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幸せになるのは決まっていると信じて疑わなかった男視点
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<ジャイルズ・アンダーソン>
「お前はなんてことをしてくれたんだっ」
婚約解消が正式に受理された。
この婚約に俺の意思は反映されていない。
むしろ、我が家が拒否できる立場ではなかった。
爵位が上というだけでなく、長年国に多大な貢献をしている公爵家から何故我が家が指名を受けたのか分からなかった。
だが、婚約が決定して直ぐ使用人が噂しているのを聞いて納得した。
「ジャイルズ坊ちゃんが見初められたのね」
父である伯爵の手腕ではなく、俺が見込みがあると認められたのだと知った。
「将来は公爵……」
伯爵は兄が継ぐのが決定していたので、俺はどこかに婿入りしなければならないと幼いながらに感じていた。
なので、母が主催するお茶会には年齢の見合った婿を欲している令嬢が多く招待されていた。
その中に、エヴァリーンがいた。
ピンクの髪にピンクの瞳が似合う令嬢。
参加してる令嬢の中で一番可愛らしく、お淑やか。
俺の婚約者になろうと擦り寄る令嬢や、伯爵家では物足りないと態度に出している令嬢。
そんな中、エヴァリーンは一定の距離で穏やかに会話が出来る『弁えた』人物だった。
エヴァリーンであれば結婚後、婿という立場でも俺が肩身の狭い思いはしないと思い彼女を望むようになっていた。
確認の為に数度のお茶会を開催し、俺の中でエヴァリーンが最適だと。
他所で呼ばれたお茶会に参加し、エヴァリーンも参加しているのではないかと探していると目の前に令嬢が現れる。
「貴方が私の婚約者よ」
突然見知らぬ令嬢に宣言された。
輝くような金色の髪をした令嬢。
母の主催したお茶会では見たことのない人物。
両親も驚いた表情だったが、気が付いた時には婚約が決定していた。
不快に思った相手だったが、『公爵』と聞いて俺はエヴァリーンではなく令嬢で納得する事に。
「公爵になれば兄より上に立てる」
兄は後継者として両親に期待され、俺はなんでも二番目。
母からも
「ジャイルズ、貴方はアンダーソン家が繁栄する為に確り補佐をするのよ」
俺は、兄の補佐係という存在なんだと思い知らされた。
それが、婚約によって逆転しようとしている。
浮かれて公爵令嬢の婚約者になったが、再び会ってみればかなりのワガママ。
『公爵』という立場を振りかざし、なんでも思い通りにさせようとする。
俺としても優越感に浸れるが、令嬢に関しては些か行き過ぎている。
「あそこまで行くと、他人の事なんて気にしたことなんてないんだろうな……」
呆れつつも、羨ましくもあった。
『ジャイルズ。お前、公爵令嬢と婚約したらしいな』
『未来の公爵かぁ』
お茶会に出席すると、次第に俺に媚びを売る人間が現れる。
見え透いた煽てに溺れる程、単純ではない。
ないが『未来の公爵』という言葉は気持ちが良かった。
学園でも気持ちよく過ごしたいた。
「ジャイルズ……」
女性に声を掛けられることも少なくはないが、名前を呼ぶほど親しい者はいない。
「……エヴァリーン」
相手を確認すれば、一目でエヴァリーンだと分かった。
俺の婚約が決定すると、母主催の子供を招待してのお茶会はなくなった。
その為、エヴァリーンとの交流は完全に絶たれた。
何年もあっていなかったが、俺は令嬢を見た瞬間走馬灯のように記憶が蘇る。
令嬢はあの頃よりも、可愛さと女性らしさを兼ね備えていた。
「やっぱりそうだ。ジャイルズ、恰好良くなったね」
「エヴァリーンも綺麗になったな」
思い出話から始まった俺達の関係は、次第に男女の仲へと成長していく。
婚約者の目を盗んでの関係は背徳感やスリルを味わいたいという思いもあったが、令嬢より優位に立ち俺自身の魅力を再確認したかった。
令嬢に求められたい。
俺に『私だけを見て』『婚約者の私を優先しろ』と縋りついてほしいと思っていた。
なので、エヴァリーンとの関係が続いても婚約解消を望んだことは無い。
「婚約解消……」
解消を宣言されるとは思いもよらなかった。
婚約解消を選択する令嬢はほとんどいないと聞いていた。
男性側に非があったとしても傷を負うのは令嬢だと……
なのに令嬢はあっさりと婚約解消を望んだ。
しかも、令嬢が見初めた俺の顔には
『飽きた』
と言って……
信じられなかった。
どうせ、俺の気を惹く作戦なのだと……
その後、公爵に呼び出され何故婚約解消に至ったのかも根掘り葉掘り聞かれ、本当の事を口にしてしまった。
顔を真っ青にする父の姿が視界の隅に入りながら、公爵に真実を語る。
「お前っ、なんてことをしてくれたんだっ」
屋敷に戻った途端、父に胸倉を掴まれた。
そのまま殴ってくれた方が楽だったのに、殴られることは無かった。
「公爵から何かしらの報復が……」
父は制裁を受けるのではないかと怯えていたが、何もない日々が過ぎていく。
婚約解消の話は速やかに進み、慰謝料の為に我が家の財産目録を提出。
我が家は公爵の提示されるまま慰謝料を払った。
それ以上の事をされることは無いんだと自分に言い聞かせ、どこか安堵していた……
「契約が打ち切られた……」
そろそろ学園で芸術祭の準備が本格的に開始する。
芸術祭の評価は貴族にとってはかなり重視されるのは、両親も把握している。
それまでには復帰したいと思っていたので、父に学園復帰の許可を得ようと執務室へと向かった。
そこで父と兄の会話が聞こえ、全身が硬直。
「これで三件目ですね」
「はぁ……これからも続くだろうな」
契約打ち切り……
三件目?
これからも続く?
「それと、父に話さなければならないことがあります」
「なんだ? 」
「……私の婚約が破談となりました」
「破談……原因はあれか? 」
「はい」
「そうか……」
頭が真っ白になった。
兄と婚約者は良好な関係で、何一つ問題なかったはず……
二人の関係が羨ましくあったが『俺は公爵になるんだ』俺の方が恵まれているんだと言い聞かせていた。
それなのに、破談……
「俺のせいなのか……」
部屋に戻り、食事の準備が整ったと使用人に伝えられるも食べる気分ではなかった。
我が家はアイゼンハワー公爵家と直接の取引はしていない。
それなのに契約が打ち切られた……
「公爵が……圧力を掛けたのか……」
「お前はなんてことをしてくれたんだっ」
婚約解消が正式に受理された。
この婚約に俺の意思は反映されていない。
むしろ、我が家が拒否できる立場ではなかった。
爵位が上というだけでなく、長年国に多大な貢献をしている公爵家から何故我が家が指名を受けたのか分からなかった。
だが、婚約が決定して直ぐ使用人が噂しているのを聞いて納得した。
「ジャイルズ坊ちゃんが見初められたのね」
父である伯爵の手腕ではなく、俺が見込みがあると認められたのだと知った。
「将来は公爵……」
伯爵は兄が継ぐのが決定していたので、俺はどこかに婿入りしなければならないと幼いながらに感じていた。
なので、母が主催するお茶会には年齢の見合った婿を欲している令嬢が多く招待されていた。
その中に、エヴァリーンがいた。
ピンクの髪にピンクの瞳が似合う令嬢。
参加してる令嬢の中で一番可愛らしく、お淑やか。
俺の婚約者になろうと擦り寄る令嬢や、伯爵家では物足りないと態度に出している令嬢。
そんな中、エヴァリーンは一定の距離で穏やかに会話が出来る『弁えた』人物だった。
エヴァリーンであれば結婚後、婿という立場でも俺が肩身の狭い思いはしないと思い彼女を望むようになっていた。
確認の為に数度のお茶会を開催し、俺の中でエヴァリーンが最適だと。
他所で呼ばれたお茶会に参加し、エヴァリーンも参加しているのではないかと探していると目の前に令嬢が現れる。
「貴方が私の婚約者よ」
突然見知らぬ令嬢に宣言された。
輝くような金色の髪をした令嬢。
母の主催したお茶会では見たことのない人物。
両親も驚いた表情だったが、気が付いた時には婚約が決定していた。
不快に思った相手だったが、『公爵』と聞いて俺はエヴァリーンではなく令嬢で納得する事に。
「公爵になれば兄より上に立てる」
兄は後継者として両親に期待され、俺はなんでも二番目。
母からも
「ジャイルズ、貴方はアンダーソン家が繁栄する為に確り補佐をするのよ」
俺は、兄の補佐係という存在なんだと思い知らされた。
それが、婚約によって逆転しようとしている。
浮かれて公爵令嬢の婚約者になったが、再び会ってみればかなりのワガママ。
『公爵』という立場を振りかざし、なんでも思い通りにさせようとする。
俺としても優越感に浸れるが、令嬢に関しては些か行き過ぎている。
「あそこまで行くと、他人の事なんて気にしたことなんてないんだろうな……」
呆れつつも、羨ましくもあった。
『ジャイルズ。お前、公爵令嬢と婚約したらしいな』
『未来の公爵かぁ』
お茶会に出席すると、次第に俺に媚びを売る人間が現れる。
見え透いた煽てに溺れる程、単純ではない。
ないが『未来の公爵』という言葉は気持ちが良かった。
学園でも気持ちよく過ごしたいた。
「ジャイルズ……」
女性に声を掛けられることも少なくはないが、名前を呼ぶほど親しい者はいない。
「……エヴァリーン」
相手を確認すれば、一目でエヴァリーンだと分かった。
俺の婚約が決定すると、母主催の子供を招待してのお茶会はなくなった。
その為、エヴァリーンとの交流は完全に絶たれた。
何年もあっていなかったが、俺は令嬢を見た瞬間走馬灯のように記憶が蘇る。
令嬢はあの頃よりも、可愛さと女性らしさを兼ね備えていた。
「やっぱりそうだ。ジャイルズ、恰好良くなったね」
「エヴァリーンも綺麗になったな」
思い出話から始まった俺達の関係は、次第に男女の仲へと成長していく。
婚約者の目を盗んでの関係は背徳感やスリルを味わいたいという思いもあったが、令嬢より優位に立ち俺自身の魅力を再確認したかった。
令嬢に求められたい。
俺に『私だけを見て』『婚約者の私を優先しろ』と縋りついてほしいと思っていた。
なので、エヴァリーンとの関係が続いても婚約解消を望んだことは無い。
「婚約解消……」
解消を宣言されるとは思いもよらなかった。
婚約解消を選択する令嬢はほとんどいないと聞いていた。
男性側に非があったとしても傷を負うのは令嬢だと……
なのに令嬢はあっさりと婚約解消を望んだ。
しかも、令嬢が見初めた俺の顔には
『飽きた』
と言って……
信じられなかった。
どうせ、俺の気を惹く作戦なのだと……
その後、公爵に呼び出され何故婚約解消に至ったのかも根掘り葉掘り聞かれ、本当の事を口にしてしまった。
顔を真っ青にする父の姿が視界の隅に入りながら、公爵に真実を語る。
「お前っ、なんてことをしてくれたんだっ」
屋敷に戻った途端、父に胸倉を掴まれた。
そのまま殴ってくれた方が楽だったのに、殴られることは無かった。
「公爵から何かしらの報復が……」
父は制裁を受けるのではないかと怯えていたが、何もない日々が過ぎていく。
婚約解消の話は速やかに進み、慰謝料の為に我が家の財産目録を提出。
我が家は公爵の提示されるまま慰謝料を払った。
それ以上の事をされることは無いんだと自分に言い聞かせ、どこか安堵していた……
「契約が打ち切られた……」
そろそろ学園で芸術祭の準備が本格的に開始する。
芸術祭の評価は貴族にとってはかなり重視されるのは、両親も把握している。
それまでには復帰したいと思っていたので、父に学園復帰の許可を得ようと執務室へと向かった。
そこで父と兄の会話が聞こえ、全身が硬直。
「これで三件目ですね」
「はぁ……これからも続くだろうな」
契約打ち切り……
三件目?
これからも続く?
「それと、父に話さなければならないことがあります」
「なんだ? 」
「……私の婚約が破談となりました」
「破談……原因はあれか? 」
「はい」
「そうか……」
頭が真っ白になった。
兄と婚約者は良好な関係で、何一つ問題なかったはず……
二人の関係が羨ましくあったが『俺は公爵になるんだ』俺の方が恵まれているんだと言い聞かせていた。
それなのに、破談……
「俺のせいなのか……」
部屋に戻り、食事の準備が整ったと使用人に伝えられるも食べる気分ではなかった。
我が家はアイゼンハワー公爵家と直接の取引はしていない。
それなのに契約が打ち切られた……
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