13 / 63
芸術祭
しおりを挟む
「もうすぐ芸術祭が開催される。絵画・彫刻・工芸・演劇・音楽。どの分野でも構わないが、全員参加となっている」
ホームルームにキングズリー先生からの伝達事項。
「全員参加……芸術祭」
どの分野も私には向いていない。
絵も下手だし手先は不器用。
演劇なんて人前に出るのは苦手だし、楽器なんてリコーダーくらいしか触れてこなった。
頭を抱え芸術祭に悩んでいる姿を教壇から目撃されていたが、それどころではない。
「芸術祭……芸術祭……」
音楽祭とか経験はあるが、それはクラス単位で合唱したくらいで一人で楽器を演奏なんてしたことはない。
「あぁ……どうしよう……」
集団で紛れそうなのは演劇だが、本番セリフが飛んだりしたら私だけの問題ではなくなる。
音楽は今から練習しても間に合わないだろうし、きっと誰かの前で審査されるはず……
「それも無理」
同じ自己責任なら、絵画・彫刻・工芸であれば事前に準備出来る分、余裕がある。
「よしっ、絵を描こう……」
絵を描くにしても、この国の絵画の流行ってなんだろう?
芸術祭に向けて、下調べも必要よね?
確か以前町を見た際マキシーが貴族街には『美術館』があると言っていた。
今度の休みにでも見学に行こう。
「嘘でしょ……」
休日にマキシーと共に美術館にやって来た。
美術館はジャンルや時代別に展示され、最近人気の芸術家の作品なども幅広く展示されている。
最近流行りの絵画までくると見知った顔に気付く。
相手も私だと分かると、気まずい表情を見せる。
彼は女性と一緒に来ていたようで、女性が私に気が付かないうちに立ち去りたいようだ。
だが突然過ぎる男の態度に不審に思った令嬢は、周囲を確認するように振り向き私を見つける。
「フッ」
声は聞こえなかったが、令嬢が私を見て勝ち誇った笑みを向けたように見えた。
「お嬢……様? 」
一連の流れを目撃していたマキシーが心配したように私に声を掛ける。
「何? 」
「……いえ」
彼らが立ち止まって見ていた絵画まで辿りつく。
「何……この絵……」
「こちらは……最近人気急上昇の絵画です」
「これが……」
「……はい」
ただ絵画を見ているだけの私達。
絵画についての質問に答えるマキシーが何故しどろもどろな返答なのかと言うと……
「『夫が愛人と淫らに戯れている姿』をわざわざ絵画に残すなんて……明らかな不貞の証拠でしょ? 」
昨今歴史画や宗教画・神話画が多かった中、愛人との関係を描いたこちらの作品は一気に注目を浴びた。
公開された当初は非難が相次いでいた。
「『芸術』に目くじらを立てる方が教養に欠ける」
という言葉が広まると
『芸術に疎い』
『頭が固い』
『寛大さに欠ける』
受け入れない人間の方が、後ろ指を指され始める。
次第に非難していた者は口を閉じ始めた。
芸術祭の為に情報を得ようと来たのだが、要らぬ情報を得てしまった。
「もう……帰ろうか……」
「……はい」
芸術祭の為に『美術館に行きたい』と話せば喜んでいたマキシーも、このような結果に項垂れてしまった。
ホームルームにキングズリー先生からの伝達事項。
「全員参加……芸術祭」
どの分野も私には向いていない。
絵も下手だし手先は不器用。
演劇なんて人前に出るのは苦手だし、楽器なんてリコーダーくらいしか触れてこなった。
頭を抱え芸術祭に悩んでいる姿を教壇から目撃されていたが、それどころではない。
「芸術祭……芸術祭……」
音楽祭とか経験はあるが、それはクラス単位で合唱したくらいで一人で楽器を演奏なんてしたことはない。
「あぁ……どうしよう……」
集団で紛れそうなのは演劇だが、本番セリフが飛んだりしたら私だけの問題ではなくなる。
音楽は今から練習しても間に合わないだろうし、きっと誰かの前で審査されるはず……
「それも無理」
同じ自己責任なら、絵画・彫刻・工芸であれば事前に準備出来る分、余裕がある。
「よしっ、絵を描こう……」
絵を描くにしても、この国の絵画の流行ってなんだろう?
芸術祭に向けて、下調べも必要よね?
確か以前町を見た際マキシーが貴族街には『美術館』があると言っていた。
今度の休みにでも見学に行こう。
「嘘でしょ……」
休日にマキシーと共に美術館にやって来た。
美術館はジャンルや時代別に展示され、最近人気の芸術家の作品なども幅広く展示されている。
最近流行りの絵画までくると見知った顔に気付く。
相手も私だと分かると、気まずい表情を見せる。
彼は女性と一緒に来ていたようで、女性が私に気が付かないうちに立ち去りたいようだ。
だが突然過ぎる男の態度に不審に思った令嬢は、周囲を確認するように振り向き私を見つける。
「フッ」
声は聞こえなかったが、令嬢が私を見て勝ち誇った笑みを向けたように見えた。
「お嬢……様? 」
一連の流れを目撃していたマキシーが心配したように私に声を掛ける。
「何? 」
「……いえ」
彼らが立ち止まって見ていた絵画まで辿りつく。
「何……この絵……」
「こちらは……最近人気急上昇の絵画です」
「これが……」
「……はい」
ただ絵画を見ているだけの私達。
絵画についての質問に答えるマキシーが何故しどろもどろな返答なのかと言うと……
「『夫が愛人と淫らに戯れている姿』をわざわざ絵画に残すなんて……明らかな不貞の証拠でしょ? 」
昨今歴史画や宗教画・神話画が多かった中、愛人との関係を描いたこちらの作品は一気に注目を浴びた。
公開された当初は非難が相次いでいた。
「『芸術』に目くじらを立てる方が教養に欠ける」
という言葉が広まると
『芸術に疎い』
『頭が固い』
『寛大さに欠ける』
受け入れない人間の方が、後ろ指を指され始める。
次第に非難していた者は口を閉じ始めた。
芸術祭の為に情報を得ようと来たのだが、要らぬ情報を得てしまった。
「もう……帰ろうか……」
「……はい」
芸術祭の為に『美術館に行きたい』と話せば喜んでいたマキシーも、このような結果に項垂れてしまった。
660
あなたにおすすめの小説
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
前世の記憶が蘇ったので、身を引いてのんびり過ごすことにします
柚木ゆず
恋愛
※明日(3月6日)より、もうひとつのエピローグと番外編の投稿を始めさせていただきます。
我が儘で強引で性格が非常に悪い、筆頭侯爵家の嫡男アルノー。そんな彼を伯爵令嬢エレーヌは『ブレずに力強く引っ張ってくださる自信に満ちた方』と狂信的に愛し、アルノーが自ら選んだ5人の婚約者候補の1人として、アルノーに選んでもらえるよう3年間必死に自分を磨き続けていました。
けれどある日無理がたたり、倒れて後頭部を打ったことで前世の記憶が覚醒。それによって冷静に物事を見られるようになり、ようやくアルノーは滅茶苦茶な人間だと気付いたのでした。
「オレの婚約者候補になれと言ってきて、それを光栄に思えだとか……。倒れたのに心配をしてくださらないどころか、異常が残っていたら候補者から脱落させると言い出すとか……。そんな方に夢中になっていただなんて、私はなんて愚かなのかしら」
そのためエレーヌは即座に、候補者を辞退。その出来事が切っ掛けとなって、エレーヌの人生は明るいものへと変化してゆくことになるのでした。
行き倒れていた人達を助けたら、8年前にわたしを追い出した元家族でした
柚木ゆず
恋愛
行き倒れていた3人の男女を介抱したら、その人達は8年前にわたしをお屋敷から追い出した実父と継母と腹違いの妹でした。
お父様達は貴族なのに3人だけで行動していて、しかも当時の面影がなくなるほどに全員が老けてやつれていたんです。わたしが追い出されてから今日までの間に、なにがあったのでしょうか……?
※体調の影響で一時的に感想欄を閉じております。
婚約者と家族に裏切られたので小さな反撃をしたら、大変なことになったみたいです
柚木ゆず
恋愛
コストール子爵令嬢マドゥレーヌ。彼女はある日、実父、継母、腹違いの妹、そして婚約者に裏切られ、コストール家を追放されることとなってしまいました。
ですがその際にマドゥレーヌが咄嗟に口にした『ある言葉』によって、マドゥレーヌが去ったあとのコストール家では大変なことが起きるのでした――。
龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜
クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。
生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。
母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。
そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。
それから〜18年後
約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。
アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。
いざ〜龍国へ出発した。
あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね??
確か双子だったよね?
もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜!
物語に登場する人物達の視点です。
私の宝物を奪っていく妹に、全部あげてみた結果
柚木ゆず
恋愛
※4月27日、本編完結いたしました。明日28日より、番外編を投稿させていただきます。
姉マリエットの宝物を奪うことを悦びにしている、妹のミレーヌ。2人の両親はミレーヌを溺愛しているため咎められることはなく、マリエットはいつもそんなミレーヌに怯えていました。
ですが、ある日。とある出来事によってマリエットがミレーヌに宝物を全てあげると決めたことにより、2人の人生は大きく変わってゆくのでした。
婚約者が妹と婚約したいと言い出しましたが、わたしに妹はいないのですが?
柚木ゆず
恋愛
婚約者であるアスユト子爵家の嫡男マティウス様が、わたしとの関係を解消して妹のルナと婚約をしたいと言い出しました。
わたしには、妹なんていないのに。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる