想外のことが起こった。
「あれ?キミのその手、ロビンに引っかかれちゃった?ごめんね?」
そう言って、黒猫ロビンに引っかかれたあたしの右手を、ケインは優しく掴み傷を舐めた。
「えっ……ひゃぅっ」
「……くす、可愛い声。あ、まだ血がついてるみたい」
「……っ、んんっ、や……も、離してっ……」
「ちゅっ……うん、もう傷は大丈夫そうだよ」
「……っ」
なに?!なんなの??!!ケインってこんなキャラだったっけ???
ただの脳筋でちょっとアホな子じゃなかったっけ???
「大事なロビンの怪我を直してくれてありがとう。リナリア!」
あたしの傷を舐めたときのちょっと色気を感じる雰囲気は一切なくなり、爽やかに去っていった少年Aことケイン。
予定通りなんだけど、予定通りじゃない出逢いにあたしはこれからどうしたらいいのかますますわからなくなってしまった。
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